R18『猫の王と鈴の首飾り ~大人の女性の為の逆、猫吸い譚~』

緑野かえる

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第十話、今日はきっと特別な日

(五)※

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 重なる体。
 今日は国芳さんに全て身を任せて、私は揺れ続けていた。

「は、っ……う、それ……や、ッ」

 甘く、いってしまったばかりの体が反応してしまう。
 抱きつくように座ってしていた時に一回、国芳さんは出していたのに全く萎えることなく引かなかった熱。
 今の私は布団の上に仰向けに転がされてまた押し入って来る熱を受け入れてしまう。私も、その熱に浮かされて口では嫌だと言っても……国芳さんの腰を引き寄せるように足を引っ掛けて、求めてしまっていた。

 お互いにもう、ぐしょぐしょ。
 こんなこと、明るい内からしていても……と思っていたのにもう辺りは薄暗い。

「すず子」

 私のはしたない足に気を良くしてしまった人は私の中を浅く、深く、と好き勝手に揺らしている。
 今日はきっと特別な日で、私も国芳さんも愛欲のままに互いを貪っていた。

 がっちりと上から掴まれ、布団に押し付けられている私の手のひらは握り返す事を許さないくらいに強く握られている。

「こんな、もう、だめ……あした、おきられ……にゃ、あ」

 またしてもたまちゃんに恥ずかしく、情けない姿を晒してしまう。

「ね、もう……おねが、い……だし、て」

 永遠に続いてしまうのかもしれないようなこの濃厚な時間。
 私の言葉に反応する国芳さんの熱の塊が奥の方でぴたりと止まって、見上げた私ににやりと笑った。
 三角の耳もぴん、と立って。

「息を止めるなよ」
「ひッ、あ」

 肌と肌がぶつかる音と、ぐしょぐしょになっている繋がった場所から凄い音がして、耳を塞ぎたくなる。

「んんッ!!」
「お前はここが弱かったな」
「やだ、や……ぐ、りぐりしないで……!!」

 力任せじゃないし、分かってやっている。
 お腹の奥の方は感じにくいと言われているけれど私はすっかり国芳さんのせいで暴かれて、性感帯になってしまっていた。だからそんなに深い所で揺すられてしまうと歯を、食い縛りたくなってしまう。

「ひ、ぐ、」
「すず子、息を」
「やだ……っ、あぐ」

 子供みたいにいやいやをしても私の手を掴んでいる国芳さんが嬉しそうなのがなんとも……私の意識はもう、あなたでぐちゃぐちゃなのに。

 普通だったら一回果ててしまえばそれでもう体は満足してしまうのに今日はどれだけ国芳さんに体を甘く震わせられたか分からない。
 もうだめ。何も、考えていられない。

 ぐ、と声を上げる国芳さんも限界が近い。
 それだけしかもう、分からない。

 その時、揺れが止まったと思えば掴まれていた手が離れてついに力任せにきつく抱き寄せられた私の背がしなる。

「い、っ」

 声にならない叫び声が喉を引きつらせる。
 フーッ、フーッと呻りながら私の肩に喰らいついた国芳さんに涙がにじむ程、激しく攻め立てられて……背が反ってしまって結構無理な体勢なのに、体は強い快楽にがくがくと勝手に震えてしまう。

「ひ、あ、ぁああ!!」

 いってるのに、止めてくれない。
 力の入らない私の体を噛んで、思い切り揺さぶり続ける人の本能の片鱗を見る。

「あう……う、あ……ぬい、て……ッ、おねが、い……」

 気が、おかしくなる。
 私の意思と反した強すぎる快感に震えが止まらない。

 すると密着していた国芳さんのお腹がぐ、と動いた。そのまま、やっと爆ぜてくれたのだと知った私の体はそれでもびくびくしていて、それが止まれば体が動かなくなってしまっていた。


「すず子、すまない」
「きらい……」

 ぎちぎちと、理性を取り戻した国芳さんの背に爪を立てる。先に謝られた意味が身をもって分かってしまったけれど、もう今はそんなのどうでもいい。

 体がぜんぜん、動かない。

 くたくたの体の中からずるり、と引き抜かれる熱と……私のその、繋がっていた所はなんだかひりひりする。それにいつの間につけたのか、胸元にはうっ血の赤い後も幾つか残っている、と言うことは強く噛まれた場所が、痣になってしまうかもしれない。

 朝になっても布団から出られない私と一晩中謝っていた人。
 初めて夜を明かした時と同じように、足腰がまるで立たなくなっている私に「あれだけ発散したからか、匂いが元に戻っている」と胡坐をかいて隣に座っていた国芳さんは私の唇に剥いた葡萄の大きな粒を挿し入れて、ついでに指まで舐めさせようとしたので私はその指先を噛む。

「まだ、ひりひりするんです……」
「すまない」
「背中も、痛いです」

 無理な体勢で押し入れられて、筋肉痛が起きていた。
 ここは神域、痛みやそれに伴う苦痛は次第になくなるとは言っても……記憶のせいで痛い気がしてならない。

「お披露目の日のあとまで、しないと」
「約束する」
「匂いを吸うのは、良いですけど……」
「分かった」

 絶対ですよ、と念を押す。

「まあ、もうこれも無いしな」

 使い切って、中身が空っぽの小さな木箱の存在に顔に火が付いたように熱が上がる。確かにそれの枚数は私も把握していたけれど、見せなくたっていいのにこの人は。

 それから国芳さんの部屋は本人の手によって早朝から戸と言う戸が開けられ、几帳の中で寝そべっている私は全く起きられる状態ではなく、ぽっと頬を赤らめてやってきたたまちゃんにまた醜態を晒してしまうのだった。
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