【姫初め♡2025】『虎治と千鶴 ―― 硬派なヤクザと初心なお嬢』

緑野かえる

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9 しょっぺえ男のとらじ ※

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 最初のうちは痛がった様子もあったが、つらくなるほど我慢をしているようには見受けられねえ。

「ん、ふ……んぅ、んん」

 タオルみてえな寝巻きを抱えている千鶴さんは必然的に胸を寄せ、持ち上げてしまっていることに気がついているんだろうか。俺の目下には見るからにやわらけえのが、ああ……こんなに先を腫らしちまって。

「ひっ」

 あくまでも傷つけない程度に指先で胸の先をつねってみれば浮き、立っていた膝が跳ねた。

「あ、あ」

 涙目になりながらも小さく喘ぐ姿が可愛いと思っちまう。いや、千鶴さんは普段から可愛いんだよ。

「ふ、う……っ、とら、とらは、大丈夫?」
「ええ」
「んく、ぅ……っ」
「ゆっくり、しますから」

 うんうんと頷いている千鶴さんの乱れた髪を整うように撫で付けてやればサラサラで、なんとも手触りが良い。
 髪を撫でた手で、頬に触れる。
 指の背で撫でれば千鶴さんは俺に視線を向けて……それで。

 しっとりとした手が、俺の手を覆うように握って……そのまま、気持ち良さそうに頬擦りをしてくれた。

「千鶴さん……」
「とら、きもちいいね……ふふ、これが男性の……はいっちゃうと、なんか、不思議な感じ」
「苦しいとか、どこか加減が悪いとかは」
「んーん……ない、よ……んんっ」

 意識したら、感じたのだろう。

「とらぁ」

 千鶴さんの甘えた声は、二人で食ったクリスマスケーキよりも甘かった。触れた頬も、胸も、腹も、やわらけえ。掴んだ腰の骨なんて、でけえ筈の骨盤なのに、俺にとっちゃ華奢で。
 正常位で、少し揺さぶらせて貰えば千鶴さんは確かに感じてくれていた。

「と、ら……ぎゅって、できる?」
「ええ、出来ますよ」
「ん……っ、ん、ぅ……んぐ、ッ」

 千鶴さんの全てをかっさらうように抱いて、口付けを。

「ん、っく、んっ……」

 くぐもる喘ぎを俺が飲ませて貰う。
 もがくほど苦しませたくはねえからほどほどにしたつもりだったが、何度もぎちぎちに搾り上げようとする強い収縮に我慢がならねえ。

「千鶴さ、ん……そのまま俺の腕、掴んで」

 ぐ、と堪えてもそれは無駄で。

「ああ……くそ、もう少、し」

 あなたを感じていたい、と思った。

「ひ、あ、っあ、んぅっ……ん、い、く……いっちゃ、う……とら、だめ、わたし……ッ」
「ちづ、る……ッ、あ゛、あ」

 喉から声が出る。
 それと同時に初めてだと言う千鶴さんに腰を振って、ああ……これが俺なんだ。硬派を気取っちゃいるが俺は、あなたが俺に感じていることがこんなにも……いだいていたもやがそのまま込み上げてきて、ついには勢い良く噴き出した。

「と、ら……ひッ、ぅ」
「いま、抜きますか、ら……」

 気がつきゃ、ぐちゃぐちゃ。
 千鶴さんの髪は乱れ、胸元に抱いていた筈の寝巻きは無く、荒い呼吸に上下する素肌の胸がある。

 ◆ ◇ ◆

 クリスマスの夜に同衾だなんてよ……それに俺は千鶴さんの経験のひとつを貰っちまった。

「とら、コーヒーで良い?」
「俺がやりますから千鶴さんはまだ横に」
「だって、なんか……そわそわしちゃって」

 そんな翌朝。ヒリヒリの間違いじゃねえのか、なんてことは言わねえがいくらなんでも早起きだ。いや待て、今日の千鶴さんは仕事……あれか、リモートワークってやつか。それにしたってよ……俺も尻を据えてられねえ。

「ねえとら、寒くない?肌着だけで大丈夫?」
「鍛えてますからね」
「それは、すごく知ってるけど……角煮の入った肉まんあっためて食べよ」

 おなか空いちゃった。
 千鶴さんのその素直な言葉に吹き出しそうになって口をつぐむ。

「それとね、虎治」
「はい」
「お父さんにいつ言う?」
「ぐッ……」
「流石の虎治もそうなっちゃうよね」

 親父、会長の娘を抱いちまった事実。俺と千鶴さんはその……恋仲で、挙げ句にゃ大切な貞操を暴いちまった。

「あああ……」
「もう少し、黙ってよっか。やきもきしてるお父さん見てるのもなんか面白そうだし」
「は……」

 インスタントコーヒーを用意している千鶴さんを手伝う為にキッチンに立てばとんでもねえ事を仰る。愛し、抱いたのは事実だが、それを親父に黙っているってのは……鷹宮の一人娘を、俺が抱い……。

「っふふ。焦ってる虎治はじめて見る」
「いや、そりゃあ」
「この事はゆっくり、ね?虎治は私にちゃんと筋を通してくれた。だから、大丈夫」

 俺を軽く見やる起き抜けの千鶴さんは当たり前だが素っぴんで……だが、大人の女性の眼差しがあった。

「……分かりました」
「あと、二人だけのときはあんまり堅苦しい敬語は無しね」
「それは……善処、いや……分かりました」
「んふふ~」

 満足そうにしている千鶴さんは上機嫌に肉まんを温める用意を始める。
 レンジで温めただけのそいつは昨夜の素肌の千鶴さんの胸のようにふかふかで、温かで。テーブルに移動をして座り、頬張れば同じように千鶴さんも美味しそうに食べていた。

「虎治のひと口おっきいね」

 そんな口で昨夜は……って俺はまったく。どんだけ気分が良かったんだか。
 あなたの前ではしょうもねえ男になっちまう。

「そう言えば千鶴さん、おかみさんの正月の準備に人は足りてますか」
「うーん、どうだろ。去年って虎治も大掃除とか手伝いに行ったっけ」
「ええ、親父から言われて……部屋付きの若い衆には力仕事をさせといて俺はおかみさんと正月の来客用の菓子を買い足しに出たりと細々した事を。ご実家での事となるとあまり外部の者はおかみさんも入れたくないでしょうし」
「虎治ならお母さんも大歓迎だから聞いておくね」

 千鶴さんも食が進むのかその可愛らしい顔の半分を覆えてしまう大きな角煮の入った肉まんを食べながら朝のニュースを流し見る。
 二人で小せえテーブルを挟んでの朝メシ……惰性で食ったり食わなかったりの最近だったがうめえな、と思ったのはいつぶりだろうか。

「……俺たちもどこか、買い出しに行きますか」
「行く!!絶対行く!!」
「予定では今年の納めは明日の二十七日でしたね」
「そう、最後の日はもう午後からは掃除だけみたいな感じだから早く上がるかも。今日も忙しいわけじゃないから」
「じゃあ明日、上がった足でデパートにでも行きましょうか」
「人が凄そうだけど、それもまた」
「年の瀬って感じでオツなモンだと思いますよ」

 俺の提案を即座に受け入れてくれた千鶴さんが嬉しそうにしてくれている。そして基本的に普段の俺は二十四時間、千鶴さん専属。だから朝メシの後、仕事の支度を始める千鶴さんを眺めながら昨晩の食器やグラスを洗うのも俺の仕事っちゃあ仕事だが……ああ、駄目だ。

 煩悩、甚だしい。
 昨晩の千鶴さんを思い出しちまう。
 だが……これは『嬉しい』の気分だ。




 ・・・・・・

 虎治の年齢っていくつなんでしょう。
 このまま新年恒例の姫初めネタへと物語は続きます。
 (投稿は大晦日あたりになります)

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