ヘタレαにつかまりまして

三日月

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SS(書き下ろし)

友達デート 12

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複合施設の敷地に入ると、俺達を一旦正面玄関で降ろして駐車場の空きスペースを探すため送迎車は去っていった。
危なっかしい樟葉の右手を握り、左手にヤマのつもりだったんだが腰に腕を回されピッタリと身体をくっつけられた。


「ヤマ、歩きにくくないか?」


あと、目立ってるぞ?
三人で並んで歩くには、バランスが悪すぎないか?


「もうすぐお別れだし、それまではこのままでいさせて。
こんなに長い時間離れるなんて、初めてだろ?」


顔を覗きこまれ、寂しそうに告げられると黙るしかない。
確かに、普段ずっとヤマといるからな。
予定では5時間ほど離れるんだが、それだけの時間離れるのは初めてだ。
側にいるのが当たり前だったし、友達デートに浮かれすぎてヤマと離れること意識をしてなかったな。

陽太さんには、食堂から出るときに「離れて過ごしとかないと、倭人もあんな依存症になるぞ。まぁ、清人の場合は年季がちがうけどな」と清人さんを指差された。
遥馬さんから片時も離れたく無い清人さんは、自宅で出来るデザイナーを仕事にしていて、モデルや生地の確認に出向かなければならないときも、遥馬さんを必ず連れていってるんだよな。

ヤマとずっと一緒にいるのは、嫌じゃないが。
あんなふうにいきすぎるのは、心配になる。
ヤマが俺無しで働けないとか、社会的損失が計り知れない。

エレベーターでカラオケがある階まで移動すると、三枝は先について椅子に座って待っていてくれた。


「すぐわかった?」

「あぁ、事前に地図で確認もしていたしな」


受付を済ませると、ヤマとはここで一旦別れる。


「さっきの正面玄関に18時に待ってるからな」

「うん、ありがとう」


家族連れや恋人も多いので、さすがに抱きつくのはダメだろうと両手で握手。
ヤマは、俺達が案内された部屋に向い見えなくなるまで入口で見送ってくれた。


「もぉ、相変わらずラブラブやなぁ。
ずっと会えへんなるみたいやん」


このっ、このっと三枝から肘でつつかれたがその通りなんだから仕方ない。


「仕方ないだろう。
18時まで会えないんだから」

「・・・んん、そう、なんやけどな?」

「でも、せっかくヤマも行って良いと言ってくれたし、友達デート楽しもうな!」

「おぉ~!」


納得しきれてない三枝の肩を叩いて、樟葉にならい拳を上げる。
まずは、カラオケだ!
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