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第七章 オリビアの魔法
183、約束のプレゼント1
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「オリビア様、そろそろお茶の時間ですので私は準備をしてまいります。アレキサンドライト公、失礼いたします」
「あ~俺もディランのやつがエリオット様と出かけて不在らしいんで、郵便チェックとかしてきますわ~。アレキサンドライト公、ごゆっくり」
「え、ちょっと! ふたりとも!」
オリビアが話を始めようとしたとき、リタとジョージが揃って部屋を出ていった。彼らを引き止めようとするも間に合わず、オリビアは室内にリアムと二人、残される形となった。
(どうしよう、ふたりっきりだわ……)
「オリビア嬢、こっちに座って話さないか? 君も疲れただろう」
「え、あ、はい! 少々お待ちください」
数日ぶりに会ったリアムに今さら緊張するオリビア。彼の呼びかけに、急いで引き出しから小さな箱を取り出した。
「お待たせいたしました」
「オリビア嬢」
「はい?」
オリビアはリアムの正面、先ほどまでレオンが座っていたソファに腰を下ろそうと屈んだ。しかし、それはリアムに阻まれる。自分を呼ぶ声にオリビアが視線を向けると、リアムはソファの片側半分のスペースを空けてその場所をポンポンと手で叩いている。
「こっちにきて、オリビア嬢」
「は、はい……」
言われるまま彼が空けたスペースに腰を下ろすと、リアムがみんなと一緒にいたときより柔らかい笑顔を向けている。彼からの愛情たっぷりの視線を受け止めたオリビアは自分の胸の鼓動が大きく、少し早まったと感じた。頬や耳が熱いのもきっとそのせいだ。
「オリビア嬢、今日は疲れただろう? 私のことも呼んでくれてありがとう」
「いいえ、そんな……。私の方こそ、ここまで会いにきてくださって嬉しいです。ありがとうございます」
リアムがオリビアの手を取り、大きな手で何かを確かめるように撫で、優しく指先を握ったりしている。オリビアの顔はさらに熱くなっていた。
「君は、手が小さいな」
「リアム様の手が大きいのですよ」
「指もこんなに細い。オリビア嬢、君はこの小さな手で領地やこの国を守ろうと必死にがんばっていたんだな」
「私だけのがんばりではありません。兄やリタ、ジョージがいましたから……。昔、クリスタル家が越してきたとき、この地は荒れ果て、人が住める状態ではなかったそうです。ひいお祖父様やお祖父様はそれでも諦めず、慕ってついてきてくれた領民や近隣で居場所を失った民達と力を合わせたから、今のクリスタル領があるのです。だから私も、この地を王都にも負けないくらい立派な領地にしたいと思ったのです」
いつの間にか、触れ合っていた手は指を組むように繋がれていた。オリビアは先ほどまでの緊張が少し和らぎ、今度はリアムの温かい手に心地よさを感じていた。
「オリビア嬢、実は私は……リタやジョージに少し嫉妬していた」
「え?」
繋いだ手元を見ていたオリビアはリアムの意外な発言に顔を上げた。彼は苦笑いで話を続ける。
「君の利発でなんでも自分でやろうとする積極的なところは本当に素晴らしいと思うんだが、少し頼って欲しかったというか……。リタやジョージには甘えているのに、恋人の私には少し遠慮がちだったのが寂しかったんだ」
「まあ……」
オリビアはリアムの本心を聞き、息を漏らした。彼も遠慮して、もっと頼ってほしいと言えなかったのだと思うと申し訳ないという気持ちにもなった。彼はこちらから手を伸ばすのを、じっと待っていてくれたのだと気づく。そういえばいつも彼の愛情は決して無理強いすることはなかった。ただそこに佇んで包み込むような優しさに満ち溢れていた。
「つまらない嫉妬なんだが。けれど今回、クラブ棟が火事になり私を頼ってくれて、本当に嬉しかった。そして君を無事助けることができて、本当によかった」
オリビアを見つめる深緑の瞳が優しく弧を描く。それを見ているだけでオリビアは心の奥がじんわりと温まっていった。
「リアム様、ありがとうございます。あの、これを……受け取ってくださいますか?」
「ありがとう、開けても?」
「はい、もちろん」
自分も、彼の愛情に応えたい。そう思いながらオリビアは引き出しから持ち出していた小箱をリアムに渡した。彼が箱を開け、中身を確認する。
「これは……!」
>>続く
「あ~俺もディランのやつがエリオット様と出かけて不在らしいんで、郵便チェックとかしてきますわ~。アレキサンドライト公、ごゆっくり」
「え、ちょっと! ふたりとも!」
オリビアが話を始めようとしたとき、リタとジョージが揃って部屋を出ていった。彼らを引き止めようとするも間に合わず、オリビアは室内にリアムと二人、残される形となった。
(どうしよう、ふたりっきりだわ……)
「オリビア嬢、こっちに座って話さないか? 君も疲れただろう」
「え、あ、はい! 少々お待ちください」
数日ぶりに会ったリアムに今さら緊張するオリビア。彼の呼びかけに、急いで引き出しから小さな箱を取り出した。
「お待たせいたしました」
「オリビア嬢」
「はい?」
オリビアはリアムの正面、先ほどまでレオンが座っていたソファに腰を下ろそうと屈んだ。しかし、それはリアムに阻まれる。自分を呼ぶ声にオリビアが視線を向けると、リアムはソファの片側半分のスペースを空けてその場所をポンポンと手で叩いている。
「こっちにきて、オリビア嬢」
「は、はい……」
言われるまま彼が空けたスペースに腰を下ろすと、リアムがみんなと一緒にいたときより柔らかい笑顔を向けている。彼からの愛情たっぷりの視線を受け止めたオリビアは自分の胸の鼓動が大きく、少し早まったと感じた。頬や耳が熱いのもきっとそのせいだ。
「オリビア嬢、今日は疲れただろう? 私のことも呼んでくれてありがとう」
「いいえ、そんな……。私の方こそ、ここまで会いにきてくださって嬉しいです。ありがとうございます」
リアムがオリビアの手を取り、大きな手で何かを確かめるように撫で、優しく指先を握ったりしている。オリビアの顔はさらに熱くなっていた。
「君は、手が小さいな」
「リアム様の手が大きいのですよ」
「指もこんなに細い。オリビア嬢、君はこの小さな手で領地やこの国を守ろうと必死にがんばっていたんだな」
「私だけのがんばりではありません。兄やリタ、ジョージがいましたから……。昔、クリスタル家が越してきたとき、この地は荒れ果て、人が住める状態ではなかったそうです。ひいお祖父様やお祖父様はそれでも諦めず、慕ってついてきてくれた領民や近隣で居場所を失った民達と力を合わせたから、今のクリスタル領があるのです。だから私も、この地を王都にも負けないくらい立派な領地にしたいと思ったのです」
いつの間にか、触れ合っていた手は指を組むように繋がれていた。オリビアは先ほどまでの緊張が少し和らぎ、今度はリアムの温かい手に心地よさを感じていた。
「オリビア嬢、実は私は……リタやジョージに少し嫉妬していた」
「え?」
繋いだ手元を見ていたオリビアはリアムの意外な発言に顔を上げた。彼は苦笑いで話を続ける。
「君の利発でなんでも自分でやろうとする積極的なところは本当に素晴らしいと思うんだが、少し頼って欲しかったというか……。リタやジョージには甘えているのに、恋人の私には少し遠慮がちだったのが寂しかったんだ」
「まあ……」
オリビアはリアムの本心を聞き、息を漏らした。彼も遠慮して、もっと頼ってほしいと言えなかったのだと思うと申し訳ないという気持ちにもなった。彼はこちらから手を伸ばすのを、じっと待っていてくれたのだと気づく。そういえばいつも彼の愛情は決して無理強いすることはなかった。ただそこに佇んで包み込むような優しさに満ち溢れていた。
「つまらない嫉妬なんだが。けれど今回、クラブ棟が火事になり私を頼ってくれて、本当に嬉しかった。そして君を無事助けることができて、本当によかった」
オリビアを見つめる深緑の瞳が優しく弧を描く。それを見ているだけでオリビアは心の奥がじんわりと温まっていった。
「リアム様、ありがとうございます。あの、これを……受け取ってくださいますか?」
「ありがとう、開けても?」
「はい、もちろん」
自分も、彼の愛情に応えたい。そう思いながらオリビアは引き出しから持ち出していた小箱をリアムに渡した。彼が箱を開け、中身を確認する。
「これは……!」
>>続く
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