俺の番クン

三日月

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俺の番クン

同棲 ゴール

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暁の誕生日は、鳳グループで盛大なパーティが毎年あって、俺は一応『噂のあの人』扱いで出席している。
ここだと、グループ内の暁の評価が分かりやすい。
Ωは、弱くて防衛本能がαと比べて高いからさ。
ギスギスした雰囲気とか、隠れた敵意には敏感なんだ。

初めて出席した9歳のときは、俺を値踏みしに来たと公言するようなαもいて皆が皆、誕生日祝に駆けつけた雰囲気じゃなかった。
でも、年々暁の影響力が鳳グループの中で高まるにつれて、暁の派閥もがっちり固まり16歳の今じゃすっかりアウェイな雰囲気は消えた。

今も、にこやかに談笑する暁の周りは、その取り巻きがガードしてるしな。
自分の年齢より長く鳳グループに貢献してきた人間を、当たり前のように駒として使う暁。


「凄いなぁ」

「惚気か?」


壁際の花になってその勇姿に感心していたら、隣にやってきた和平が呆れた顔で突っ込んできた。
和平は、鷹司グループの代表で毎年招待されている。
今年は、お供に珍しく凛太郎もついてきていた。
一人でも目を引く二人が正装で並ぶと圧巻だ。
凛太郎の背は、190cm近い和平を追い抜かんばかりに成長しまくって年相応さが欠片もない。


「違うっつーの!」

「今更、照れるなよ。
暁にも散々惚気けられてるから慣れてるし」


凛太郎にまで、冷めた目で誂われた。
今までは、それもフリだろうと流せてたのに今夜は言葉に詰まる。
最近どうよ?と当たり障りのない話題に変えて、その場をごまかした。

途中、暁から手招きされ、俺の背を抜かして170cmを越えたしなやかな身体に重ねられて、腰に手を回されながら紹介された相手と挨拶を交わす。
「まだ番にはなられないのですか」と、初対面だからこその厚顔で尋ねられ笑ってかわせなくなったのは⋯暁のせいだ。

喉奥で笑いを転がすムッツリスケベ。
靴を踏んづけてやろうか。
フリで良いからと言ってたくせに、16歳の誕生日プレゼントは何が良いかと聞いたら、「一樹と番になりたいです」と真摯に口説かれた。

あー、クソッ
どっかでそうじゃないのかと分かってはいたさっ
どんどん過剰なスキンシップを増やされ、うなじを甘噛みされ、胸を揉まれ、ゴリゴリと身体に擦り付けられた流れで手でイカせてとかおねだりされて応えたことも実はあったりで。
意識するなとか言う方が無理っ
今ならわかる。
暁の確信犯めっ

「18歳の期日まで、これから毎日口説きますね」とか。
この俺相手に指先にキスまでしてきたんだぞ、あのバカっ
まだあどけない顔だってできるくせに、そんな雄の顔で囁かれ、骨抜きにならないΩがいると思うなよっ

それでも、大人の矜持で踏ん張り⋯踏ん張り⋯踏ん張れていた、かな。
寝室に鍵をかけても、寝て起きたら暁のフェロモンに包まれて、おはようの代わりに「愛してます」と口説かれること三日目。
そう、たった三日目なんだけどこんなやりとりも久しぶりで年甲斐もなくすっかり舞い上がっている。

パーティの最後の客を並んで見送り、回れ右で逃げようとしていたんだけど間に合わない。
肩を強引に掴まれ、そのままエレベーターに連れ込まれてしまう。
会場のこの鳳ホテルで、俺達が誰かを知らない人間なんていないし、ものすっごく生暖かい目で見送られたじゃないかっ

エレベーターの隅に逃げたら、暁の指が最上階のボタンを選択。
音もなく動き出した箱は、あっという間に目的の場所へ着いてしまった。
扉が開いても、暁は無理強いはしない。
先に自分だけ外に出て、でも扉が閉まらないよう手で押さえながら誘ってくる。


「一樹、今日の誕生日に俺の初めてを貰ってください」


バカーーーーっ

そんな甘えた声で誘惑してくんなっ
ここから降りたら自分がどうなるか。
緊張して面と向かっては言えない分、心の中では大絶叫だ。
散々フェロモンで懐柔しておいて、そんな言い方、ズルい。
番プロジェクトで選ばれた二人は、事前申請前に番になることは禁止されてる。 

だから

ロイヤルスイートルームしかないこの階で一緒に過ごしても、番になるわけじゃないのは分かってる。

わかってるのに。

両手で熱を帯びたうなじを抑える。
発情期じゃないのに、身体が熱くて疼いて仕方ない。
今すぐ番になりたいと、Ωの本能がここから溢れ出してるようだ。


「な、なんで今日なんだよ⋯」

「一樹の身長を抜いた初めての誕生日だからです」


小さくて足にまとわりつくような子どもだった暁。
口に出さなくても、ずっと気にしてたのかよ。
あぁ、もぉ、いじらしいというか、なんというか、可愛くてどうしよう。
ふらりと引き寄せらるように、考えるより先に足が動いていた。
こんなオジサンで良いのかよとか、もう今更過ぎて言えない。


「ひ、久しぶりだから、無茶しないでくれよ」

「初めてだから、大目に見てください」


手が触れ合えば、自然と恋人繋ぎになっていた。
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