そのジンクス、無効につき

三日月

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FIRST GAME

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顔は若松の手でガッチリ固定されているが、そこから下の体は動く。
突き飛ばすつもりで両手で胸を押したが、体幹が地面にビッチリ根を張るレベルのスポーツ選手の身体は僅かに揺らいだだけだった。
手と顔を同時に俺から離した若松は、ヘラッと締りの無い顔で笑う。

「んふふっ、先生の唇ぷるぷるだな」
「おーまーえーはー、何をしたいんだっ
自力で飲めるっ
悪ふざけが過ぎるっ」

男子生徒に口で飲まされたとか・・・喉はスッキリしたが、今度は口の中がムカムカしてくる。

「ふざけてないし。
折角運命の相手が確定したんだから、チュウくらいしたいじゃん。
俺の初キスは麦茶の味かぁ。
あ、でも今のは口移しになっちゃうから、やり直しだな」

さり気なくマグボトルを俺の手に持たせ、俺を両腕で挟むようにして背後のテーブルに腕をつくと。

「ん~」
「ふざけるなっ」

タコ口にマグボトルを押し付ける。
練習中に頭でも打ったのか?
背はそれほど差はないのに、非力な俺と比べて筋肉で覆われた腕はまるで強固な檻。
下手に抵抗して振り払われでもしたら、こちらが怪我をする。
この場から抜け出したくても、乗り上げてくる顔が近すぎて椅子から腰を浮かせることも出来ない。
なんだ、新手の嫌がらせ、教師イジメか??

「もー、OBのくせに、運命の相手と出会える渡り廊下のジンクス知らないの?
始業前、渡り廊下で最初にすれ違う人が5日連続同じ人だと、それが運命相手だって言うこの高校の有名なジンクス。
去年先輩が卒業式に教えてくれてさ。
ずーっと試してんだけど、遠征とか寝坊で5日連続っていうのがなかなか難しくって。
でも、さ。
途中から、渡り廊下で会うのはずーっと荒川先生だったじゃん?
5日目の今日が来るより先に、俺の運命の相手は先生なんだなぁって俺にはわかってた」

マグボトル越しに得意気に語る若松。
熱っぽい視線で語られても嬉しくない。
寧ろ、本気で言っているのだと分かって頭が痛くなってきた。
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