魔法道具のお店屋さん

森野ゆら

文字の大きさ
上 下
24 / 46
5章

帰り道

しおりを挟む
「はぁ。こんなのもらってもなぁ……」

 山を下りながら、月明りにペンダントをかざしてみる。
 きれいな緑の石が丁寧に台座にはめこまれてる。

(本当に困った時、呼んで)

 ……って、どういうことなんだろう?
 このペンダントと関係あるの? 意味わかんない。
 ぽいっとショルダーバッグの奥の方へ押し込んで、木の枝を振り払う。
 山を下りきるまで、あともう少し。
 足にからみついてくるツタや伸びきった雑草をよけながらも、頭の中にミレイの言葉が響いてくる。

(何があっても君を守る)

 もし、エリカちゃんだったら、きっと浮かれちゃってる。
 どうして、私にそんなこと言うんだろう?
 そういうのって、普通、好きな人や大切な人に言う言葉じゃない?
 軽々しく口にするなんて、きっと、私をからかったんだ。
 そう思ったら、胸の奥がすうっと冷えてきて、足を止めた。
 サイテーだ。やっぱりキライ。
 とにかく、あんなヤツの言うことは忘れて、早く家に帰らないと。
 今だってお兄ちゃんは苦しんでるんだ。
 ……でも、ネツトレ草、持って帰ることができなかった。
 私、今日は一日何してたんだろ?
 ガックリした気持ちで山を下りてたら、ガサガサッと茂みが激しく動いた。
 な、なに? まさか先に下りてたキッシィが待ち伏せしてた?
 ドキドキしながら、身構えてると、

「くー……」

 茂みの中から顔を出したのは、たれ耳の白いケモノ。

「クウちゃん!! なんで、こんなところに?」

 ふーっと体中の力が一気に抜ける。
 クウちゃんはトコトコ歩いてきて、私の目の前に座った。
 よく見ると、首から下げてるカゴに草が入ってる。
 レースのような葉のかたち、先に赤い実が二つついてる、これは……

「ネツトレ草!」

 思わず叫ぶと、クウちゃんが頭を下に向けて、カゴを地面に落とした。

「もらっていいの?」

 きくと、クウちゃんが「くー……」と鳴いた。

「ありがとう! 本当にありがとう!」

 思わずクウちゃんに手を伸ばし、抱き上げた。
 フワフワの毛があったかい。
 よく見たら、毛にいっぱい草やツタがからまってる。
 どうしてか分からないけど……クウちゃん、もしかして探してくれてた?
 うれしくて、ありがたくて、クウちゃんをぎゅっと抱きしめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜

湊未来
恋愛
 王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。  二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。  そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。  王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。 『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』  1年後……  王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。 『王妃の間には恋のキューピッドがいる』  王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。 「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」 「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」 ……あら?   この筆跡、陛下のものではなくって?  まさかね……  一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……  お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。  愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー

【完結】転生した悪役令嬢の断罪

神宮寺 あおい
恋愛
公爵令嬢エレナ・ウェルズは思い出した。 前世で楽しんでいたゲームの中の悪役令嬢に転生していることを。 このままいけば断罪後に修道院行きか国外追放かはたまた死刑か。 なぜ、婚約者がいる身でありながら浮気をした皇太子はお咎めなしなのか。 なぜ、多くの貴族子弟に言い寄り人の婚約者を奪った男爵令嬢は無罪なのか。 冤罪で罪に問われるなんて納得いかない。 悪いことをした人がその報いを受けないなんて許さない。 ならば私が断罪して差し上げましょう。

処理中です...