ヘタレαにつかまりまして

三日月

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32 萩野式

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「こっ、こっ、こっ、困るよおぉぉぉっっっ」

「か、かなちゃん、やり過ぎちゃう?」


青ざめ絶叫する樟葉。
両手を組んでブルブル震え、今にも失神しそうなほど動揺している。
三枝も、樟葉が芝浦の写真をどれ程大切にしているか知っているだけに擁護しようとするが。

ーーー甘い。


「Ωの無能さを甘く見るな。
譲れない目標無しに、学習に身が入ると思っているのか?」


俺には、桜宮家の守るべき誇りがあったからこそ、無理難題とも思えた偽装αを続けてこれたんだ。
萩野は、俺が与えられた課題をクリア出来ないと、Ωとバレた時に考えられる事態の深刻さ、あらゆる被害想定について具体的な数値を交えて示してきた。

他に追随さえ許さない、桜宮財閥の磐石な基盤をΩの俺が引き継ぐことがバレたとき、内部からは離反者や造反者が次々現れ、外部からは乗っとりや没落を願われあらゆる手を尽くしてこられる。
それに対応するにも、Ωの俺が指揮を執ってついてくるのは身内に限られ末端までリカバリーは追い付かない。
俺の番になれば桜宮財閥の全てが手に入ると知ったαからは昼夜問わず狙われる。
誘発剤を使われれば、俺に抗う術なんて残されていない。

株の下落、信用失墜、従業員も離職し会社機能が失われ、分野によって差こそあれ待っているのは縮小か衰退か。
俺がΩとバレただけで、何人の人生が藻屑と消えるか、萩野はにこやかに追い詰める。

それは、夢でもうなされ飛び起きるくらいに、繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し、何度も何度も何度も何度も何度も、だ。

Ωの自分がしてきたことだからわかる。
この萩野式の学習以上に、身が入る勉強方法はない。
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