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第三話、姫を抱く ※
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そして今、私と宗君はまた二人で過ごしている。
共に実家の屋敷に住んでいた私たち――悔しいかな、父親たちがまた勝手に準備していたらしく私の父の持ち物でもあるビジネスホテルの上層フロアが貸切となり、今に至る。
元は極道者のみならず各界の密談の場だったり、少し世間から隠れなくてはならない大物が糾弾されやすいハイクラスホテルを避け、外観はただのビジネスホテルに見えるこの場所に身を隠したり……だから内装は良いホテルと引け劣らない程の豪華な物。エレベーターから出てもカードキーが無ければこのフロアには入れないし隣には会議室もある。
だからと言って明け透けに私たちが“そう言う事”をする前提に部屋を用意をするな、と言いたくもなるけれどハイヤーもチャーターせずに“二泊三日”をしっかり過ごしてきたと言う事実を作ってしまった私達がもう何を言ったって無駄なので宗君と二人でお正月を過ご……せなかった。
彼は組の若頭、言わば組長代行も務めるわけで社交の場に顔を出したりと忙しい。
私もまた、それなりに仕事はあるけれどオーナーをしているお店は正月休みだしノートパソコンとスマートフォンさえあればどこでも仕事は出来た。
「クリスマスも年越しも元旦も、撫子さんと過ごす筈だったのに……」
「極道は縁起を担ぐ風習が強いんだから仕方ないわよ」
遅く帰って来た宗君は「お風呂入って来ます」と行ってしまう。もう新婚生活みたい、と思いながら広いスイートルームで――お正月だからいつもより明りの少ない繁華街を眺める。
そうして宗君がお風呂に入っている内に元旦から日付が変わって二日になってしまっていた。
私はもう先にお風呂は済ませていて、ゆるいロングキャミソールの上に厚手のナイトガウンを着て彼がお風呂から上がって来るのを待っていた。
流石に今日も彼は飲んでいるだろうし晩酌はしないかな、と思っていれば彼も同じようにガウンを羽織ってやって来る。
「もうテッペン……って事は二日、か」
お水飲む?と聞こうとした私より先に「撫子さん」と名前を呼ばれて振り向く。
「撫子さんが親父たちの思惑に振り回されたくないのは分かっています。でも、俺は貴女を愛してるから……先月からずっとお預け喰らってたんです。それに極道は縁起を担ぐ、と」
抱き寄せられて、あっと言う間にベッドに座らされて。
「今から姫初め、させてください」
意外な言葉に呆気にとられてしまった私と真剣に問う宗君。
あれから年末が来てしまい本当に忙しかったから、宗君はその間ずっと生殺しだったと言うかなんというか。
今からするのは構わないけれどなんて答えてあげたらいいのだろう……姫初めって、と私はとりあえず彼の真剣な熱意にこたえてあげるように頷く。
「優しく抱きます。ああ、本当に撫子さんの事をいっぱい愛してあげられる」
言葉から察するに――これは、大変かもしれない。
私の本能がそう告げている。
「宗君、落ち着いて……ね?私、逃げたりしないから、まずは深呼吸し……ひゃん!!」
押し倒された衝撃で背中が弾む。
「いい匂い。どうして同じボディーシャンプー使ってるのにこんなに撫子さんからいい匂いがするんだろう」
「くすぐ、ったい……ん、んんっ」
挨拶回りとかで疲れている筈なのにこの力強さ。
私の胸元に顔をうずめて匂いを吸って、と思いきや性急にガウンを剥されて、中に着ていたロングのキャミソールも下着も全部、彼の手によって脱がされベッド下に放られる。
「いつ見ても綺麗だ」
温泉宿にいた時は胸元にある私の白い撫子の意匠に唇を寄せて淡いキスをしてくれていた宗君だったけれど今日は違っていた。
きつく、長く。
少し痛みを感じる程に私の胸元で彼は……散らばる白い撫子の花たちのふちを赤く染める。
「ん、っ……宗、く……ん」
「感じますか」
それなら、ともう一つ。
誰にも染まらない白いままだった私の撫子の花びらが色づいてゆく。
心臓の近くから胸に少し掛かるくらいの所に彫ってあるから、宗君も赤く痕を残しやすい柔らかい所をきつく吸う。それがどうしてももどかしくもあって。
つい私が膝をすり寄せてしまえば宗君は嬉しそうに私のその足の間に手を差し入れて「撫子さん凄い濡れてる」と言う。たかが二つ年下なだけなのに、どうしてこんなに恥ずかしいのだろう。
添い寝をするように彼は私の横について優しい手つきで愛してくれるけれど、その指の感覚はまだ馴れていない。あの宿での夜、彼からはこうして沢山、愛して貰ったけれど……あの時はスキンが無いからと絶対に私に挿入しなかった彼はせいぜい指二本くらいで私を追いやっていた。
でも私は、彼の体の大きさと……それに付随する物の大きさを自らの手で何度も確認していた。少し強めに扱いても本当に硬くて、おっきくて。
今もゆるく私の体に押し当てるようにして快楽を楽しんでいる彼だって本当はもう挿れたいのだと分かっている。それでもゆっくりと私の中を指で押し広げるようにほぐしてくれていた。
背と双肩に施してある関東彫りの極彩色の墨を、誰しもが怖がる大きな体躯を持っているのに……根は繊細な子。
「宗君、苦しくない?」
彼の方に頭を傾ける。キスをねだっているのだと勘違いしたのかすぐに舌を絡ませて、くちゅくちゅと私を喰ってしまう宗君。
「指が三本入るまでは、しません……から」
彼の低くて、私のお腹をくすぐる声に肩を竦める。
「撫子さんがこんなに俺に濡れてくれてるの本当に嬉しいけど、もう少し……こうして、ナカを」
蠢く指先に翻弄されながら身を任せて私はいつしか宗君にすがっていた。
「撫子さん気持ちいい?こことか、好き?」
とんとん、とそこまで深くないお臍側の場所を内側から指先で叩かれると不思議な感覚と言うか多分そこって、段階をちゃんと踏めばすごく気持ちよくなる所だ。
「まだ、分からな……い、でも」
宗君にして貰うと気持ちいいかも、と正直に告げると嬉しそうに「分かった」と優しく愛してくれる。
共に実家の屋敷に住んでいた私たち――悔しいかな、父親たちがまた勝手に準備していたらしく私の父の持ち物でもあるビジネスホテルの上層フロアが貸切となり、今に至る。
元は極道者のみならず各界の密談の場だったり、少し世間から隠れなくてはならない大物が糾弾されやすいハイクラスホテルを避け、外観はただのビジネスホテルに見えるこの場所に身を隠したり……だから内装は良いホテルと引け劣らない程の豪華な物。エレベーターから出てもカードキーが無ければこのフロアには入れないし隣には会議室もある。
だからと言って明け透けに私たちが“そう言う事”をする前提に部屋を用意をするな、と言いたくもなるけれどハイヤーもチャーターせずに“二泊三日”をしっかり過ごしてきたと言う事実を作ってしまった私達がもう何を言ったって無駄なので宗君と二人でお正月を過ご……せなかった。
彼は組の若頭、言わば組長代行も務めるわけで社交の場に顔を出したりと忙しい。
私もまた、それなりに仕事はあるけれどオーナーをしているお店は正月休みだしノートパソコンとスマートフォンさえあればどこでも仕事は出来た。
「クリスマスも年越しも元旦も、撫子さんと過ごす筈だったのに……」
「極道は縁起を担ぐ風習が強いんだから仕方ないわよ」
遅く帰って来た宗君は「お風呂入って来ます」と行ってしまう。もう新婚生活みたい、と思いながら広いスイートルームで――お正月だからいつもより明りの少ない繁華街を眺める。
そうして宗君がお風呂に入っている内に元旦から日付が変わって二日になってしまっていた。
私はもう先にお風呂は済ませていて、ゆるいロングキャミソールの上に厚手のナイトガウンを着て彼がお風呂から上がって来るのを待っていた。
流石に今日も彼は飲んでいるだろうし晩酌はしないかな、と思っていれば彼も同じようにガウンを羽織ってやって来る。
「もうテッペン……って事は二日、か」
お水飲む?と聞こうとした私より先に「撫子さん」と名前を呼ばれて振り向く。
「撫子さんが親父たちの思惑に振り回されたくないのは分かっています。でも、俺は貴女を愛してるから……先月からずっとお預け喰らってたんです。それに極道は縁起を担ぐ、と」
抱き寄せられて、あっと言う間にベッドに座らされて。
「今から姫初め、させてください」
意外な言葉に呆気にとられてしまった私と真剣に問う宗君。
あれから年末が来てしまい本当に忙しかったから、宗君はその間ずっと生殺しだったと言うかなんというか。
今からするのは構わないけれどなんて答えてあげたらいいのだろう……姫初めって、と私はとりあえず彼の真剣な熱意にこたえてあげるように頷く。
「優しく抱きます。ああ、本当に撫子さんの事をいっぱい愛してあげられる」
言葉から察するに――これは、大変かもしれない。
私の本能がそう告げている。
「宗君、落ち着いて……ね?私、逃げたりしないから、まずは深呼吸し……ひゃん!!」
押し倒された衝撃で背中が弾む。
「いい匂い。どうして同じボディーシャンプー使ってるのにこんなに撫子さんからいい匂いがするんだろう」
「くすぐ、ったい……ん、んんっ」
挨拶回りとかで疲れている筈なのにこの力強さ。
私の胸元に顔をうずめて匂いを吸って、と思いきや性急にガウンを剥されて、中に着ていたロングのキャミソールも下着も全部、彼の手によって脱がされベッド下に放られる。
「いつ見ても綺麗だ」
温泉宿にいた時は胸元にある私の白い撫子の意匠に唇を寄せて淡いキスをしてくれていた宗君だったけれど今日は違っていた。
きつく、長く。
少し痛みを感じる程に私の胸元で彼は……散らばる白い撫子の花たちのふちを赤く染める。
「ん、っ……宗、く……ん」
「感じますか」
それなら、ともう一つ。
誰にも染まらない白いままだった私の撫子の花びらが色づいてゆく。
心臓の近くから胸に少し掛かるくらいの所に彫ってあるから、宗君も赤く痕を残しやすい柔らかい所をきつく吸う。それがどうしてももどかしくもあって。
つい私が膝をすり寄せてしまえば宗君は嬉しそうに私のその足の間に手を差し入れて「撫子さん凄い濡れてる」と言う。たかが二つ年下なだけなのに、どうしてこんなに恥ずかしいのだろう。
添い寝をするように彼は私の横について優しい手つきで愛してくれるけれど、その指の感覚はまだ馴れていない。あの宿での夜、彼からはこうして沢山、愛して貰ったけれど……あの時はスキンが無いからと絶対に私に挿入しなかった彼はせいぜい指二本くらいで私を追いやっていた。
でも私は、彼の体の大きさと……それに付随する物の大きさを自らの手で何度も確認していた。少し強めに扱いても本当に硬くて、おっきくて。
今もゆるく私の体に押し当てるようにして快楽を楽しんでいる彼だって本当はもう挿れたいのだと分かっている。それでもゆっくりと私の中を指で押し広げるようにほぐしてくれていた。
背と双肩に施してある関東彫りの極彩色の墨を、誰しもが怖がる大きな体躯を持っているのに……根は繊細な子。
「宗君、苦しくない?」
彼の方に頭を傾ける。キスをねだっているのだと勘違いしたのかすぐに舌を絡ませて、くちゅくちゅと私を喰ってしまう宗君。
「指が三本入るまでは、しません……から」
彼の低くて、私のお腹をくすぐる声に肩を竦める。
「撫子さんがこんなに俺に濡れてくれてるの本当に嬉しいけど、もう少し……こうして、ナカを」
蠢く指先に翻弄されながら身を任せて私はいつしか宗君にすがっていた。
「撫子さん気持ちいい?こことか、好き?」
とんとん、とそこまで深くないお臍側の場所を内側から指先で叩かれると不思議な感覚と言うか多分そこって、段階をちゃんと踏めばすごく気持ちよくなる所だ。
「まだ、分からな……い、でも」
宗君にして貰うと気持ちいいかも、と正直に告げると嬉しそうに「分かった」と優しく愛してくれる。
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