【R18】『猫の王と鈴の首飾り ~大人の女性の為の逆、猫吸い譚~』

緑野かえる

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第四話、美しいつがい

(三)※

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 寝かされて解かれた寝巻きの腰紐……着くずれ、一枚ずつ開かれていく私の体。
 国芳さんも寝間着の着物が邪魔だったのか袖を抜いて上半身が素肌になる。その姿にある男性の色気か、それとも初めて感じる素肌から匂い立つこの切ない甘さのせいなのか、私の意識はもう彼が私に成すことひとつひとつに敏感になって、僅かな触れ合いにも反応してしまう。

「んっ……」

 また私の胸元に顔を落とす人。
 足の間を探られてしまえば下履きだけのそこは隔てる布なんてないし、私も抵抗する気は無かった。
 差し入れられた指先は私の奥を暴き、ふうふうと息をするだけになっている私に国芳さんは「少し緩めてくれないか」と言う。
 どうやら思いきり彼の腕を太ももで絞めてしまっていたらしく言われて恥ずかしくなって力を緩めた。

「熱いな」

 滲み潤む場所が容赦なくあの指で開かれる。
 私の口を弄んだあの指が、今度は……私のお腹の下の方で蠢く。

「お前はあまり啼かないのか」

 国芳さんはそっちの方が好き?なんて問えない。

「啼かせてやろうか」

 低い声が私の羞恥を掻いてしまう。
 それなのにその指先は私の濡れた入り口を優しく押し広げては念入りに……なんだか下拵えされている気分になる。

「そういう、のは」
「趣味では無い、と?俺はお前が夜毎、猫のように啼いている姿を何度想像した事か」

 国芳さんの視線の先には彼が肩に掛けていた羽織りものと、私が肩に掛けていた羽織りものが無造作に重ねられている。流石に汚してしまったら大変だと国芳さんも思ったのだろう。
 あの色打掛のような羽織りもの、私が肩に掛けていた方も元は国芳さんのもの。

 恋文を交わすように私たちは自分の匂いを互いに交換していた。

 頃合いを見たところでずるりとそのまま布団に寝かされれば重なり合うあの羽織りもののように、今から私と国芳さんは体を重ねる、けれど。

「え……それ、は」

 口ではあんなことを言っても優しくしてくれる人が組み敷いている私の頭上に不自然に腕を伸ばしたからつい、目で追いかけてしまった。

「後で説明する。まだ、怖いだろ」

 国芳さんの手にあったのは一枚のスキンのパッケージ。
 どこで手に入れて来たのか、もしかしてこの時の為にわざわざ現世まで降りて買って来たのだろうか。でも私の体は人間、国芳さんの体は……こうして触れ合える実体があっても、どうなんだろう。よく考えてみたら言われたように少し、怖くなる。

 だから国芳さんは私を怖がらせない為に人の営みと変わらないように気を使ってくれている、のかな。
 それにたまちゃんがよく言っていた首を噛まれると言うのも今のところされていない。限りなく人と人のように接してくれている。

 でもどこでそんな事、知ったのか。
 あのたまちゃんですら五十歳となると国芳さんの年齢は、三桁?
 それなら多少は、私と交わる為にちょっとした勉強とかしたのかもしれない。

「あっ……」

 気が逸れてしまった私の胸の先がきゅ、と摘ままれた。

「お前、ここが弱いな?」

 それは国芳さんが不意打ちしたから。
 少し引っ張られてから離されれば相応に揺れる。
 それが面白かったのか国芳さんの興味を引いたのか、幾度か同じように摘ままれては離される。

「ん……っく、」

 変な気分。
 本当ならもどかしいくらいの淡い快感の筈なのに国芳さんに触られていると切なさが溢れて来る。もっと、もっと、と求めてしまう。

 ああ、私の欲望が国芳さんに伝わってしまったのかざらざらした舌が私の胸の先に触れる。

「それ、だめ……っ」

 国芳さんが、没頭し始めてしまった。

「は……っ、は」

 私は呼吸をすることしか出来ない。
 もしかしたら私、このまま胸だけで淡く果ててしまうかもしれない。もうやめて、と伸ばした手で意図せず彼の頭を……耳のある所に触れてしまった。

「っ、く」

 口が離されて、赤く腫れそうになっている胸と一瞬何か我慢したように呻いた国芳さん。

 もしかして、耳……ともう一度彼の耳のふちに指を滑らせる。

「やめろ、すず子」

 顔が赤くなっている国芳さん。
 手を伸ばした私の指先を拒んでいないから、嫌じゃないのは分かる。
 それならきっとそこは、彼の気持ちがいい所。ちょっとした出来心で、私は自分の指先で彼の薄い三角の耳をそれぞれにすりすりと指先で優しく摘まんで擦ってみる。

 びくびくと抵抗する耳と一緒に国芳さんの吐息が強く――これ、もし私が毛繕いのように舐めたら国芳さんはどんな反応をするんだろう。

「お前……本当に啼かせるぞ」

 国芳さんが体を起こして、私の指先は耳から離れてしまった。
 だって、国芳さんも私の胸をざらざらの舌で舐め続けるから。

 もうしないで、と自分の腕で胸を隠してしまえば深く息をする国芳さんはどうやら私の中に押し入る事を決めたようで、私も少し身構えた。
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