魔法道具のお店屋さん

森野ゆら

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9章

魔法道具屋リアム

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「これは、売れないなぁ。父さんがおれたちのために残してくれたものだし」

「そうだね。はー、良かったよ。お兄ちゃんのことだから金貨にしよう! って言うかと思った」

「おいおい、なんだよそれ。おれを金の亡者みたいに」

 お兄ちゃんが頬をふくらませた時、カランカランと店の方でベルが鳴った。

「こんにちは~」

 野太い声。あ、この声は!
 お兄ちゃんと一緒に急いで店の方へ行くと、マギさんが立っていた。

「いらしゃいませ!」

「こんにちは、セアラちゃん。あのー、ハクトくん、この間もらった、たまご型ペンダントなんだけどねぇ」

「何か不具合でもありました?」

 お兄ちゃんが不安げにきくと、マギさんがニヤリとして、親指を立てた。

「いや、最高だよ! 親戚からすごく評判良かったから、追加でお茶のみ友達の分もほしいんだよ。全部で百五十個!」

「百五十個!」

 お兄ちゃんが目をきらーんと輝かせた。
 この前、百個作ったのに、更に百五十個!!
 マギさん、どれだけお茶友達いるんだろ!

「できるかな? 来月末にお茶会をするんだけど、それまでに」

「大丈夫です! 任せてください」

 お兄ちゃんがドンと胸をたたいて声を弾ませた。

「じゃあ、頼むね。いつもありがとう」

「ありがとうございました~」

 マギさんが見えなくなるまで見送って、私たちは顔を見合わせた。

「セアラ、忙しくなるぞ」

「うん。また水晶キノコの涙がいるね。私、早速とってくるよ!」

「おお、頼む。こうしちゃいられねぇ。今から作らないと」

 お兄ちゃんが小躍りしながら、店の中へ入っていった。
 空を見上げたら、雲一つない透き通った青が続いてる。

 ねぇ、お父さん。
 魔法道具屋リアム、がんばってるよ。
 私たち、いつか、お父さんに負けないくらいすごい道具屋さんになるからね!


(おわり)
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