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単話『これからも、ずっと』

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 夜が更ければ、お風呂に入って……クリスマスマーケットで購入してきたブランケットを膝に掛けてまだテレビを見ていた千代子はもう先にお風呂を勧められていた。上がってきてみればキッチンにあった洗い物の予洗いも済んでいてちゃんとシンクの隅に寄せられていたのでやる事は殆どなく。

 これからすることは分かっている。
 でも司は疲れて……いないらしい。そう言えば食事の時にそんな事を言っていた。

 頬に勝手に熱が集まる。
 いつ鍛えているのか、会社で気分転換に軽くトレーニングをしているのか……スーツの仕立ての良さも相まって見た目はすらりとしていても素肌の司は筋肉質で張りのある体をしている。
 そして、色の無い墨の濃淡のみで彫られているカラス彫りの入れ墨の存在。ごく少数の人物しか知らない司の秘密。

 それに触れられるのは、自分だけ。

 企業経営者、冷静沈着、完璧な人……それらを幾ら並べても、それは表向きの顔。千代子の知っている司は優しくて心配性だし、すぐに甘やかそうとしてくるし、ちょっと味付けの濃い物が好きで、目を離すとワーカーホリックになっちゃうし――本当は、とても情熱的な人。

「ちよちゃん、眠い?」

 ふ、と意識が戻る。

「そのまま寝たら風邪引いちゃうから」

 髪を乾かしただけのバスローブ姿で困ったように笑う司。
 千代子は司が風呂から上がるのを待っていたがつい、程よいお酒と風呂上りの温かさにうたた寝をしてしまい司は自分をベッドに、就寝の意味で寝かせようとしてくれたけれど――いつもだったら寝間着を着て出て来る人がバスローブ姿で出て来る意味を千代子も勿論知っているから、合理的な人はどうせ脱いじゃうならこのままでいいんじゃないかと思っていただろうから。

 千代子は屈みこんでいた司の唇に自分の唇を寄せる。
 短く呻いた人をそのままソファーに膝をつかせて。

「ちよ、ちゃん」

 驚いている司に視線をずらした千代子。自分でキスをしておきながら恥ずかしくて視線が泳いでしまっている。

「そう言うのは私に任せて」

 ぐ、と深く沈みこんだソファーと改めて……深く、交わってしまう。
 呼吸を許してくれないような深いキスにギブアップする千代子の手すらきつく掴んで、離してくれない。

「んん……っ」

 身を捩って訴えた所でやっと離してくれたと思えば「リビングじゃ体冷えちゃうから、ね」と司の寝室に“連れ込まれて”しまう。お風呂の前にどうやらしっかり室温を上げていたらしい抜かりの無い男は愛している初恋の女性の体を丁寧に丁寧に扱い始める。

 それはされている方の千代子が恥ずかしくて枕を抱きかかえてしまう程だった。
 ただその枕は勿論、司が普段使っているもの。

「枕に嫉妬をする日が来るとは」

 まだ完全には素肌ではなかった千代子。
 今夜、彼女が身に着けていた下着は司も初めて見る物だったと言うか普段の千代子は洋服に響かないようにシームレスでシンプルな物が多く、夜も同じようにごくシンプルな物が多かったが……いつもの寝間着を捲ってみれば、だった。

 品の良いレース地、淡く肌に馴染む少しピンク寄りのヌーディーカラーが千代子の体の美しさを引き立てていた。
 すぐに脱がしちゃうのはもったいないな、と司も思ってしまっての行動は千代子に枕を抱き締められる結果となってしまっていた。

 じわ、と滲んでしまう程の愛情、こんな事ならまだ全部脱いじゃっていた方が恥ずかしくないかも、と気づく頃にはもう遅く。ショーツの上からなぞられる羞恥に小さく喘ぐばかり。

 自分の指先だけで濡れ乱れてゆく様子は美しい。
 彼女が魅せる大人の女性の片鱗――眉根を寄せた艶のある眼差し、快楽に漏らす吐息、その薄く開いた唇。喘ぐ声はか細くとも、体をよく見ていれば千代子が感じてくれている事など明らかだった。

「綺麗だな……」

 無意識に呟いた言葉に司もはっとして手を止める。
 涙目になっている千代子もその瞳を丸くさせて司を見上げ、抱き締めていた枕を隣に置いてしまう。そしてまだバスローブを羽織っていた司の体を引き寄せ、自分はどうやって溢れそうになる思いを表現したら良いのか分からないから、とぎゅっとすることで愛情を伝える。

 千代子の胸に抱かれる心地よさ。
 柔らかくて、温かくて、感情を伝えようとしてくれているその気持ちはちゃんと司の心に届いていた。

「ちよちゃん」
「……はい」

 そろそろ脱ごうか、と耳元で……絶対にわざと言った司に頬を真っ赤にさせた千代子。
 爽やかに、きっぱりと、まだ浮かせてもいない背に思い切り手を差し込まれてあっという間にホックを外され肩紐も抜かれて視界から消えて行く自分のブラジャー。ショーツも引きずり下ろされて無くなってしまう。

 待って、の言葉を全然聞いてくれない。

 それどころか司も羽織っていたローブの紐の結びを解いて本格的に千代子と素肌を重ねようとする。
 そして素肌と素肌が擦れ合い、千代子の閉じられている太ももを優しく撫でたりしている内に差し込まれるのは司の大きな手の指先。
 丁寧に、傷つけたりなどしないようにゆるく、それでも時々大胆に、甘い快楽に浅い呼吸を繰り返す愛しい人の胸や唇を啄ばみながら少し深い所まで丹念にほぐす。

 熱くて、とろけてきている千代子の意識と同様に司の差し込まれた指先もとろとろと溢れ出てくる蜜に濡れる。

「ちよちゃん。私のお願い、聞いて貰っても良い?」
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