29歳、独身女の婚活殺人ミステリー

運命の選択

直也の家に泊まり、少しずつ正気を保てる様になった美香。


「あと2日で休みも終わりか。」


切り替えようと自分の中で気持ちの整理をしていた。



そんな時、鳴るはずのない音が。





"ガチャ"






直也が帰ってきた。




美香は慌てながらも問いかけた。


「え？仕事は？」


慌てていた私に、直也は目線を合わさぬまま、口を開いた。



「実は、こんなこと言いたくないんだけど。」



少しの沈黙が流れ、直也は重い口を開いた。



「小さい頃から、美香の事が凄く好きだったんだ。何で今、伝えるかというと、それは…」



「俺と"結婚"して欲しいんだ。」



私の頭は真っ白になった。


「え、え、待って待って。何言ってるの？あなたには真由美が居るでしょ？ダメに決まってるじゃない。」


しかし、直也は動揺する私に構わず


「離婚する。子供も居ないし。俺は美香と結婚したいんだ。」


そう言うと、直也は私に覆い被さった。



「絶対にダメ。こんなこと許される事じゃない！」


必死に抵抗した私に、直也はキスをしてきた。



私は気が付けば、そっと目を閉じていた。
私の頭の中で流れる様に過去の記憶が蘇った。



「私は昔から、直也が好きだった。
でも、高校生になって、真由美と出会ってから、私のこの気持ちを伝えることは2度とないのだと悟った。ほんとは今でもずっとその気持ちを心の片隅にしまっておいたのに。溢れてしまった。もう止められない。」


抵抗した力は抜け、私は直也と体の関係を持ってしまった。



後には戻れない過ちを犯してしまった。











そこからの2日間、真由美には内緒で、直也は昼で仕事上がり、家で不倫するようになっていた。

真由美が帰って来ると、気まずさもあったが、浮かれた気持ちが勝っていた。




そして、私はバレることなく直也宅を去った。




この過ちは許されることではないが、恐怖と不安から少し解放された気がした。
抑えていた、直也への感情は止まらなくなってしまった。





1週間後…




私は仕事にも復帰し、順調に気持ちも楽になっていた。

仕事では、直也に会うが会社にバレると大変なことにもなるので、いつも通りを装った。




しかし、私はある決断をする。




直也を仕事終わりに少し話があると呼び出した。


「もう、こんな関係はやめよ。普通に今まで通りに戻りたい。真由美にバレなければ良いというのも嫌だし、今までの様に楽しく3人で集まりたい。」


そう言うと、直也は少し戸惑っていたが、軽く頷いた。


「ごめんな。」



そう言うと、直也はあっさり帰って行った。




私は少し、悲しい気分になった。
出会った男が殺されていく現状。もう出会いなんていらないや。


自分に言い聞かせる様に、私は吹っ切れた。





しかし、吹っ切れた理由にはもう１つ意味があった。









絶対に許さない相手を陥れる為に。