上 下
227 / 230
終章 婚約者はマッチョ騎士!

228、初めての共同魔法

しおりを挟む
「君たちって意外と大胆だよね。まあでも、そういうのは自宅でやってもらえる?」

「「レオン殿下!」」

 レオンの言葉に慌ててリアムから一歩離れるオリビア。ニヤニヤとからかうような笑みを浮かべる友人に、恥ずかしさから目を合わせられない。

「今回は見なかったことにするから、そんなに照れないでよ」

「お、お気遣いいただきありがとうございます」

「謁見は終わったんだよね?」

「はい、今終わったところです」

 気を取り直して返事をすると、レオンはふたりの前に出て歩き始めた。

「じゃあ次は僕の番だ。こっちへ来て、案内するよ」

「「はい」」

 オリビアが王宮にきた理由は王との謁見だけではなかった。実はもう一人、会うべき人がいたのだ。むしろこちらが本命と言っても過言ではない。三人で廊下をしばらく歩き続ける。

「ここで待ってて」

「はい、承知いたしました」

 先ほどの謁見の間の扉に匹敵する、豪華で大きな扉を前に立ち止まる。レオンだけ一歩前へ出てノックをした。

「レオンです! 客人を連れて参りました。入ってもよろしいでしょうか?」

 ガチャンという開錠の音が聞こえ、レオンが扉を開いた。彼は先に部屋に入り、オリビアとリアムの入室を促す。

「失礼します。オリビア嬢とリアムも入って」

「「失礼いたします」」

 扉が閉じる音を背に、オリビアはこの部屋の主と対峙した。彼は部屋の奥にあるベッドに身を起こしこちらを向いていた。レオンに続き歩みを進めると、その姿がより鮮明になっていく。

「初めまして。レディーに会うのにこんな格好で済まない。君は、ステファニーによく似ているな」

 白髪混じりの金髪、空色の瞳。彫りの深い面差しは、国王陛下の血縁であることが一目瞭然だった。オリビアは両手でドレスの裾を掴み、頭を下げて一礼した。

「初めまして、先王陛下。オリビア・クリスタルと申します。以後、お見知り置きを」

「来てくれてありがとう。隣の君は、アレキサンドライトの者かな?」

「ご挨拶が送れ申し訳ございません、先王陛下。リアム・アレキサンドライトと申します。以後、お見知り置きを」

「ああ、よろしく」

 前国王チャールズ・ダイヤモンド=ジュエリトスは、穏やかな笑顔で頷いた。レオンが椅子を三脚用意し、オリビアたちはベッドの横に並んで座る。

「お祖父様、実はオリビア嬢はステファニーとノアの行方を知っています」

「なんと! 本当か?」

「はい、本当です。そうだよね、オリビア嬢?」

 先王は両眼を見開き、驚嘆の声を漏らした。オリビアは「はい」と肯首し説明を始める。

「本当です。私の魔法である日彼女たちと話すことができるようになりました。これからお見せするものは、信じることが難しいかも知れません。ですが……」

 今の時代のジュエリトスでは信じられないオリビアの魔法。焦り口調で話してたところを先王は遮り、優しい口調で語りかけてくる。

「信じるさ。私は大昔に、ステファニーの魔法を目の前で見ていたのだからね」

「ありがとうございます。では、こちらをご覧ください」

「はて、何やら変わった板だなあ」

 オリビアは持ち出していたタブレットを取り出した。魔力を流し、アプリの操作をして、画面を先王に向ける。そしてリアムに視線を送った。

「リアム様、よろしくお願いいたします」

「ああ、魔力の回復は任せてくれ」

 頼もしい返事のあと、握られた右手から魔力が溢れてくる。オリビアは自分の少ない魔力を、リアムの回復魔法で補い、タブレットで通信を始めたのだ。数秒待つと画面が光に包まれ、音声が聞こえてくる。

『やっほー! あ、もう繋がってるね。ノア、早く!!』

『ごめーん! 待ってよステフ』

「こ、これは一体?」

 目に入る情報が信じられないのか、チャールズ・ダイヤモンド=ジュエリトスは食い入るようにタブレットの画面を凝視していた。

>>続く
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ある愚かな婚約破棄の結末

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:34

前世が見える令嬢、恋をする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:161

異世界の辞典

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:70

本当に醜いのはあなたの方では?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:269pt お気に入り:245

処理中です...