星のプランツガーデン

森野ゆら

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6章

こわれた通信機

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 七夕会が終わった翌日は、なんだか静かに感じる。
 きのうの今頃は、七夕会でにぎやかだったのに。
 いつもの昼休みがなんとなく物足りなく感じるのは、私だけだろうか?
 職員室にいる先生にプリントを提出して、外廊下を歩いて教室へ向かう。
 暑い。
 七月という季節は、なかなか体力を消耗する。
 猛暑という言葉もあるらしいし、この国の「夏」はなかなか厳しい季節だな。

 ブルルッ

 スカートのポケットの中で、通信機がふるえた。
 リーダーからだ。
 だけど、向かいの校舎の方から数人の声が近づいてくる。
 ここで、通話はまずいな。
 あわてて周りを見まわし、中庭を通って畑の方へと出た。
 上靴のまま来てしまったが、やむを得ない。

「こちら、リィ」

 応答したが、すぐにブチッと切れた。
 もう一度、リーダーにつなげたが、すぐに通話が切れる。
 なんだ? 誤作動か? 壊れかけてるのか?
 仕方なくあきらめて、通信機をポケットに入れ、教室へ向かった。
 しかし、私のこの行動が後にややこしいことを招くなんて、この時は少しも思わなかった。
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