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僕の番サン
顔合せ 当日
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番プロジェクトに参加する当初の目的は、親戚が跡継ぎ指名を受けた僕の代理人や婚約者の座を狙う争いの露払い的な意味がありました。
けれど僕の中では、一樹さんになぜ番プロジェクトに選ばれないか、その理由を隠すために変わっていました。
そのため、僕としては顔合わせ当日に一樹さんから断っていただいても良いと考えていたのですが。
あまりにも僕を取り込もうとする親族間争いが収まらないまま、年明け後に公表したお父様の訃報により関連企業の方々までそれに参戦したことで激化。
お祖父様に、仮でも良いから僕のパートナーの座を埋めて、早期に沈静化を図るよう念押しされてしまったのです。
国公認の番プロジェクトで選ばれた相手を差し置いてまで、血縁者をその座に捩じ込もうとすることは流石に憚られますからね。
お祖父様からそう言われたのは、僕が六度目の誘拐未遂から開放された後。
今回の誘拐は、救出に尽力した姿をアピールしてお祖父様から僕の後継人指名を得ようとしていたようですが⋯本当に色々な手を使ってこられます。
お祖父様の制裁も厳しさを増していますので、このままでは鳳グループが分裂しかねません。
ただ、この時点で顔合わせまで二週間を切っていました。
番プロジェクトの案内は送付済みで、僕の相手は一樹さんにしか案内を送っていません。
一樹さんが、僕の相手を了承してくださるとは思えません。
困り果てた僕は、現地の鳳グループ側の責任者である藤原さんと一樹さん説得に乗り出すことになりました。
顔合わせ、当日。
凛太郎君からご家族の話は度々聞いていましたが、一樹さんと対面でお話するのは初めてです。
お祖父様が見立ててくださった服を着て、ドキドキとレストランの一室で一樹さんの到着を待っていました。
こんなに緊張したことは無いと言い切れるくらい、朝から心臓がバクバクとうるさくて頭の中は一樹さんのことでいっぱいです。
95%のマッチング率の高さから、お祖父様も了承してくださいましたが⋯こんなに年齢差があるのに僕にとっても不思議な数値です。
一樹さんも、僕以上に驚かれますよね。
青空が広がる窓ガラスをバックに、閉じられた扉を食い入るように見つめて一樹さんが来られるのを待ちます。
待ちに待ったノック音が響いたとき、僕はビクッと身体が跳ねて椅子から転げ落ちそうになりました。
落ち着かなきゃと、ギュッと膝の上で握った拳に目を落としたときには、もう一樹さんは部屋に入ってきていました。
凛太郎君の孕親さん。
僕の憧れる、御家族の一員。
藤原さんに名前を紹介されているのに、ドキドキがピークで顔を上げることも出来ません。
「こんにちは、狭山 一樹です」
わ⋯⋯⋯っ
あの一樹さんが、僕に向かって初めて声を掛けてくれた!
凛太郎君達と話すときより、ゆっくりと穏やかに響くよそゆきの声。
どんな顔で話されてるのかと、顔を上げたら目があって、笑顔を向けられて、頭が真っ白になってしまいました。
オーダーメイドとひと目でわかる、一樹さんに合わせたグレーの色遣いがさりげないスーツ姿も格好良い。
遠くから眺めていた笑顔が、僕に向けられているのを実感して胸がギューッと締め付けられました。
心地良いギューッに、意識してないとニヤニヤしてしまいそうですっ
けれど僕の中では、一樹さんになぜ番プロジェクトに選ばれないか、その理由を隠すために変わっていました。
そのため、僕としては顔合わせ当日に一樹さんから断っていただいても良いと考えていたのですが。
あまりにも僕を取り込もうとする親族間争いが収まらないまま、年明け後に公表したお父様の訃報により関連企業の方々までそれに参戦したことで激化。
お祖父様に、仮でも良いから僕のパートナーの座を埋めて、早期に沈静化を図るよう念押しされてしまったのです。
国公認の番プロジェクトで選ばれた相手を差し置いてまで、血縁者をその座に捩じ込もうとすることは流石に憚られますからね。
お祖父様からそう言われたのは、僕が六度目の誘拐未遂から開放された後。
今回の誘拐は、救出に尽力した姿をアピールしてお祖父様から僕の後継人指名を得ようとしていたようですが⋯本当に色々な手を使ってこられます。
お祖父様の制裁も厳しさを増していますので、このままでは鳳グループが分裂しかねません。
ただ、この時点で顔合わせまで二週間を切っていました。
番プロジェクトの案内は送付済みで、僕の相手は一樹さんにしか案内を送っていません。
一樹さんが、僕の相手を了承してくださるとは思えません。
困り果てた僕は、現地の鳳グループ側の責任者である藤原さんと一樹さん説得に乗り出すことになりました。
顔合わせ、当日。
凛太郎君からご家族の話は度々聞いていましたが、一樹さんと対面でお話するのは初めてです。
お祖父様が見立ててくださった服を着て、ドキドキとレストランの一室で一樹さんの到着を待っていました。
こんなに緊張したことは無いと言い切れるくらい、朝から心臓がバクバクとうるさくて頭の中は一樹さんのことでいっぱいです。
95%のマッチング率の高さから、お祖父様も了承してくださいましたが⋯こんなに年齢差があるのに僕にとっても不思議な数値です。
一樹さんも、僕以上に驚かれますよね。
青空が広がる窓ガラスをバックに、閉じられた扉を食い入るように見つめて一樹さんが来られるのを待ちます。
待ちに待ったノック音が響いたとき、僕はビクッと身体が跳ねて椅子から転げ落ちそうになりました。
落ち着かなきゃと、ギュッと膝の上で握った拳に目を落としたときには、もう一樹さんは部屋に入ってきていました。
凛太郎君の孕親さん。
僕の憧れる、御家族の一員。
藤原さんに名前を紹介されているのに、ドキドキがピークで顔を上げることも出来ません。
「こんにちは、狭山 一樹です」
わ⋯⋯⋯っ
あの一樹さんが、僕に向かって初めて声を掛けてくれた!
凛太郎君達と話すときより、ゆっくりと穏やかに響くよそゆきの声。
どんな顔で話されてるのかと、顔を上げたら目があって、笑顔を向けられて、頭が真っ白になってしまいました。
オーダーメイドとひと目でわかる、一樹さんに合わせたグレーの色遣いがさりげないスーツ姿も格好良い。
遠くから眺めていた笑顔が、僕に向けられているのを実感して胸がギューッと締め付けられました。
心地良いギューッに、意識してないとニヤニヤしてしまいそうですっ
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