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第1話
スイちゃんのおしごと (4)
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あれから時は少し経った。
別にそんな頻繁にコロシの依頼なんてモノは無いからいつも通りに恐喝とか半殺しとかの本格的な取り立ての現場に顔を出していたけれどその依頼すらも昨日、仲介屋に受け付けないよう依頼を出した。
――今、私に迫っている命の期限はあと約十日。
フリーランスの“スナイパー”と言う生業。
オンナの身と体の小ささから本格的な素手の肉弾戦には弱いけれど私の弾丸は必中、依頼された通りにターゲットを射抜く。
お得意様は同じ穴の狢である裏社会の住人たち、それでも私のような実利に合わせた高額の射手を雇えるのは上層部か羽振りの良い新興の組織くらいだった。
そして最近、私の回りで妙な気配を感じるように……命を狙う事はあっても狙われる筋合いはない。私たちはカネで雇われているだけの身分。
殺るなら依頼人の方を殺れば良い。
次のコロシの依頼は十日後、とある組の上級幹部の射殺。
私が仲介屋に全ての依頼の受注を止める前に既に引き受けてしまっていた案件。悪天候が予想されない限り私は自分の都合で「出来ない」と受けた仕事を先延ばしにしたり、断念するなど今まで一度も無かった。一度も、だ。
――私の命の期限が確信に変わったのは数日前の“仕事中”のこと。
そう、珍しく二件立て続けにコロシの依頼が入っていたのだけれどその先発の方。
夜の闇に深く身を浸す為に年相応の服の上から被っていたスナイパーマントとバラクラバ……依頼人からの指定が無ければ私が検討した射程圏内の建物に忍び込むなりするのが常だけどその日のマトを狙える場所は極端に限られていた。
やりにくそうだったらバイクの後部席かドライバーをチャーターしようかとも思っていたけれどそんな事は今まで幾らでもあったし別に気になどしていなかった。
雑居ビルの影、会食から出て来たマトが私に引き金を引かせようとした時。
撃たれたのは私だった。
けれど狙撃手、射手である私たちが生きているのはゼロコンマの世界。
私のライフルは二発、放たれた。
一発はマトへ、そしてもう一発は私を撃ったナニモノかの方面へ。
二発目は到底当たりなどしないと分かっていたから威嚇射撃のつもりだった。でも、私のすぐ側に着弾していた跡に唇を噛む。
下手くそが、と心の中で捨て台詞を吐きながら暫く警戒を解かなかったけれどそれ以上の発砲は無く……現場から立ち去って雑踏に紛れた私は真っ先にこの仕事を斡旋した“仲介屋”の謀反を疑った。
私の仕事がバラされているのではないのか、そうでなければ到底……暗殺の仕事をする者の背後は取れない。この私の背後が取れるワケがない。
こちらが仲介料としてカネを払って斡旋して貰っていたコロシの仕事。仲介屋も今まで不義理を働くようなヤツじゃなかったし、もしもそんな事を起こせば直ちに私たちフリーランスがどこからともなく探し出して“完璧な報復”をする。
私たちはどこの組織にも属さないプロであり、これはビジネス――命を賭けた切った張ったの博打じゃない。そんな時代はとうに過ぎている。
「元気ないね」
今もまた夜、月の無い新月の日。
最近、私の事を嫁にしたいだのなんだのと言い寄って来る藤堂会の本部若頭、藤堂棗。以前、この男の父親……藤堂会会長から依頼を受けた後からだ。妙に私の調子が狂っている。
特にこの男、菓子作りが趣味で正体を隠してその製作過程の動画を配信している私の束の間の癒し、推しだった男は何かにつけて直接会う口実を取り付けては私に手製の焼き菓子を持ってくるようになった。
私がそれを拒めないのは情報をリークして貰っていたから。
仲介屋に疑いを持った私が仲介屋を生かして泳がせながらも調査をするにあたってどこを頼ろうかとしていた時にその……ちょうど、連絡先を知っていたから。調査費と情報料に対してキャッシュで支払いをしようとしたら「私と会うだけで良いよ」と言われ――いつも、私と男は黒塗りの後部座席で“お茶会”をしていた。
きっとあの動画の視聴者、この男に好意を持った者は私を殺したいだろう。
男が手ずから作った菓子で、その作った本人を隣に侍らせ、まるで“お姫様”の待遇だ。別に私の女の身に手を出す真似はしてこなかったし、何かあった際には隠し持っているハンドガンで即、射殺の意思は示してある。
車内と言う密室。
密談を交わすには打って付けの場所。
ドライバーが適当に夜の湾岸を流し始めながら私の膝にシルクのブランド物の大判ハンカチを掛けた男が今度は紙製のお洒落なデリボックスを差し出して来た。
「型抜きしたドーナッツの真ん中の所って可愛いよね」
蓋を開ければころころとひしめき合っている丸いドーナッツ。チョコレートやナッツ系か、いくつかコーティングをされている中でもピンク色のストロベリーチョコの華やかな色合いが薄暗い車内でもひと際私の目を惹いた。
「それね、ドライストロベリーを砕いたから酸味もしっかりあるんだけど」
どうぞ、と差し出されるプラスチックのピック……これもまた可愛らしいヤツに丸いドーナッツを刺して口に運ぶ。味の感想を一言でも伝えないと男との仕事の会話がこれ以上、続かないからだ。
ああ、確かにほんのり甘い大人向けのドーナッツにストロベリーの芳香と酸味が良く合っている。
「美味しい……」
悔しいくらいにいつも美味しい。
感想についてのボキャブラリーが無い私の言葉でもこの男は“容易い”のかとても嬉しそうに毎回違う試作品の焼き菓子を持ち込んでは私に与えていた。研究熱心でもあるのか流行りの既製品のお菓子も持ち込んできて、帰りにそれらを全て持たされる私の身にもなって欲しい。全部、食べるけど。
「それで、君の命を狙っている“犯人”についてなんだけど」
「私に恨みがあるのなら仕事中、無防備とまではなりませんが殺すならその時くらいですから。常にマトを注視していれば背中は空いてしまう」
「うん……例の君たちが使っている仲介屋の回りを調べてみたんだけど流石、と言うか雲隠れしているよ」
悔しいくらいに美味しいドーナッツ、の真ん中。
プレーンの何もコーティングされていない物をまた一つ口に運べば外側はカリッとしていて、中はふわふわで、ほんのり甘くて。
「それ、気に入った?」
黙って頷く私に嬉しそうにしている男。
「ね?だから私のお嫁さんになって一緒に住めば、私が君の命を守ってあげられるんだけど」
「……スナイパーに肉の壁など必要ない」
「そう言わずにさ。明日はさっぱりとしたジンジャーブレッドを焼くし、その次はブールドネージュを焼く予定が入ってるんだけどな」
ああ、悔しい。
私、絶対にこの男に胃袋を握られている。
「私の部屋にお試しでお泊りしようよ。手は絶対に出さないから」
語尾にハート模様が透けて見えているのは気のせいだろうか。
「……ロクに、寝ていないんだろう?」
必中の射手がそんなコンディションじゃ、となじられても化粧でも隠しきれない疲労の青白い顔をしていた私は何も言い返せなかった。この男の言う通り、ここ数日あまり眠れていない――差し迫る命の期限にひりつき、眠っている余裕が無かった。
今まで命を散々奪ってきておいて、自分の命は惜しいと言う都合の良い人間の屑。
睡眠不足は判断力を鈍らせる。
だから私は男の提案に「仮眠だけさせて」と乗ってしまったのだった。
湾岸を流していた黒塗りが行先を変える。
隣の男は心底嬉しそうに……でも私は何故だろう、甘い物を食べたからなのかとても眠くなってきて。そう言えば食事もあまり取っていなかったから、余計に僅かな糖分と炭水化物でも……。
眠りの世界へと堕ちて行く間際、隣の男が「おやすみ」と笑う。
その瞳は月の無い今夜の闇空のように暗く、それなのに口元はまるで三日月のように綺麗な弧を描いて「容易い子だなあ」と言っていた。
別にそんな頻繁にコロシの依頼なんてモノは無いからいつも通りに恐喝とか半殺しとかの本格的な取り立ての現場に顔を出していたけれどその依頼すらも昨日、仲介屋に受け付けないよう依頼を出した。
――今、私に迫っている命の期限はあと約十日。
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そして最近、私の回りで妙な気配を感じるように……命を狙う事はあっても狙われる筋合いはない。私たちはカネで雇われているだけの身分。
殺るなら依頼人の方を殺れば良い。
次のコロシの依頼は十日後、とある組の上級幹部の射殺。
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――私の命の期限が確信に変わったのは数日前の“仕事中”のこと。
そう、珍しく二件立て続けにコロシの依頼が入っていたのだけれどその先発の方。
夜の闇に深く身を浸す為に年相応の服の上から被っていたスナイパーマントとバラクラバ……依頼人からの指定が無ければ私が検討した射程圏内の建物に忍び込むなりするのが常だけどその日のマトを狙える場所は極端に限られていた。
やりにくそうだったらバイクの後部席かドライバーをチャーターしようかとも思っていたけれどそんな事は今まで幾らでもあったし別に気になどしていなかった。
雑居ビルの影、会食から出て来たマトが私に引き金を引かせようとした時。
撃たれたのは私だった。
けれど狙撃手、射手である私たちが生きているのはゼロコンマの世界。
私のライフルは二発、放たれた。
一発はマトへ、そしてもう一発は私を撃ったナニモノかの方面へ。
二発目は到底当たりなどしないと分かっていたから威嚇射撃のつもりだった。でも、私のすぐ側に着弾していた跡に唇を噛む。
下手くそが、と心の中で捨て台詞を吐きながら暫く警戒を解かなかったけれどそれ以上の発砲は無く……現場から立ち去って雑踏に紛れた私は真っ先にこの仕事を斡旋した“仲介屋”の謀反を疑った。
私の仕事がバラされているのではないのか、そうでなければ到底……暗殺の仕事をする者の背後は取れない。この私の背後が取れるワケがない。
こちらが仲介料としてカネを払って斡旋して貰っていたコロシの仕事。仲介屋も今まで不義理を働くようなヤツじゃなかったし、もしもそんな事を起こせば直ちに私たちフリーランスがどこからともなく探し出して“完璧な報復”をする。
私たちはどこの組織にも属さないプロであり、これはビジネス――命を賭けた切った張ったの博打じゃない。そんな時代はとうに過ぎている。
「元気ないね」
今もまた夜、月の無い新月の日。
最近、私の事を嫁にしたいだのなんだのと言い寄って来る藤堂会の本部若頭、藤堂棗。以前、この男の父親……藤堂会会長から依頼を受けた後からだ。妙に私の調子が狂っている。
特にこの男、菓子作りが趣味で正体を隠してその製作過程の動画を配信している私の束の間の癒し、推しだった男は何かにつけて直接会う口実を取り付けては私に手製の焼き菓子を持ってくるようになった。
私がそれを拒めないのは情報をリークして貰っていたから。
仲介屋に疑いを持った私が仲介屋を生かして泳がせながらも調査をするにあたってどこを頼ろうかとしていた時にその……ちょうど、連絡先を知っていたから。調査費と情報料に対してキャッシュで支払いをしようとしたら「私と会うだけで良いよ」と言われ――いつも、私と男は黒塗りの後部座席で“お茶会”をしていた。
きっとあの動画の視聴者、この男に好意を持った者は私を殺したいだろう。
男が手ずから作った菓子で、その作った本人を隣に侍らせ、まるで“お姫様”の待遇だ。別に私の女の身に手を出す真似はしてこなかったし、何かあった際には隠し持っているハンドガンで即、射殺の意思は示してある。
車内と言う密室。
密談を交わすには打って付けの場所。
ドライバーが適当に夜の湾岸を流し始めながら私の膝にシルクのブランド物の大判ハンカチを掛けた男が今度は紙製のお洒落なデリボックスを差し出して来た。
「型抜きしたドーナッツの真ん中の所って可愛いよね」
蓋を開ければころころとひしめき合っている丸いドーナッツ。チョコレートやナッツ系か、いくつかコーティングをされている中でもピンク色のストロベリーチョコの華やかな色合いが薄暗い車内でもひと際私の目を惹いた。
「それね、ドライストロベリーを砕いたから酸味もしっかりあるんだけど」
どうぞ、と差し出されるプラスチックのピック……これもまた可愛らしいヤツに丸いドーナッツを刺して口に運ぶ。味の感想を一言でも伝えないと男との仕事の会話がこれ以上、続かないからだ。
ああ、確かにほんのり甘い大人向けのドーナッツにストロベリーの芳香と酸味が良く合っている。
「美味しい……」
悔しいくらいにいつも美味しい。
感想についてのボキャブラリーが無い私の言葉でもこの男は“容易い”のかとても嬉しそうに毎回違う試作品の焼き菓子を持ち込んでは私に与えていた。研究熱心でもあるのか流行りの既製品のお菓子も持ち込んできて、帰りにそれらを全て持たされる私の身にもなって欲しい。全部、食べるけど。
「それで、君の命を狙っている“犯人”についてなんだけど」
「私に恨みがあるのなら仕事中、無防備とまではなりませんが殺すならその時くらいですから。常にマトを注視していれば背中は空いてしまう」
「うん……例の君たちが使っている仲介屋の回りを調べてみたんだけど流石、と言うか雲隠れしているよ」
悔しいくらいに美味しいドーナッツ、の真ん中。
プレーンの何もコーティングされていない物をまた一つ口に運べば外側はカリッとしていて、中はふわふわで、ほんのり甘くて。
「それ、気に入った?」
黙って頷く私に嬉しそうにしている男。
「ね?だから私のお嫁さんになって一緒に住めば、私が君の命を守ってあげられるんだけど」
「……スナイパーに肉の壁など必要ない」
「そう言わずにさ。明日はさっぱりとしたジンジャーブレッドを焼くし、その次はブールドネージュを焼く予定が入ってるんだけどな」
ああ、悔しい。
私、絶対にこの男に胃袋を握られている。
「私の部屋にお試しでお泊りしようよ。手は絶対に出さないから」
語尾にハート模様が透けて見えているのは気のせいだろうか。
「……ロクに、寝ていないんだろう?」
必中の射手がそんなコンディションじゃ、となじられても化粧でも隠しきれない疲労の青白い顔をしていた私は何も言い返せなかった。この男の言う通り、ここ数日あまり眠れていない――差し迫る命の期限にひりつき、眠っている余裕が無かった。
今まで命を散々奪ってきておいて、自分の命は惜しいと言う都合の良い人間の屑。
睡眠不足は判断力を鈍らせる。
だから私は男の提案に「仮眠だけさせて」と乗ってしまったのだった。
湾岸を流していた黒塗りが行先を変える。
隣の男は心底嬉しそうに……でも私は何故だろう、甘い物を食べたからなのかとても眠くなってきて。そう言えば食事もあまり取っていなかったから、余計に僅かな糖分と炭水化物でも……。
眠りの世界へと堕ちて行く間際、隣の男が「おやすみ」と笑う。
その瞳は月の無い今夜の闇空のように暗く、それなのに口元はまるで三日月のように綺麗な弧を描いて「容易い子だなあ」と言っていた。
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