ヘタレαにつかまりまして

三日月

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32 萩野式

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「樟葉、このままだと返す頃にはデータが全て無くなるぞ?」


勉強を初めて三日目。
帰り際、今日の不正解数を数えながらぐったり机上に突っ伏している樟葉に声を掛ける。
正解率は五割、だな。

一日目に、各教科の正解率が三割越えられなかった樟葉。
ガッカリはしながらも、その結果を「仕方ないか」と諦めていた。
三枝までが、「いつもより頑張ったやんなぁ」と呑気に慰めだした。
まぁ、確かに過去の散々な結果よりはマシではあったが、だ。

その態度から、まだ始めたばかりで俺が本気でデータを消すと言う実感が足りなかったようなので。
こちらの本気を伝えるため、「覚悟が足りなさすぎる罰だ」と言って問題数に関わらずUSB一本を目の前で湯飲みに水没させた。

あのときの樟葉と三枝の顔は凄かったな。
ポチャンと軽い音を立てて沈んだUSBと俺を見比べ、悲鳴まで上げていたし。
俺も、やりたくてやった訳じゃなかったが、効果はあった。
樟葉は、二日目から勉強中に自分から質問するようになった。

だが、未だに八割の正解率を越せずにいる。


「た、たぁちゃんの写真がぁ・・・」

「俺が書いた答えと解説文をしっかり読み直せ。
明日、勉強を始める前に同じ問題を解いて貰うからな。
復習問題に関しては、満点以外は認めないぞ?」

「かなちゃん、スパルタやなぁ・・・」


その日のまとめ問題だけでは足りないと早々に判断し、二日目から始めた復習問題。
勉強を始める前に、前回間違った問題からランダムに出題している。
初日に帰るとき、間違えばその問題数の二倍データが飛ぶと言っておいたが六割の正解率だった。
因みに今日も六割だ。

このまとめ問題は、それに比べて八割正解すれば消さなくてこちらも済むんだ。
俺は、「ほら」と解答用紙を樟葉と並んで座る三枝に返した。
樟葉先輩が先ほど持ってきてくれた饅頭と緑茶に手を伸ばし、解答用紙を見返す二人を見守る。
毎日和菓子や洋菓子を勧められて、太りそうだが。
どれも美味しくて、つい断りきれずに食べてしまう。
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