ヘタレαにつかまりまして

三日月

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SS(書き下ろし)

友達デート 11

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シートベルトとヤマに引っ張り合われながら、ヤマの胸に収まっていたらふわふわとフェロモンが追加される。
今からいく場所は、フェロモンについて規制はないが。


「ヤマ、フェロモンをつけすぎると逆に目立つと思うぞ?」


βがよく利用する場所では、フェロモンをつけている人間は少ない。
ヤマの「可愛い」「俺のカナ」「大好き」と囁いてくるこのフェロモンは、絶対に目立つだろう。
それに、これ以上追加されたらヤマにずっと抱き締められている気持ちがして落ち着かなくなりそうだ。


「でも、これだけ俺のだって示せば近寄れないだろ?」


平然と返され唸ってしまう。
確かに近寄れないだろが、お店の人から避けられるのは嫌だな。
離れて過ごすのにフェロモンをつけるなとは言わないが、ほどほどが良い。
ヤマが俺のことを大切にしてくれるのは嬉しいんだが、やり過ぎるんだ。

途中でクルマに入ってきた樟葉は平気そうだったんだが、ヤマのこのフェロモンに慣れているだけかもしれないし。
駐車場を降りてから、周りの反応を気にしてみよう。

樟葉が向い合わせの席に座ると、流石に抱き締めるのは止めて手を繋ぐだけに抑えてくれた。
ヤマ曰く、俺の可愛い顔を見られたくないから人前で抱きつくのは抑えてるらしい。


「フフフ・・・楽しみだねぇ」


濃い緑のカーディガンに黒の横縞が入った白シャツ、足首が見える緩い麻のパンツを着ている樟葉は、いつもダボッとした部屋着ばかり見ていたので新鮮だ。
アウターとシャツは、姉の樟葉先輩が服を貸してくれたらしい。
肩から掛けているもこもこした白のポシェットも同じく。


「樟葉も、カラオケは初めてなんだよな?」

「うん!
りんちゃんの曲を歌ってみようと思ってねぇ。
昨日お風呂で練習しちゃったぁ」

「俺もだ!」


昨日は俺も同じことをしていた。
二人で笑って、どんな曲を歌うつもりなのか盛り上がっていたら、ヤマからグリグリ頭を押し付けられてしまった。
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