ヘタレαにつかまりまして

三日月

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SS(書き下ろし)

友達デート 16

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最後の小節を唄いあげ、元の位置に戻って正座をして深々頭を下げる樟葉。
俺も三枝も聞き入りすぎて、拍手が遅れてしまった。


「うわぁぁ~、意味は全然わからへんかったけど、こぅ、胸がキュウッてなったわ。
みこちゃん、もしかして芝浦君のこと想って歌ってへんかった?」

「え、え?!
そ、そんなのわか・・・痛っ」


立ち上がった樟葉は、驚きすぎてバランスを崩し壁に頭をぶつけその場に座り込んだ。
唄っているときは、凛とした佇まいや唄に感動していたんだが。
樟葉は、樟葉だったな。

しかし、芝浦を想って唄うには少し重い歌詞じゃなかったか?


「みこちゃん、大丈夫??」

「フ、フフ・・・な、慣れてるからぁ」

「慣れていても、痛いものは痛いだろう?」


無理矢理作り笑いをしている樟葉に手を貸し、椅子に座らせる。


「でも、ほんまに凄かったなぁ。
みこちゃんって、御珠神社であぁいうことしてんねんなぁ?」

「うん、御珠神社では、巫女は神の子って書いてねぇ。
昔は樟葉に生まれたΩしかなれなくてねぇ・・・代々引き継いできた唄や舞が、たくさんあるんだよぉ。
今はね、樟葉じゃなくても良いし、Ωじゃなくても良くなってるよぉ。
お正月は、アルバイト神子がたくさんいるんだよぉ」

「そうなんやぁ」


途中、樟葉が話すのを躊躇っていたように感じたが最後は笑顔だった。
気のせいだったか。
三枝は、話ながらもテーブルの上をテキパキ片付けていく。


「三枝、樟葉の唄はかなり簡単な古語だったと思うんだが、あれがわからないなら来年も古文がヤバイんじゃないか?」


心配してのことだったんだが、三枝にとってはかなり痛い場所を突いてしまったようだ。
受付で渡されたカゴにマイクを入れようとして、取っ手に引っ掛け床に落としてしまいアワアワ。
全教科が怪しい樟葉にとっては、他人事ではないんだがそれを見てクスクス笑っている。

三枝は、現代文は平均以上の点数を出しているんだが、古文や漢文となるとガクンと下がる。


「もぉ、カナちゃん、今日は勉強の話は禁止っ
みこちゃんの進級お祝いと勉強お疲れ様会なんやから!」


ん?
だからこそ、来年に向けた勉強の話は必要不可欠なのでは?
そう思ったが、二人から力強く見つめられ了承した。
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