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終章 婚約者はマッチョ騎士!
227、国王からの褒美
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リアムと晴れて婚約者になったオリビア。見つめると彼は愛おしそうに深緑の瞳を細めていた。お披露目となる来週の夜会が楽しみでたまらない。
「夜会での発表を楽しみにしているぞ。それから国家反逆の阻止について、ふたりには褒美を与えたい。まずはリアム・アレキサンドライトよ」
「はい!」
「王立騎士団での階級を一つ上げ、其方を本日より中尉とする。さらに勲章と、夜会の翌日まで特別休暇を与えよう」
「ありがたく頂戴いたします。そして、これからもジュエリトス王国と国民のために全力を尽くすと誓います!」
王からの思いがけない褒美にリアムは一度驚きの表情を浮かべた。返事をするとその場に跪き、頭を下げる。
「今後の働きに期待しているぞ。勲章の授与については追って連絡する。次に、オリビア・クリスタルよ」
「はい!」
快晴の空を切り取ったような王の瞳が、リアムからオリビアに向く。顔を上げ返事をすると、彼は柔らかに微笑んだ。
「其方の働きがなければ、人知れず傭兵たちが王都に乗り込み、この地は戦場と化していたかもしれない。やや無謀で心配ではあるが、君の勇敢さには恐れ入った」
「もったいないお言葉でございます」
「レオンから君は商売以外にあまり興味がなさそうだと聞いていてなあ。何を与えたら喜んでくれるのかわからなかった。そこで、私の権限の及ぶ範囲で何か一つ願い事を叶えよう!」
「え!」
突然舞い込んだ大きな褒美に、オリビアは言葉が出てこなかった。薄紫の瞳を丸め、瞬きを繰り返す。
「ちなみにペリドット領は今後、騎士団の管轄になる予定だが、欲しければクリスタル領に半分ほど分けてもいいぞ。王都に屋敷を構えたければ取り計らおう。どうだ、何かないか?」
首を傾げ問いかけてくる国王。領地拡大も王都にタウンハウスを構えるのも、田舎貴族のクリスタル家には破格の待遇である。顎に手を置き、唸りながら考え込む。
「思いつきました! とっておきの願い事が!」
オリビアから願い事を聞いた国王は、目を見開き驚いたあと笑顔でそれを快諾した。
「見た目とは違い豪胆な娘だな。我が家に嫁いで来なかったのが少し残念だ」
「国王陛下……」
「オリビア・クリスタル伯爵令嬢。君はこれからアレキサンドライト筆頭公爵家の子息と婚約する。彼の姉は私の息子、つまり王太子と来春には結婚する予定だ。そうなれば義理とはいえ王族と繋がりができる。辺境の地で暮らしていた頃とは周りの環境が目まぐるしく変わっていくだろう」
「はい」
「ときには辛いことがあるかもしれないが、リアムと支え合い、君の持ち前の優しさや賢さ、勇敢さで乗り越えていってほしい」
「ありがとうございます、国王陛下!」
優しく微笑みながらかけられる激励の言葉に感謝の気持ちを込め、オリビアは首を大きく縦に振った。
王との謁見を無事終え、オリビアはリアムと部屋の外に。扉が閉まったのを確認してから、一緒に大きく息を吐いた。
「やっと終わったな。オリビア嬢、緊張した?」
「もちろん、とても緊張しました!」
「その割に堂々としていたし、しっかり願い事もして、君は肝が据わっているな。頼もしいよ」
リアムが白い歯を見せイタズラに笑う。オリビアが頬を膨らませ拗ねたように口を尖らせると、彼は指で右頬を突いた。
「もう! それって遠回しに可愛げがないって言っています?」
「いや、君は思い切りがあって行動力もあって魅力的だと言っているんだよ」
指で突かれていた頬は、いつの間にか大きな手に包まれていた。その手に体重を預け、うっとりと目を閉じる。
「リアム様……」
「婚約期間さえもどかしい。早く君を私の妻にしたいな」
オリビアはここが王宮内の廊下であることも忘れ、婚約者という確かな関係に酔いしれていた。どうやらリアムも同じで、目尻を下げ緩み切った笑顔で甘い言葉を囁いている。
「ちょっと君たち、ここがどこかわかっているの?」
背後から聞こえる、ゴホンというわざとらしい咳払いと、ややふてぶてしい言葉。振り返ると、先ほどまで話していた国王の愛息レオンが胸の前で腕を組み立っていた。
>>続く
「夜会での発表を楽しみにしているぞ。それから国家反逆の阻止について、ふたりには褒美を与えたい。まずはリアム・アレキサンドライトよ」
「はい!」
「王立騎士団での階級を一つ上げ、其方を本日より中尉とする。さらに勲章と、夜会の翌日まで特別休暇を与えよう」
「ありがたく頂戴いたします。そして、これからもジュエリトス王国と国民のために全力を尽くすと誓います!」
王からの思いがけない褒美にリアムは一度驚きの表情を浮かべた。返事をするとその場に跪き、頭を下げる。
「今後の働きに期待しているぞ。勲章の授与については追って連絡する。次に、オリビア・クリスタルよ」
「はい!」
快晴の空を切り取ったような王の瞳が、リアムからオリビアに向く。顔を上げ返事をすると、彼は柔らかに微笑んだ。
「其方の働きがなければ、人知れず傭兵たちが王都に乗り込み、この地は戦場と化していたかもしれない。やや無謀で心配ではあるが、君の勇敢さには恐れ入った」
「もったいないお言葉でございます」
「レオンから君は商売以外にあまり興味がなさそうだと聞いていてなあ。何を与えたら喜んでくれるのかわからなかった。そこで、私の権限の及ぶ範囲で何か一つ願い事を叶えよう!」
「え!」
突然舞い込んだ大きな褒美に、オリビアは言葉が出てこなかった。薄紫の瞳を丸め、瞬きを繰り返す。
「ちなみにペリドット領は今後、騎士団の管轄になる予定だが、欲しければクリスタル領に半分ほど分けてもいいぞ。王都に屋敷を構えたければ取り計らおう。どうだ、何かないか?」
首を傾げ問いかけてくる国王。領地拡大も王都にタウンハウスを構えるのも、田舎貴族のクリスタル家には破格の待遇である。顎に手を置き、唸りながら考え込む。
「思いつきました! とっておきの願い事が!」
オリビアから願い事を聞いた国王は、目を見開き驚いたあと笑顔でそれを快諾した。
「見た目とは違い豪胆な娘だな。我が家に嫁いで来なかったのが少し残念だ」
「国王陛下……」
「オリビア・クリスタル伯爵令嬢。君はこれからアレキサンドライト筆頭公爵家の子息と婚約する。彼の姉は私の息子、つまり王太子と来春には結婚する予定だ。そうなれば義理とはいえ王族と繋がりができる。辺境の地で暮らしていた頃とは周りの環境が目まぐるしく変わっていくだろう」
「はい」
「ときには辛いことがあるかもしれないが、リアムと支え合い、君の持ち前の優しさや賢さ、勇敢さで乗り越えていってほしい」
「ありがとうございます、国王陛下!」
優しく微笑みながらかけられる激励の言葉に感謝の気持ちを込め、オリビアは首を大きく縦に振った。
王との謁見を無事終え、オリビアはリアムと部屋の外に。扉が閉まったのを確認してから、一緒に大きく息を吐いた。
「やっと終わったな。オリビア嬢、緊張した?」
「もちろん、とても緊張しました!」
「その割に堂々としていたし、しっかり願い事もして、君は肝が据わっているな。頼もしいよ」
リアムが白い歯を見せイタズラに笑う。オリビアが頬を膨らませ拗ねたように口を尖らせると、彼は指で右頬を突いた。
「もう! それって遠回しに可愛げがないって言っています?」
「いや、君は思い切りがあって行動力もあって魅力的だと言っているんだよ」
指で突かれていた頬は、いつの間にか大きな手に包まれていた。その手に体重を預け、うっとりと目を閉じる。
「リアム様……」
「婚約期間さえもどかしい。早く君を私の妻にしたいな」
オリビアはここが王宮内の廊下であることも忘れ、婚約者という確かな関係に酔いしれていた。どうやらリアムも同じで、目尻を下げ緩み切った笑顔で甘い言葉を囁いている。
「ちょっと君たち、ここがどこかわかっているの?」
背後から聞こえる、ゴホンというわざとらしい咳払いと、ややふてぶてしい言葉。振り返ると、先ほどまで話していた国王の愛息レオンが胸の前で腕を組み立っていた。
>>続く
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