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第八章 決戦!ペリドット領

195、月曜ランチはレオンにおまかせ

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 月曜日。何者かに捕らえられる三日前。
 オリビアは欠席届の提出と、ある用事を兼ねて登校していた。

「おはようございます。レオン殿下」

 朝のうちに欠席届を提出、受理してもらい明日から今週いっぱいの休みをもらった。そして次の用事のため、レオンに挨拶がてら声をかける。

「オリビア嬢、おはよう」

 クラスメイトと談笑していたレオンがオリビアを見つめ、爽やかに挨拶を返してきた。いまだに二人の関係を若干気遣われているせいか、周りにいた生徒たちはオリビアへの挨拶もそこそこに、気を利かせて四方に散る。

「実はレオン殿下にご相談がありますの。昼食をご一緒できますでしょうか?」

「珍しいね、相談なんて。じゃあ今日は王室専用エリアで食事しようか」

「ありがとうございます」

 快諾してくれたレオンに礼を言って、オリビアは午前の授業に参加した。昼休みには彼と互いの護衛を引き連れ、食堂内の王族専用エリアへ。

「レオン殿下、お時間をいただきありがとうございます」

「そんな堅苦しい礼はいいよ。座って」

 先に席についたレオンに深く頭を下げると、彼は肩をすくめて笑った。その言葉に甘え、オリビアは「失礼いたします」とレオンの正面の席に座る。

「で、相談ってなあに?」

 豪華ランチをご馳走になり、食後の紅茶を飲み始めた頃、レオンが言った。彼はやや身を乗り出し、首を傾け、オリビアに上目遣いで問いかける。

(これは、遠いどこか、遥か彼方の異国で『あざとい』と呼ばれる仕草!)

 脳内では少しふざけながら、オリビアはレオンにやや作り込んだ笑顔を向ける。

「実は、すぐにリアム様にお会いしたいのです。クリスタル領で事件がありましたので、私は明日から領地に戻る予定でして」

「事件?」

 眉を寄せるレオンに、オリビアは「ええ」と頷いて話を続けた。

「残念ながら我が領地で殺人事件がありました。私たちは調査をする予定です。そこで、レオン殿下には至急リアム様に連絡し、本日中のなるべく早くに会えるよう話をつけていただきたいのです。私ではおそらく勤務時間終了まで話すことは叶わないでしょう」

「なるほどね。僕ならリアムの勤務時間中でも対応しないわけにいかないものね」

「はい。無理を言っているのは承知しておりますが、どうかお願いいたします」

 小さく何度か頷きながら話を聞くレオン。一瞬唇を尖らせ唸って、すぐにいつもの王子様スマイルを浮かべた。

「いいよ! 僕は早退してこのまま騎士団に行ってくる。放課後迎えにくるから、オリビア嬢は授業が終わったら校門の前で待っていてくれる?」

「ありがとうございます! このご恩は必ずお返ししますわ!」

 オリビアはレオンの手を取り何度も礼を言った。彼は眉を下げ苦笑いをして息を漏らす。

「恩を返さないといけないのは僕の方だよ。これで少しは君の力になれるかな?」

「もちろんです。本当にありがとうございます!」

「それじゃあ、放課後に!」

 爽やかな挨拶を置き土産に、レオンは昼食後学院を出て行った。
 オリビアは教室に戻って午後の授業を受け、放課後にはジョージ、リタとともに校門前でレオンとリアムを待つ。

「オリビア様、リアム様にどのようなご用事が?」

「明日からまた王都を離れるから、先に説明しておこうと思ったの」

 リタの質問に答えて間も無く、校門前に馬車が停まった。そのあまりの豪華さに圧倒され、オリビアは一歩後ろに足を引いた。

「オリビア嬢、お待たせ!」

 馬車の扉が開き、中からレオンが手を振っていた。リアムの姿は見えない。

「レオン殿下、わざわざ来ていただきありがとうございます。ところで、リアム様はいらっしゃらないのでしょうか?」

「リアムはアレキサンドライトのタウンハウスにいるよ。送るからみんな馬車に乗って」

「はい」

 レオンに促され、オリビアは彼の馬車に乗った。リタとジョージも続く。外側も金の装飾などが派手な馬車だが、内装も煌びやかだった。座席には上質な皮が張ってあり、床はふかふかとした絨毯が敷いてある。

「みんな、何か飲む?」

「いいえ、すぐですし結構ですわ」

 レオンが葡萄酒のボトルを出したので、オリビアは首を横に振って遠慮した。もはや乗り物というより移動する部屋だなと、乗り心地の良さと相まって感心する。

 車内で他愛もない会話をしているうちに馬車がスピードを落とし始めた。車窓からはアレキサンドライト家のタウンハウスが見える。

「あ、もう着いたね。リアムが待っているよ」

「レオン殿下、送っていただきありがとうございます」

 馬車の扉が開く。その先には、リアムがこちらを見て微笑んでいた。

>>続く
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