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第七章 オリビアの魔法

184、約束のプレゼント2

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 箱の中には、以前帰省した際に街のアクセサリー店「モアメッド工房」で依頼した品物が入っていた。

「私の魔法を明かすことができたら、渡そうと思っていました。私や従者達がつけている耳飾りです」

「素敵だ。このデザインは、花?」

「はい。桜という花で、ステファニーがいる世界にある薄いピンク色の花です。春になると木にたくさん咲いてそれは圧巻なのですよ。私も大好きなので……」

 リアムに渡した耳飾りは耳の高い位置にとめるプラチナ製。この世界にはない先端が少し先割れた花びらが八重に重なった花を彫って、その中心にはみんなとお揃いのクリスタルをあしらったものだった。

「そうか、サクラか……。ありがとう、とても気に入ったよ。大切にする」

「気に入っていただけて嬉しいです。デザインした甲斐がありますわ」

 オリビアは彼が目をキラキラと輝かせ喜ぶので嬉しくなり、自然と顔が綻んだ。恥ずかしいので内緒にしておこうと思ったデザインのことも口を滑らしてしまう。

「これを、君が?」

「はい。内緒にしておくつもりだったのですが……」

 恥ずかしくなって俯くオリビアの顔にリアムの手が触れる。頬を包まれ、そっと顔を持ち上げられ彼と視線が交わった。

「オリビア嬢、今まで手にしたどんなものより嬉しいよ。本当にありがとう」

 白い歯を見せ、少年のように笑うリアム。オリビアは彼の喜びに満ちた表情を見て、自分も嬉しくなり、同時に胸の奥が締めつけられるように切なくなった。彼への愛しさが溢れ出して、涙が出そうなほどの大きな感情となっていた。

「リアム様、私もこんなに喜んでもらえて、嬉しいです。私は……心からリアム様をお慕いしております」

「オリビア嬢!」

 ぎゅうと、オリビアの細い体はリアムに抱きしめられた。感じるのは自分よりも少し高めな彼の体温と、早鐘を打つようなお互いの鼓動。

「リアム様、あなたが私の婚約者で……恋人でよかったです」

 リアムも緊張しているのだとわかると、不思議とオリビアの心は落ち着き、いつもなら恥ずかしいと思うようなこともスラスラと口にできた。オリビアがリアムの背中に手を回すと、彼は大きく息を吐いた。

「早く結婚して……君を私の部屋に連れて帰りたいよ」

「ふふっ、リアム様ったら。学院の卒業まではお待ちくださいね」

「一年半はあるじゃないか。長いな」

 抱き合いながら他愛もない会話を交わす。幸福感がオリビアの心を満たしていった。

「オリビア様、失礼いたします。お茶とお菓子を……!」

「リタ!」

 コンコンとノックの音から間髪入れずに部屋のドアが開く。オリビアはリアムと抱き合ったままの状態でリタと目が合った。彼女はティーセットのワゴンを目にもとまらぬスピードで部屋に押し込み、顔を真っ赤にして後ずさっている。

「も、申し訳ございません! まさかお取り込み中とは……。お茶とお菓子を置いていきますねっ」

「リタ、これは違うのっ。ちょっと待って!!」

「いえいえ、ごゆっくりなさってください。では!」

「リタ~!!」

 その後、オリビアは部屋から猛ダッシュで離れたリタの誤解を解くのに随分と苦労した。

>>次話へ続く

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