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第七章 オリビアの魔法

182、レオンの事情2

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「レオン殿下……」

 オリビアは悩んだ。ステファニーから聞いた話では前国王との関係は良好でノアとの関係も容認していたらしい現在。だが冷遇されているクリスタル家の状況的に、彼女が異世界に転移した後になんらかの罰を受けることになったのは明白だった。この数十年で前国王にどのような気持ちの変化があったかもわからない。ステファニーのことが原因で、今後クリスタル家がさらに窮地に追い込まれるようなことがあったらと不安だった。

「もちろんお祖父様以外には内密にするし、君やクリスタル家に迷惑がかかるようなことは絶対にしない。どうか、僕のお祖父様を助けると思って……お願いだ」

「少し……お時間をいただけませんか? ステファニーにも相談してみます」

「オリビア嬢、ありがとう!」

 オリビアの返事に、レオンが涙ぐみ、紫色の瞳を輝かせながら笑顔を浮かべた。感極まった彼はオリビアの手を取り何度も感謝の言葉を口にした。

「レオン殿下、いいお返事ができる約束はできませんから、そんなに喜ばれては困ります」

「いいんだ、前向きに検討してくれるだけで嬉しいよ。君はなんて優しいんだろう……感謝するよ、オリビア嬢」

「よかったですね、殿下。それではそろそろ……オリビア嬢の手を離していただけますか?」

 オリビアの手を握り微笑むレオン。そこに今度はリアムの手が伸び、レオンの手をオリビアから引き離した。柔和な口調のわりに、手の力は少し強いとオリビアは彼から何とも言えない圧力を感じた。
 同じく手を引き離されたレオンの方を見ると、彼もまたリアムに圧倒され慌てて手を引っ込めている。

「ああ、リアム、悪かったよっ」

「いいえ。わかっていただければいいですよ」

「リ、リアム様……」

 にっこりと微笑みレオンにダメ押しをしてるリアムを見て、オリビアは少し恥ずかしくなり顔が熱を持った。周囲ではリタがキラキラと目を輝かせ、ジョージがニヤリと薄ら笑いを浮かべている。彼らの考えていることが手に取るようにわかり、オリビアは肩を丸めて俯いた。

「さて、僕の用件は済んだ。そろそろお暇するよ」

「レオン殿下、わざわざご足労いただき、ありがとうございました」

 話が落ち着いたところで、レオンが立ち上がる。オリビアも慌てて立ち上がり、彼に一礼した。

「いや、僕の方こそ君たちに本当にひどいことをしてしまったのに、大切な秘密まで明かしてくれて……感謝しているよ。ありがとう。また学院で会おう」

「はい、また学院でお会いしましょう」

「リアムも……本当にありがとう。何か僕や王族の力が必要なときは遠慮なく言ってくれ」

「ありがとうございます、殿下」

 それからオリビアはリアム達と一緒にレオンを見送り、再び自分の部屋に戻った。

「リアム様、実は私リアム様には他にもお話があったのです」

「私に……話?」

 リアムの返事に、オリビアはにっこりと微笑んで頷いた。

>>次話へ続く
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