ヘタレαにつかまりまして

三日月

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SS(書き下ろし)

友達デート 25

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三枝が最後にゲームセンターに行こうと言ったので、カフェテリアを出た俺達はさっき絡まれた場所まで戻ることになった。
「嫌な思い出は、塗り替えんとな!」と、暗くなりがちになってしまった樟葉の手を引っ張り先導してくれる。

三枝の、周りに笑顔を戻す力は本当に凄いと思う。
俺だったら、樟葉にどう声をかけてよいか分からずに距離を置いてしまっていた。

柴田は、三枝とゲームセンターでどんなことをしたいか話し出した樟葉を暖かく見守る。
緩んだ口元のせいか、普段人を寄せ付けない固いイメージが和らいで周りからチラチラ見られていた。

褐色の肌が珍しいと言うのもあるが、身のこなしに無駄がなく歩き方も目を引くからな。
中には、柴田がモデルをしていることに気付いている人間もいそうだ。
だが。


「俺達は希少動物なのか?」


はぁ、とぼやきたくもなる。
街中で二人でデートしていた時は、騒がれなかったのに。
βが多いからか、ヤマと柴田のα二人組は
目立つ。
ヤマは、柴田ほど名前と顔が浸透してないせいか「どこかで見たんだけど」と絶えず目で追われる。
そのまま隣の俺に気付いて、「あぁ!」と指を差されてしまうことも一度や二度じゃない。


「ん?
どうかした、カナ?」


相変わらず人の視線に鈍感なヤマは、気にならないようで羨ましい。


「ヤマと柴田の二人で俺達の様子を見てくれていたなら、こんなふうによく騒がれずにいたな」


いくら買い物に夢中になっていても、ザワザワしていたら気付いた筈だ。


「なんのことだ?」


身に覚えがないヤマに聞いても意味はなかったか。
なんでもない、と濁し、ゲームセンターでクレーンゲームやコインゲーム、あとあの絡んできた二人組が言っていた写真撮影を楽しむ。

その空いた時間に柴田にこっそり聞いてみたら、「今と同じくらい見られてましたよ。気づかれないのが不思議なくらいに」と苦笑い。
・・・恥ずかしくて「そうか」としか返せなかった。
自覚はしていたんだが、それ以上に友達デートにはしゃぎすぎていたんだな。
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