星のプランツガーデン

森野ゆら

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1章

もう一人の園芸部員

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 髪は赤茶色。長い前髪に目が隠れている。
 筋が通った高い鼻に整った口元だけ見ると、俳優のような顔立ちだ。
 クラスの地球人男子とはちょっと雰囲気がちがって、少し大人びている。
 じーっと見てると、男子もちらりと私を見て、足を止めた。

「今日転校してきた空山里依ちゃんだよ。園芸クラブを見たいって言ってくれて、連れてきたんだ」

 すばるが説明すると、男子は私をまじまじと見てきた。

「里依ちゃん、こっちは六年二組の黒地風斗くろじふうと。もう一人の園芸部員なんだ」

 すばるに紹介されると、黒地風斗は少しだけ頭を下げた。

「空山里依です……よろしく」

 警戒しながら言うと、風斗は意味ありげに口元をニッとつりあげた。
 変なヤツだな。園芸クラブの一員ってことは、コイツも要警戒だ。

「立ち話もなんだし、座ろうよ」

 ニコニコして、すばるがイスを出してきた。
 私がイスに座ると、長机を挟んですばると風斗が向かい側に座った。

「実は風斗も四月に転校してきたんだよ。ここに来るまでは、お父さんの仕事で外国にいたんだよね?」

 すばるが言うと、風斗が小さくうなずいた。
 外国か。なるほど。だからちょっと雰囲気がちがうのか。

「……風斗も一か月したらすぐ慣れたから、里依ちゃんも大丈夫だよ。不安だと思うけど……きっと大丈夫!」

「あ、うん」

 すばるは私に対して何かを心配している感じだ。よく分からんが。

「里依ちゃん。何か心配なことある? ぼくでよかったら相談にのるよ?」

 すばるが真剣な顔できいてきた。
 心配なこと……か。

「……給食かな?」

 答えると、すばるが「えっ」と目を大きくした。
 給食。この学園生活で、やっかいだなと思っていることナンバーワンだ。
 野菜……そんな危険な植物を食べるなんて、地球人はどうかしている。

「そう言えば、風斗もはじめ『給食の野菜が全然食べられない』って困ってたよね」

「……でも、今は大丈夫」

 風斗が蚊の鳴くような声でボソボソと答える。
 そりゃ、地球人は食べられるかもしれないが、私はあんなもの、とうてい食べられる気はしない。
 冷めた気持ちで考えていると、すばるが真っすぐな瞳を向けてきた。

「里依ちゃん、困ったことがあったら何でも言って。ぼくがいつでも助けるから」

「う、うん。ありがとう……」

 お礼を言ったものの、心の中で首をかしげる。
 すばるが私を助ける? そんなことは無用だ。
 私は任務のためにすばるに近づいているんだ。助けてもらうことなんて、何もない。
 そう。任務……気を抜いてはいけないぞ、リィ。
 そう言えば、あの奥にあるドアを確認しておかなければ。
 隠し部屋でもあるんだろうか? もしかして、巨大植物の研究室があるのか?
 きいてみる方が早いか。

「ところですばる、あのドアってなぁに?」
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