ヘタレαにつかまりまして

三日月

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SS(書き下ろし)

生まれ変わったらαだったんだが、思ったより生きづらくて探してしまうのは止められなかった 1

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「なぁ、敬二郎。
俺は絶対にアイツをここに戻す。
だから、今まで我慢しかしてこなかったあのバカに、少しだけお前の時間をやってくれ」


頼むよと土下座した俺に、まだ高校生だった敬二郎が息を飲んだ音が聞こえた。
答えは聞かなくてもわかってる。
断らないことを俺は確信していたし、どう答えたかまで今の俺は覚えてる。

このときのお前は、俺がここにいた理由を知ってたしな。

狡い大人になっても、アイツが初めて口にした願いを叶えてやりたかった。
それを、俺が叶えてやれるのはきっと少しの時間しか残されていない覚悟もあった。

敬二郎の協力無しには、叶えられない願い。
どうせ、どこに行こうが把握されてるなら、危険な賭けを強行するより、掌の上、安全な場所でアイツには夢を見せてやりたい。

このあとの、敬二郎の答えもよく覚えている。


「顔をあげろ、ミカサ。
戻さなくてもいい、兄さんを頼む」


出会った頃は、小生意気なガキだったくせに。
このあと、何が起こるかも察してΩの俺に頭を下げた。
本当に良い男に育ったよな。
このあと、俺はコイツに全部丸投げして・・・



弘夢ひろむちゃん、そろそろ起きなきゃヤバくない?」


ふにふにと、頬全体を柔らかく揉まれて目を開ける。
声まで男前だった敬二郎とは違う、可愛くて響く女の子の声。

あー、こっちだった、こっちだった。

覚醒するべき場所に戻った俺は、目の前に広がるマシュマロデカ胸に、わざとスリスリ。
埋もれた奥から、トクントクンと心音が聞こえてくる。
はぁ、癒されるわ~


「もぉ、弘夢ちゃんってば胸フェチなんだから」


クスクス笑われて顔を上げる。
胸フェチじゃなくて、心音フェチなんだけどなぁ。
上級生の御姉様、名前はさっぱりわからないけど、に、ニコッと笑顔を振り撒く。


「んもー、その顔可愛すぎよ~」


チュッチュッとキスされながら、自分の制服を探す。

これ、今の俺、竹居たけい 弘夢ひろむの休み時間の過ごし方。
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