4 / 41
1章
園芸クラブ……だと?
しおりを挟む
陽気な放送が流れる中、給食当番という役員たちがお皿を片づけたり、配ぜん机を拭いたりしている。
食事をした後に働く者たち。
教室を飛び出して「ひゃっほーい」と奇声を上げながら、教室を飛び出していく者たち。
席で読書をする者、おしゃべりに興じる者たち……
昼休みというのは、それぞれ過ごし方は自由らしい。
ほおづえをつきながら、教室内を観察していると、
「里依ちゃん、大丈夫? 具合悪い?」
給食当番のお役御免となったすばるが声をかけてきた。
具合が悪い? すこぶる元気なのに。
すばるの的外れな質問に、私はにっこり笑顔を作った。
「平気だよ♡ どうして?」
「給食、ほとんど食べてなかったから……」
眉を下げ、心配そうな顔で見つめてくる。
当たり前だ。クロリバ星人は乾燥したものしか食べない。
ましてや植物なんて危険なもの、絶対に食べない。
なのに、今日の給食はなんだ!
スープや牛乳といったベチャベチャしたもの、ほうれん草のおひたしとかいう危険なもの……唯一、何とか口にできたのは、イワシのうま煮という魚料理だけ。
まったく。
これから給食の時間というのが、かなりしんどい時間になりそうだ。
野菜も食べろと言わんばかりに、先生もにらみをきかせてくるし。
うつむいてブツブツ言ってると、すばるがハアッと息を吐いた。
「里依ちゃん、やっぱり転校初日で緊張してるんだね」
「ううん。大丈夫……なんとかやり過ごすから……すこしばかりのツライこと(野菜)なんて平気……」
「り、里依ちゃん……」
すばるがくちびるを引き結んで、こぶしにぎゅっと力を入れた。
なぜか涙目になっている。ゴミでも入ったんだろうか。
そうだ。明日から予備の食料をこっそり持ってきておこう。
でないと、お腹がすいて帰りまでもたない。
決心していると、すばるが教室の時計をちらっと見上げた。
「あっ……ぼく、クラブの方に行かなきゃ」
「クラブ?」
なんだ? それは。
じっと見つめると、すばるがきれいな黒の瞳を細めた。
「ぼく園芸クラブに入ってて……今からもう一人の部員とこれからの活動について話をするんだ」
「園芸……クラブ?」
顔をゆがめると、すばるが意外そうな顔をした。
「うん。前の学校にはなかった?」
「う、うん。なかったなぁ。なにするクラブなの?」
「花壇や畑の手入れをして、花や野菜……植物を育てるクラブだよ」
……植物を育てるクラブ。
なっ、なんて危険なクラブなんだ。これは調査しておかなければ!
もしかしたら、星を滅ぼすための巨大植物を育成している組織かもしれない。
ザワザワする胸を押さえながら、すうっと息をすいこみ、鼻の奥に力をかけた。
「へぇ……興味あるなぁ。 園芸クラブ見てみたい!」
「えっ! ほんと? じゃあ、今から一緒に来る? 園芸クラブの部室に!」
すばるの顔がぱあっと輝く。
「うん。行く行く! すばるのクラブ、見に行きたい!!」
「案内するよ、里依ちゃん!」
うれしそうなすばるの後について、教室を出る。
よし。うまくいった。
まずは危険な組織、「園芸クラブ」に潜入だ!
食事をした後に働く者たち。
教室を飛び出して「ひゃっほーい」と奇声を上げながら、教室を飛び出していく者たち。
席で読書をする者、おしゃべりに興じる者たち……
昼休みというのは、それぞれ過ごし方は自由らしい。
ほおづえをつきながら、教室内を観察していると、
「里依ちゃん、大丈夫? 具合悪い?」
給食当番のお役御免となったすばるが声をかけてきた。
具合が悪い? すこぶる元気なのに。
すばるの的外れな質問に、私はにっこり笑顔を作った。
「平気だよ♡ どうして?」
「給食、ほとんど食べてなかったから……」
眉を下げ、心配そうな顔で見つめてくる。
当たり前だ。クロリバ星人は乾燥したものしか食べない。
ましてや植物なんて危険なもの、絶対に食べない。
なのに、今日の給食はなんだ!
スープや牛乳といったベチャベチャしたもの、ほうれん草のおひたしとかいう危険なもの……唯一、何とか口にできたのは、イワシのうま煮という魚料理だけ。
まったく。
これから給食の時間というのが、かなりしんどい時間になりそうだ。
野菜も食べろと言わんばかりに、先生もにらみをきかせてくるし。
うつむいてブツブツ言ってると、すばるがハアッと息を吐いた。
「里依ちゃん、やっぱり転校初日で緊張してるんだね」
「ううん。大丈夫……なんとかやり過ごすから……すこしばかりのツライこと(野菜)なんて平気……」
「り、里依ちゃん……」
すばるがくちびるを引き結んで、こぶしにぎゅっと力を入れた。
なぜか涙目になっている。ゴミでも入ったんだろうか。
そうだ。明日から予備の食料をこっそり持ってきておこう。
でないと、お腹がすいて帰りまでもたない。
決心していると、すばるが教室の時計をちらっと見上げた。
「あっ……ぼく、クラブの方に行かなきゃ」
「クラブ?」
なんだ? それは。
じっと見つめると、すばるがきれいな黒の瞳を細めた。
「ぼく園芸クラブに入ってて……今からもう一人の部員とこれからの活動について話をするんだ」
「園芸……クラブ?」
顔をゆがめると、すばるが意外そうな顔をした。
「うん。前の学校にはなかった?」
「う、うん。なかったなぁ。なにするクラブなの?」
「花壇や畑の手入れをして、花や野菜……植物を育てるクラブだよ」
……植物を育てるクラブ。
なっ、なんて危険なクラブなんだ。これは調査しておかなければ!
もしかしたら、星を滅ぼすための巨大植物を育成している組織かもしれない。
ザワザワする胸を押さえながら、すうっと息をすいこみ、鼻の奥に力をかけた。
「へぇ……興味あるなぁ。 園芸クラブ見てみたい!」
「えっ! ほんと? じゃあ、今から一緒に来る? 園芸クラブの部室に!」
すばるの顔がぱあっと輝く。
「うん。行く行く! すばるのクラブ、見に行きたい!!」
「案内するよ、里依ちゃん!」
うれしそうなすばるの後について、教室を出る。
よし。うまくいった。
まずは危険な組織、「園芸クラブ」に潜入だ!
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
鎌倉西小学校ミステリー倶楽部
澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】
https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230
【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】
市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。
学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。
案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。
……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。
※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。
※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
空の話をしよう
源燕め
児童書・童話
「空の話をしよう」
そう言って、美しい白い羽を持つ羽人(はねひと)は、自分を助けた男の子に、空の話をした。
人は、空を飛ぶために、飛空艇を作り上げた。
生まれながらに羽を持つ羽人と人間の物語がはじまる。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
ベンとテラの大冒険
田尾風香
児童書・童話
むかしむかしあるところに、ベンという兄と、テラという妹がいました。ある日二人は、過去に失われた魔法の力を求めて、森の中に入ってしまいます。しかし、森の中で迷子になってしまい、テラが怪我をしてしまいました。そんな二人の前に現れたのは、緑色の体をした、不思議な女性。リンと名乗る精霊でした。全九話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる