魔法道具のお店屋さん

森野ゆら

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5章

頂上でピンチ

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 岩の後ろから現れたのは、奇妙な人。
 顔に銀色のうろこみたいなのが生えていて、ギラギラしてる。
 体はほっそりしていて、ウエストにはボロボロのポーチ。
 腰下から尾びれみたいなベタベタしたものが生えてる。

「だ、だれ? あなた」

「おれ様、キッシィ。ご主人様、あんた連れてこい、言ってる。一緒に来てくれ。キヒヒ」

「ご主人様? だれのこと?」

「キヒヒ。そいつは言えねぇ。ご主人様のこと、ヒミツ。お前、眠らせて連れていったら、金貨いっぱい、もらえる。キヒヒ」

 開いたままの口から、ぼとぼとよだれが落ちる。
 地面に落ちたよだれから、シュウウと湯気が上がって土が焦げた。

「あああ! ちょっと待って! よだれストップ!」

 生えていたネツトレ草の一本によだれが落ちて、溶けちゃってる!
 何? このよだれ! 
 ダメだ。残ってるネツトレ草まで溶けちゃったら……

「ちょっ……そのよだれやめて!」

「よだれ、止まらない。ふぇ、ふぇ、ふぇくしょーい!」

 キッシィとかいうヤツの口から、たくさんの泡が出てきて、そこらじゅうの地面に飛び散った。

 シュウウウ…… 

 残っていたネツトレ草にも泡がかかって、くたりとした後、溶けちゃった!

「……うそ」

 信じられない。なんてことするの、コイツ。

「ばか! ネツトレ草、全部ダメになったじゃない!」

 怒って叫んだけど、キッシィは口元をぬぐってニヤリと笑った。

「キヒヒ、すっきりした。さて、お前、連れていく」

 キッシィが一歩、二歩と近づいてきた。
 近づくたびになんか、くさい。魚の腐ったニオイがする。

「こ、来ないでよ」

「大丈夫。これ、飲んだら眠れる」

 キッシィがウエストポーチから出してきたのは、透明の筒。
 たっぷり、泥水みたいな色の液体が入ってる。
 うええ。あんなの、絶対飲みたくない! 
 でも、キッシィはどんどん迫ってくる。どうしよう。
 泣きそうになったその時、背後で何かを唱える声がした。
 誰?
 振り返るより先に、ぱっと何かが光って、急に目の前が明るくなった。
 見ると、私とキッシィの間に一つの光の玉がプカプカ浮いてる。

「キヒヒ? なんだこれ」

 キッシィが興味津々で、宙に浮かぶ光の玉をツンツンさわったとたん、

 パン!

 玉が弾け飛んで、ピンク色の花びらがそこらじゅうに舞った。
 同時に花のいい香りがただよってくる。

「ふごっ。くせ、くせぇ! なんだこのニオイ!」

 キッシィが顔を押さえて、ジタバタしてる。
 くさい? この花の香りがくさいの?

「うおおおっ……ダメだ~~~」

 叫びながら、キッシィが逃げるように山を下りていった。
 ……よかった。なんかよく分かんないけど、助かった。
 でも、この花びらを出したのは、誰が……

「魚人族は花の香りが苦手だからな」

 後ろから聞いたことがあるような声がして、ハッと振り返る。
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