俺の番クン

三日月

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俺の番クン

同棲 中継

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番プロジェクトと言う印籠のお陰で、面と向かって年の差と格差の激しい俺達を揶揄する声は出なかった。
寧ろ、俺が暁の相手だとわかるやαの皆様の反応はわかり易かった。
俺が勤務している家電製品の下請け会社に、急にオリジナル製品の発注が増えてあっという間に独立企業。
下請けから完全に脱却して、工場も増設の繰り返し。
社長からは、五年経った今でも毎朝拝まれている。
経理の平社員だった俺は、名ばかりだけど総務部長になってるんだが、功績とは決して言えない売上貢献に誰も文句を言わない。
部長なのに、定時帰社を義務付けられてるとか後ろめたさしかない人事だ。

で、俺と暁の日常はと言うと。


「おーい、もうそろそろ起きる時間だろ?」


暮らし始めた当初、一人寝は寂しいと言う暁を甘やかして一つのベットに収まってたんだけど。
そろそろ止めどきじゃないのか?
去年からニョキニョキと伸びた頭を、つんつんの指で突く。

出産経験はあっても、子育て経験は無かったからさ。
俺を頼ってくれる暁が嬉しくて、なんだかんだと甘やかしてしまってる自覚はある。
反抗期に入った凛太郎と違って、他人だからだろうけど暁は荒ぶった態度を俺に見せたことはない。
凛太郎に益々口で敵わなくなってる隣のみなみなんて、俺に子育て相談してくるもんなぁ。
全然答えられないし、聞くだけだけど。

ピタッと俺の胸に頭を添えて、丸まって俺の腕の中でクークー寝ている暁。
身長もそのうち並びそうだし、声変わりも済んであの可愛い面影はこんな時しか感じられなくなってしまった。
「一樹の心音は、どんな睡眠薬より安らかに眠れるんです」と言われると、社長代行のスパルタ教育を受けているのを知っているから無碍に出来ないんだけどさ。


「んー」


むず痒い仕草で、顔を俺の胸にこすりつけてくんな、バカッ
こんなオジサン相手に、わざとじゃないんだろうけど乳首が刺激されちゃうだろうがっ
暁との仲が知れ渡ると、こっそり恋人を作ることもできなくなってご無沙汰歴も五年目だ。

正直、そこまで考えてなかったんだよな。
発情期のときは、抑制剤を飲んでいても万一のことを考えて離れて暮らすよう義務付けられている。
そのときは、暁が本家で暮らしてくれて目が届かなくなるから、こぉ、わざと薬を飲まない日とか作って自慰行為に浸ってみたりで発散を試みるんだけど。
正直、枯れてないし、肌の温もりも気持ち良さも知っちゃってる俺には物足りないんだよ。
だから、下手に刺激してくれるなっ


「おい、暁っ」

「⋯はよ、一樹」


ぽやんとした顔でふわふわの微笑みを向けられると、俺もつられてふわふわになって気が抜けてしまう。
油断してると、起き抜けの掠れた声が色っぽくてゾクッとくることも正直あったり、こぉ朝勃ちの元気な塊を腰に押し付けられたりヒヤッとするときもあったりで。
暁の朝のバリエーションは、心臓に悪い比率が増えてきている。
覚醒すると、やらしいことなんて知りませんよ的な筋の通った男前な顔をしてるんだけどな。

ぼんやりしてる暁を洗面所に押しやって、俺は二人分の朝食と弁当の準備。
一人暮らし経験もあるし、家事をしてるとこっそりお金も使えるから当たり前のように家のことはしている。

暁は、大学卒業後違う大学に入って他の分野を学んだり、αの社交界に出たり、鳳グループのプロジェクトに関わったりで忙しそうだ。
俺が13歳のときと比べると、まるで違う世界の住人。
本当によくやるよなぁと真面目な性格も含めて感心してしまう。

俺という共通点があるせいか、凛太郎とセットで雑誌特集も組まれ新世代経営者コンビと騒がれてるんだよな。
二人して、チャラ気のない凛々しい若武者のようなストイックさで人気も上々。
凛太郎は、家ではクソ生意気らしいが外面は良い。
暁は⋯


「味噌汁、大根とネギにしてくれたんだ」


急に背後に現れた暁は、低音ボイスで耳元で囁いたあと、当たり前のように俺の腰に手を回してスリスリ鼻頭でうなじを擦る。
味噌を研いでいた菜箸を取り落としそうになったじゃないかっ

動揺していることを気取らせないよう、なんとか踏ん張る。
なんか、年々家でのスキンシップが際どくなってないか?
外では、俺一筋の一途で真面目な暁を装っているのに、家だとスキンシップ過多の甘えただ。
一緒に住み始めたときから、ハグも当たり前のようにしてきてたし、お風呂も今も一緒に入ってこようとするくらい距離感が近いんだよな。
誰も見てないんだから、家の中でそんな番プロジェクトのふりをしなくて良いと思うんだけど、「何気なく出てしまうものなので、慣れは必要なんですよ」と諭されている。


「う、うなじは、Ωにとったら大事なところだと何回も言ってるだろう」

「はい、大事なところですよ」


確かめるように指でなぞられ、堪らずその腕の中から飛び退いた。
鍋の中に味噌の塊が落ちてしまったが、あとでいっぱいかき混ぜて誤魔化そう。

暁は、俺が睨んでも怒っても全く動じない。
逃げた俺にもっと何かを仕掛けてきそうな微笑みを浮かべて、胸をざわつかせてくるんだ。
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