水色トラップ

白米かため

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火曜日はまたバタバタと仕事に追われ夕飯はコンビニご飯だ、昨日のご飯美味しかったなあ、明日は中華って言ってたからお昼ご飯はパスタにでもしようかな。

水曜日、週の半分だと言うのにまだまだ仕事は忙しい。お昼はパスタにしようと思っていたのに結局食べることは出来なかった。
やっとマンションが見えてきて部屋に灯りがついている事に気付く。
家に誰か居る、それだけでなんだか安心するんだな…

『ただいま~…』

玄関を開けるとスパイシーな匂いが鼻をくすぐった。空の胃袋がきゅうきゅう鳴ってご飯を求めている。

『お帰りなさいませ東様、すぐご飯できますので』
『ありがとう、俺今日お昼ご飯食べ損ねちゃって…』
『それは大変でしたね。ビールは飲みますか?』
『はい、1本だけ』
『用意しておきます』

水色のエプロンをひるがえし家政婦さんがキッチンに戻っていく、後ろ姿を見つめるとエプロンと腰の間にかなり空間があってやっぱり大きいんだと確信した、いや、それより腰がすごく細いような気もする。
触って確かめたいな…いやいや、家政婦さんに手を出すなんてエロ動画の見過ぎだ。

部屋着代わりのジャージに着替えてダイニングテーブルへ行くと海老チリ、ワカメスープ、サラダが待っていた。

『わあ、今日も美味しそ~』
『どうぞ』

家政婦さんの手には冷やしておいたのか霜が付いたグラスにビールが綺麗に注がれている。
それを受け取るとゴクゴクと喉を鳴らして飲み込んだ、最高だ、こんな生活が出来るんならもっと早く来てもらえば良かった。

『東様、白いご飯とチャーハンどちらがよろしいですか?』
『え!?どっちもあるの?』
『はい。』
『えー、どうしよう……海老チリには白ご飯合いそうだし、でもチャーハンもいいなあ…』
『ふふ…』

え!?笑った??
か、可愛い…!

『それじゃあチャーハンはタッパに詰めておきます。』
『は、はい、あの、おかしかったですか?』
『あ…いえ、申し訳ございません。子供のようだったのでつい』
『笑った顔、可愛いですね』
『…ありがとうございます。洗濯物畳んできます』

もういつもの顔に戻った家政婦さんは洗濯が干してあるお風呂場へ行ってしまった。

それにしても美味い、ちょっとピリ辛の海老チリも胡麻が効いてるワカメスープも空腹の体に染み渡っていく。

サラダはこの間とは違うドレッシングがかかっている、これも手作りなんだ、本当すごいな…

『東様、そのまま召し上がりながらでいいのでお話しても良いですか?』
『あ、ほぁい、なんれひょう?』
『月曜日に畳んだ洗濯物がソファにまだありますがタンスに入れるのは難しいですか?』
『あ~、すみません、忘れちゃってました』
『これから私がタンスに入れてもいいなら、そうしますが、どうしますか?』
『え、本当ですかー?お願いします』
『いえ、こちらこそありがとうございます。』

サラダを口に頬張りモグモグさせながら頭を傾げた。

『こちらこそ?』
『はい。家政婦とは言えプライベートな場所は触られたくない人が多いですから、タンスを開けていいと許可をもらえるのはありがたいです。』

ふわっと笑うその顔が眩しく見えて思わず目を瞑ってしまう。やっぱり、この人の笑顔めっちゃ可愛いぞ…

『お食事が済んだら場所だけ確認してよろしいでしょうか?』
『あっ、いいですよっ、ちょっと待ってくださいね』
『ゆっくりで大丈夫です。僕、この後は家に帰るだけなんで、時間はあるので』

ぼ、僕!?僕って言ったよ!?
さっきまで"私"だったのに、仕事モード抜けちゃったのかな、ええ~可愛い~

お言葉に甘えてじっくり味わいながら夕飯を食べ終えるとさっそく寝室の中へ案内した。

『ここのクローゼットは全部服なんで、引き出しにTシャツと靴下と、あと、あ…』
『はい、ここがTシャツ、靴下……どうしました?』
『ここは、えーっと、下着なんで…下着はソファに置いたままでいいです』
『はい、では下着は今まで通りソファに置いておきます。』

いや、そもそも洗ってもらって干してもらってる下着を今更タンスに入れるのを躊躇うってなんだよ!?なんか格好悪くないか!?

『あ、や、やっぱり下着もタンスにしまっちゃってください』
『いいんですか?』
『は、はい。わざわざ分けるのも面倒でしょ?あははは』
『僕としては嬉しいです。任せていただけて』

あ、また、ふんわり笑顔だ…!
可愛いな、色が白くって腰も細くて、近くで見たら目もすっごく可愛い…

『小野寺さん、やっぱり笑うと可愛いですね』
『…ありがとうございます。じゃあそろそろ私は、あっ』
『うわっ』

出しっぱなしにしていた本にぶつかって小野寺さんが倒れてしまう、咄嗟に背中を抱きかかえるがそのままベッドへ2人して倒れてしまった。

うわ、まつ毛長~!唇もピンク色だ、背中に全然肉付いてないし、な、なんかいい匂いもする…

『す、すみません、あの、僕、』

あ、また僕って言った…!やっぱり僕って言うのいいなあ、可愛い顔に似合ってる、眼鏡の縁が金色なのも似合ってて、ああ、いいなあ、細い腰…触りたい…

『東様…?怒ってますよね……申し訳ございません……』
『……は?なん、なんで?怒ってなんか…』
『他人が外出着のままベッドに乗ってしまって…東様、潔癖ですよね?』
『へ?あ、いや、それは、まあ、そうだけど…』
『は、早くここから降りますから、あの、もう少し体を離してくださいませんか…?』

家政婦さんを組み敷いた体制で、目の前10センチには顔がある、起きあがろうとすると、あの、キス、しちゃいそうな距離だ…

『…わあっ!ごめんなさいっ!』

慌ててベッドから飛び降りる、家政婦さんは乱れたエプロンをかけ直して立ち上がると一礼した。

『それでは帰ります。失礼致しました。』
『あ、あの、ごめんなさい』
『いえ、こちらこそ申し訳ございませんでした。』

さっさと荷物をまとめると家政婦さんはその荷物を肩に背負って玄関へ向かう。

『あ、あの、』
『また金曜日に。おやすみなさい。』
『あ、あ、おやすみ…なさい』

パタンとドアが閉められてしまう。

なんだろう、心がポカンとする。空白が広がっていく。今すぐ金曜日にタイムスリップしたい、早く家政婦さんに会いたい、今度は抱きしめて、強く…可愛いねって言いたい。
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