ヘタレαにつかまりまして

三日月

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35 教室

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ヤマの番になる前は、他人のことまで正直考える余裕なんてなかった。
自分が桜宮家のαとして評価されるように、時間の全てがその積み重ねのためにあったから。

ヤマの番になってから、俺はΩとして生まれ変わったようなものだ。
偽装αだった頃に学んだ全てが無駄だった訳じゃないけれど、誰にもばれないよう一挙手一投足に気を配って生きてきた。
それが、ヤマへの暴挙の数々もまるごと優しく抱き止められてしまうんだから。

学校が、楽しい場所だったんだとヤマのお陰で気付けた。


「カナがもっと過ごしやすくなるよう、俺は動くからさ。
カナは、もっと俺にしたいこと、やりたいこと、隠さず言って?」


ヤマに微笑まれて、わかったと頷いてはみたが。
俺が言うよりも先に、俺がしたいこと、やりたいことをヤマが与えてくれているからなぁ。
この先も、なかなか言う機会はないんじゃないだろうか。
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