14 / 41
3章
すばるの家
しおりを挟む
「うわぁ、立派なお家だね!」
すばると風斗に、駅まで迎えに来てもらった土曜日の午後。
駅から歩いてやってきたのは、静かな住宅街の中でもひときわ大きな家。
オレンジの屋根に淡い黄色の外壁で、なかなかセンスが良い建物だ。
飾りが施された白い門を開けながら、すばるが苦笑いした。
「立派……かなぁ? さ、どうぞ」
石畳を通って奥へ行くと、玄関まわりは花が植えられた鉢でいっぱいだ。
整然と片付けられた玄関を入り、すばるについて階段をのぼった。
二階は部屋がたくさんある。
茶色の立派なドアに、近代的なデザインのドア、格子がついた和風なドアまで。
部屋がいっぱいだな。
すばるは父親の薫教授と二人暮らしのはずだが、それにしては広い家だな。
「はーい、ここがぼくの部屋でーす」
すばるが明るい声で言って、一番奥の部屋のドアを開けた。
すばるに続いて、風斗が慣れたように入っていく。
窓際に勉強机があって、本棚には園芸に関する本が並んでいる。
部屋の隅には、大きな車の模型が飾られていて、青いキャップ帽をかぶったクマのぬいぐるみが運転席にのっている。
あれ?
クマのぬいぐるみを見て、なんだか見覚えがあるような感覚がした。
こんなクマのぬいぐるみは知らないはずだが……なぜだ?
うーん。まぁ、いいか。何かとカンちがいしてるのかもしれない。
考えるのは早々にあきらめて、ぐるっと見まわす。
それにしても広い部屋だな。私が今住んでいるマンションの部屋の三倍はありそうだ。
「お茶いれてくるから、くつろいでてね」
すばるがいそいそと部屋を出ていった。
風斗は本棚から「プランターで楽しむ野菜がおもしろすぎる!」という本を出してきて、ソファに座った。
「座れば?」
風斗が本を開きながら、ぽそりと言ってきた。
「……うん」
近くにあった背もたれのないイスを引き寄せて、座る。
すばるの部屋か。
あらためて見まわすと、何だか不思議な感じだ。
青が好きなのか、カーテンもベッドのシーツも、イスの背もたれまで、青でそろえてある。
園芸の本の横には、バトルマンガのシリーズが並んでるし、天文の本もたくさんある。
本棚と勉強机の間には、天体望遠鏡が置いてある。
園芸が好きなのは当然知ってるが、宇宙にも興味があるのか。
そう言えば、薫教授の専門は天文分野だったか……
すばるは毎日、ここで寝て、起きて、生活してるんだな。
学校でのすばるしか知らないから、いつもとちがうすばるを知ったような感じがする。
……そうか。これがプライベートってやつか。
クラスのすばるファン、特に茶谷モエたちは、ここに来たくてしょうがないんだろうな。
ふふ。ちょっと自慢したい気になってくる。
って、いやいや。何を考えている、リィ!
ここへ来たのは、隕石のかけらを入手するためだ。
こんなチャンスはめったにない。
隕石のかけらを手に入れるため、任務に集中しないと!
ガシガシッと頭をかいていると、視線を感じた。
長い前髪の下の瞳がこちらを見てる……感じがする。
風斗はクスッと笑って、本に目を落とした。
……なんだ?
前から思っていたが……黒地風斗。やはり、妙なヤツだ。
口数は少ないし、声が小さすぎて何言ってるのか分からないし、妙に大人びていて本当に同じ学年かと疑わしい。
しかし、すばると仲がいいのは確かだ。
クラスがちがうのに、休み時間に廊下に出て話してる姿をよく見る。
園芸クラブの仕事はきちんとこなしているし、悪いヤツではなさそうだが。
本を読んでいる風斗をじっと見つめた時、ドアが開いた。
すばると風斗に、駅まで迎えに来てもらった土曜日の午後。
駅から歩いてやってきたのは、静かな住宅街の中でもひときわ大きな家。
オレンジの屋根に淡い黄色の外壁で、なかなかセンスが良い建物だ。
飾りが施された白い門を開けながら、すばるが苦笑いした。
「立派……かなぁ? さ、どうぞ」
石畳を通って奥へ行くと、玄関まわりは花が植えられた鉢でいっぱいだ。
整然と片付けられた玄関を入り、すばるについて階段をのぼった。
二階は部屋がたくさんある。
茶色の立派なドアに、近代的なデザインのドア、格子がついた和風なドアまで。
部屋がいっぱいだな。
すばるは父親の薫教授と二人暮らしのはずだが、それにしては広い家だな。
「はーい、ここがぼくの部屋でーす」
すばるが明るい声で言って、一番奥の部屋のドアを開けた。
すばるに続いて、風斗が慣れたように入っていく。
窓際に勉強机があって、本棚には園芸に関する本が並んでいる。
部屋の隅には、大きな車の模型が飾られていて、青いキャップ帽をかぶったクマのぬいぐるみが運転席にのっている。
あれ?
クマのぬいぐるみを見て、なんだか見覚えがあるような感覚がした。
こんなクマのぬいぐるみは知らないはずだが……なぜだ?
うーん。まぁ、いいか。何かとカンちがいしてるのかもしれない。
考えるのは早々にあきらめて、ぐるっと見まわす。
それにしても広い部屋だな。私が今住んでいるマンションの部屋の三倍はありそうだ。
「お茶いれてくるから、くつろいでてね」
すばるがいそいそと部屋を出ていった。
風斗は本棚から「プランターで楽しむ野菜がおもしろすぎる!」という本を出してきて、ソファに座った。
「座れば?」
風斗が本を開きながら、ぽそりと言ってきた。
「……うん」
近くにあった背もたれのないイスを引き寄せて、座る。
すばるの部屋か。
あらためて見まわすと、何だか不思議な感じだ。
青が好きなのか、カーテンもベッドのシーツも、イスの背もたれまで、青でそろえてある。
園芸の本の横には、バトルマンガのシリーズが並んでるし、天文の本もたくさんある。
本棚と勉強机の間には、天体望遠鏡が置いてある。
園芸が好きなのは当然知ってるが、宇宙にも興味があるのか。
そう言えば、薫教授の専門は天文分野だったか……
すばるは毎日、ここで寝て、起きて、生活してるんだな。
学校でのすばるしか知らないから、いつもとちがうすばるを知ったような感じがする。
……そうか。これがプライベートってやつか。
クラスのすばるファン、特に茶谷モエたちは、ここに来たくてしょうがないんだろうな。
ふふ。ちょっと自慢したい気になってくる。
って、いやいや。何を考えている、リィ!
ここへ来たのは、隕石のかけらを入手するためだ。
こんなチャンスはめったにない。
隕石のかけらを手に入れるため、任務に集中しないと!
ガシガシッと頭をかいていると、視線を感じた。
長い前髪の下の瞳がこちらを見てる……感じがする。
風斗はクスッと笑って、本に目を落とした。
……なんだ?
前から思っていたが……黒地風斗。やはり、妙なヤツだ。
口数は少ないし、声が小さすぎて何言ってるのか分からないし、妙に大人びていて本当に同じ学年かと疑わしい。
しかし、すばると仲がいいのは確かだ。
クラスがちがうのに、休み時間に廊下に出て話してる姿をよく見る。
園芸クラブの仕事はきちんとこなしているし、悪いヤツではなさそうだが。
本を読んでいる風斗をじっと見つめた時、ドアが開いた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる