星のプランツガーデン

森野ゆら

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3章

潜入! 教授の部屋

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「ここだな……」

 茶色のドアの前で私はふうっと息をはく。
 ドアノブに手をかけて、静かにまわす。
 鍵はかかってない。
 音を立てないように気をつけながら、いざ、中へ。
 大きな窓があるおかげで、部屋の中は明るい。
 壁にはぐるりと本棚が並んであって、数えきれないくらいの本が入ってる。
 整然と片付けられていて、乱れたところが一つもない。
 窓際に置かれたデスクと黒い革のイス。
 落ち着いた雰囲気から、薫教授の部屋でまちがいないだろう。

「さてと」

 部屋中をぐるっと見まわし、まずはデスクに目をつけた。
 魚をくわえた木彫りのクマが飾ってある。すばるも薫教授もクマが好きなのか?
 やっぱり、大事なものをしまうとなったら、引き出しだよな。
 デスクの引き出しに手をかける。
 ドキドキしながら一段目を開けたが、空っぽ。続いて二段目も空っぽ。
 三段目を開けて……ハッとした。
 赤い箱が入ってる。ちょうど隕石のかけらが入ってるような大きさだ。
 ゴクリと喉を鳴らし、赤い箱を手に取った。
 ふふっ……ついに隕石のかけらをゲットだ。
 リーダーに渡して、任務完了。これで地球からクロリバ星に帰れる!
 高笑いしたい気持ちを押さえて、パカッとふたを取った瞬間、

 びよよーん!

 何かが飛び出してきた!
 緑の小さな生き物が宙に舞う。
 こ、これは確か……カエルという生物。
 床に落ちたカエルは、ピクリとも動かない。

「……おもちゃか」

 つまみあげて箱に入れ、さっさと元へ戻す。
 すばる用に作っていたびっくり箱だろうか。まぎらわしい。
 机の引き出しにはないってことは……
 むむっ?
 壁にかかったカレンダーが不自然に斜めになっている。
 ……あやしい。
 カレンダーを取ってみると、小さな紙袋が貼りつけてあった。

「ふふっ……甘いな、薫教授」

 これで隠したつもりか?
 カレンダーの向きをちゃんと直してないのは、甘すぎる。
 紙袋を壁からぺりっと取って、開けてみた。

「こ、これは……」

 ピンク色の紙に包まれた丸いキャンディー。
 なんでこんな所に……ややこしい。
 薫教授、すばるに食べられたくなくて、隠してたのか?
 ぽいっとキャンディーを元に戻し、部屋をぐるりと見渡す。
 あと、怪しいのは本棚くらいか……
 しかし、大量の本を一冊ずつ抜き取って、チェックするわけにもいかない。
 どうしたものか。
 うーんと考えてると、本棚の一番下、図鑑が二冊ほど不自然に前へ出ているのに気づいた。
 すぐさま本棚にかけより、しゃがみこむ。

「よいしょっと」

 図鑑を出すと、本棚の奥に封筒があった。
 ……なんだか、あからさまな気もするが……一応開けてみるか。
 封を開けると、一枚のカードが出てきた。
 べーっと舌を出した、クマのイラストのポストカード。

「ぐぬぬぬっ、なんだこれ!」

 封筒を奥へ押し込み、図鑑を元のように戻す。
 もうっ。一体どこにあるんだ? 隕石のかけらは!
 それから、いら立ちながら探すこと、二十分ほど。
 床に隠し地下への穴がないか調べたり、机の裏を調べたり、じゅうたんをひっくり返したり……
 部屋中をくまなく探したけど、結局、隕石のかけらは見つからなかった。

「一体、どこに置いてるんだ……」

 ……疲れた。
 時間がかかりすぎだ。すばるの部屋に戻ろう。
 やむを得ず部屋に戻ると、二人がいぶかしげにじーっと見つめてきた。

「里依ちゃん……大丈夫?」

 心配そうに言うすばるに、私は首をかしげる。
 何が大丈夫なんだ?

「……トイレ長かったね」

 ボソリと風斗に言われて、ハッとした。
 そ、そうか。私はトイレに行くと言って、この部屋を出て行ったんだった。

「だ、大丈夫、大丈夫!」

 かーっと熱くなってくる顔をパタパタあおぎながら、イスに座った。
 まったくもう。隕石のかけらは、どこにあるんだろうか。
 ため息をつきながら、冷めた紅茶を口に含んだ。

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