星のプランツガーデン

森野ゆら

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5章

児童会からの呼び出し

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 ぴんぽんぱんぽーん♪

「園芸クラブのみなさん、至急、児童会室に集まってください。繰り返します。園芸クラブのみなさん……」

 放課後の園芸クラブの部屋に、放送が鳴り響いた。
 すばるがびくうっと肩をふるわせ、読んでいた園芸書をバサリと落とした。

「な、なんだろう? 呼び出しとか……」

 すばるがおどおどしながら、私と風斗の顔を見る。

「もしかして、お昼の放送の内容がちょっと……とか?」

 風斗の言葉に、すばるの顔がみるみる青くなっていく。

「そ、それだ! きっとそうだ……ぼくが放送禁止用語を連発したから……園芸クラブの廃止の通告かもしれない」

 ……うーん。よく知らないが、児童会ってクラブを廃止する権限も持ってるのか?

「……とりあえず行ってみよう、すばる」

 私にこくんとうなずいたすばるは、顔面蒼白で立ち上がった。
 足取り重く児童会室まで行き、ブルブル震えるすばるのかわりに風斗がトントンとノックをした。

「失礼します」

 頭を下げて中に入ると、長机を囲んで二人の生徒が座っていた。
 髪を二つに結んだ女子と、前髪をびよんと横に流したヘアスタイルの男子。
 男子が前髪をとかしながら、立ちあがった。

「園芸クラブのみなさんだね。なかなか早かったね。水沢さん、タイムは?」

 男子が言うと、水沢さんと呼ばれた女子が手に持っているタイマーをかかげた。

「二分五十秒です」

「惜しいね。サッカークラブに十五秒及ばなかった」

「えーと、何のタイムですか?」

 すばるがビクビクしながらきくと、男子がふふっと笑った。

「放送してからこの児童会室に来るまでのタイムだよ。毎回計測して、各クラブの記録をとっているんだ」

「はぁ……」

 すばるが困ったように首を傾ける。
 なんだ、この男子。もしかして、こいつが児童会長?
 じっと見ると、目が合った。

「君、確か転校してきた三組の空山さんだよね? ぼくが児童会長です。よろしくね」

 流れる前髪をふぁさっとかきあげて、ウィンクをしてきた。

「……よろしく」

 答えたが、なんだろう。背すじが寒いのだが……
 ぶるっと身を縮こませていると、すばるが私と児童会長の間に入ってきた。

「あ、あの……児童会長! ぼく、校内の花壇の水やりも頑張ってます。南校舎前の畑もちゃんと管理してますっ。だから、クラブの廃止だけは……かんべんしてください!」

「廃止? なんのこと?」

 児童会長は首をかしげた。

「クラブ廃止の話じゃ……?」

 おそるおそるきいたすばるも首をかしげる。

「ちがうよ。ここへ来てもらったのは、お願いしたいことがあるからなんだ」

「お願い?」

 すばるがきくと、児童会長はうなずいた。

「実は、七月にある七夕会のために、文化クラブにちょっとした店を出してもらうようにお願いしてたんだ。すべての文化クラブに依頼してたと思ってたんだが……今日の昼休みの園芸クラブの放送を聞いてね……」

 ビクッとすばるが肩をふるわせた。

「あ、あの放送は……そのっ……」

 言い訳をしようと、すばるが口をパクパク動かす。

「そう言えば、園芸クラブもあったな、と思い出したんだ」

 児童会長が遠い目をする。
 要は……園芸クラブの存在を忘れていたのか。

「土にもこだわりを持ってるって聞いて感動したよ。ぜひ、七夕会で店を出してみんなを楽しませてもらいたい」

「店……ですか」

 すばるが腕組みをして、難しい顔をした。

「品物はなんでもいいんだよ。例えば、家庭科クラブは手作りの布小物を出したり、歴史クラブは年号のカードを出すと言っていた」

 児童会長が言うと、水沢さんが一枚の色画用紙を出してきた。

「このように、三枚つづりのチケットを全校生に配るんです。一枚のチケットと一商品で交換となります」

「ちゃんと、材料費や七夕会用のクラブ費も出るよ。みんなにクラブの良さを知ってもらえる、いい機会になると思うけど、どうかな?」

 児童会長がふっと笑みを浮かべ、私たちを見まわす。

「クラブの良さを……みんなに知ってもらう……」

 つぶやいたすばるは、顔をぱあっと輝かせた。

「やります! 七夕会、園芸クラブも出店させてください!」
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