魔法道具のお店屋さん

森野ゆら

文字の大きさ
上 下
27 / 46
6章

魔術師はどこへ?

しおりを挟む
 はぁぁ。
 お昼が終わった後の食堂は、がらんとしていて、私のため息が良く響く。

「はー。見つからないなぁ」

「え? 何が?」

 となりに座ってるエリカちゃんが目をパチパチさせた。

「あ、いや、ごめん。ひとりごと」

 お兄ちゃんから、サラサの鏡を渡されてから、あっという間に日が過ぎていった。
 だけど、ちっとも怪しいヤツを見つけられていない。
 森や山、大通りの町や畑まで。
 学校が終わってから、いろんなところを探したけど、魔術師らしき人は見つからなかった。
 意を決して、あの洞穴にも行ってみたんだけど、何事もなかったようにきれいになってて、誰もいなかった。
 お兄ちゃんの具合は、相変わらずだ。
 ネツトレ草を飲んだ後は、起き上がれるみたいなんだけど、しばらくすると調子が悪くなるみたい。
 それに、腕の模様部分の痛みが少しずつ増してるみたいなんだ。
 ……ってことは、どこかで魔術師が炎をたいて、魔術を進めてる?
 とにかく、早く魔術師を見つけないと!
 あせる気持ちをおさえながら、どうしたらいいか考えてると、エリカちゃんがのぞきこんできた。

「ねぇねぇ、セアラ。最近流行ってるシールがあるの、知ってる?」

「……知らないなぁ」

「そのシールを友達同士とか好きな人同士でつけると、ずっと仲良くいられるんだって」

「へー……」

 シールかぁ。
 そんなものが流行ってるんだ。前に流行ったのは虹色のインクだったっけ。
 お兄ちゃんの道具も流行りを取り入れたら、売れるかなぁ。

「ねぇねぇ、セアラ、今度買ってくるからさ、一緒に貼らない?」

「……うん、いいよ……」

 適当に返事をすると、エリカちゃんは「やったー♪」ってニコニコしながら食堂を出て行った。
 あー。もう。私、そんなどころじゃないんだけどな。
 だって、お兄ちゃんの命がかかってるんだから。
 だけど……エリカちゃんに事情を話すワケにはいかない。
 お兄ちゃんファンのエリカちゃんなら、すごく心配しちゃうだろうし。
 それに、魔術師のことがウワサになったら、警戒されて余計に探しにくくなっちゃう。
 早く魔術師を探し出さないと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

エプロンパンダのおめがね屋

ヒノモト テルヲ
児童書・童話
目黒山の中ほどにできた「おめがね屋」というメガネ屋さんのお話。エプロン姿のパンダ店主と子供パンダのコパンの二人が、手作りでちょっと変わったメガネを売っています。店主がエプロンのポケットに手を入れてパンダネを作り、それをオーブンに入れて三分立てばお客様のご希望に合わせた、おめがねにかなったメガネの出来上がりです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...