ヘタレαにつかまりまして

三日月

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32 萩野式

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カフェテリアから戻ってきたヤマと、指を絡めて歩きながら午後の教室に戻る。
肩がヤマの胸に当たるくらい身を寄せて歩いているだけで、ヤマは全開の笑顔だ。
俺も目が合うと、微笑んでしまう。

包み込んでくるフェロモンは、「カナは俺の」と爪の先まで示してくれていて安心できる。
学園内には広く知れ渡った事実だから、もう少し抑えても良いんだが。
あまり強く言えない・・・なんだか、ヤマのフェロモンは身体の一部みたいに馴染んでしまった。

すでに俺が歩けないくらいのことが昨夜あったらしい、という噂はクラス外にも流れたらしく。
廊下を進んでいると、いつもより生暖かい視線がヤマと俺に送られてくるが。
これは、もう、どうしようもない。
下手に恥ずかしがらず、番持ちΩとしてはあって当たり前なことなんだと自分にも言い聞かせて歩いていく。

だが、卒業するまでこんな好奇の目で見られ続けるのは堪らないな。
ヤマに合わせることが出来るくらい、体力も筋力もつけないと!


「あ、かなちゃん大丈夫?」


教室の前側の扉から入ると、三枝がほかの生徒との話を中断してわざわざ聞きに来てくれた。
三枝の机の周りにいたβが、一言一句聞き漏らすまいと聞き耳を立てているのがわかりすぎて辛い・・・
三枝には悪気はなくて、本当に心配してくれてのことだと解ってはいるんだが。


「うん、大丈夫だ」


それ以外に答えられないし、突っ込んでくるなよ!と目で念押し。
「そっかぁ~」ほっと笑って席に戻る三枝。
その背後。
教室の後ろでは、笹部が一度は上げていた腰を椅子に下ろして溜め息をついていた。
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