149 / 230
第六章 事件発生
150、願う者たち1
しおりを挟む
店の前には、リタが倒れていた。額が赤く腫れている。エルは動揺し、何度も彼女の名を呼んだ。
「リタさん、リタさんっ、リタさんっ!」
「…………」
リタの返事はない。エルは急いで店の鍵を開け、彼女を背負って店内へ。テーブル席のソファに彼女を寝かせた。
「リタさん……返事をして……」
エルはリタの様子を確認する。額の傷以外に外傷はなさそうだった。呼吸も乱れておらず、気絶しているか眠っているようだ。ひとまず胸を撫で下ろす。
「殴られた感じでもなさそうだ……転倒したか?」
リタの衣類を確認すると前面だけが砂埃で汚れていたので、薬や魔法で意識を奪われ、前に倒れ込んだと予想した。
「だったら……」
エルはカウンター奥へ行きのドリンク棚を見渡す。そこから両手に瓶を一本ずつ手に取った。毒消しと気付け薬だ。
「これと……これだ!」
それぞれの瓶から液体をグラスに注ぎ混ぜ合わせた。中には青緑色のどろりとした液体が完成する。エルはグラスを持ってリタが横たわるソファに戻った。
「リタさん、飲んでください」
リタの顔を横に向かせ、グラスを口元に近づけた。反応はなく彼女は液体を飲まない。
「……すみませんっ」
エルは大きく深い呼吸をして、グラスの液体を口に含んだ。強い苦味に顔をしかめながら、リタの額と顎を押さえ口を開かせる。そこへ唇を重ね自分が含んだ液体を流し込んだ。
「ゴホッ……」
「リタさん!」
「…………」
リタが液体を飲み込みわずかに咽せていた。呼びかけには答えなかったが、呼吸は穏やかで眠っているようだった。高度な魔法でなければ、数時間後には目を覚ますだろう。
エルはリタの口元についた液体を拭き取り、椅子を移動させ、彼女の隣に座って手を握った。
>>続く
「リタさん、リタさんっ、リタさんっ!」
「…………」
リタの返事はない。エルは急いで店の鍵を開け、彼女を背負って店内へ。テーブル席のソファに彼女を寝かせた。
「リタさん……返事をして……」
エルはリタの様子を確認する。額の傷以外に外傷はなさそうだった。呼吸も乱れておらず、気絶しているか眠っているようだ。ひとまず胸を撫で下ろす。
「殴られた感じでもなさそうだ……転倒したか?」
リタの衣類を確認すると前面だけが砂埃で汚れていたので、薬や魔法で意識を奪われ、前に倒れ込んだと予想した。
「だったら……」
エルはカウンター奥へ行きのドリンク棚を見渡す。そこから両手に瓶を一本ずつ手に取った。毒消しと気付け薬だ。
「これと……これだ!」
それぞれの瓶から液体をグラスに注ぎ混ぜ合わせた。中には青緑色のどろりとした液体が完成する。エルはグラスを持ってリタが横たわるソファに戻った。
「リタさん、飲んでください」
リタの顔を横に向かせ、グラスを口元に近づけた。反応はなく彼女は液体を飲まない。
「……すみませんっ」
エルは大きく深い呼吸をして、グラスの液体を口に含んだ。強い苦味に顔をしかめながら、リタの額と顎を押さえ口を開かせる。そこへ唇を重ね自分が含んだ液体を流し込んだ。
「ゴホッ……」
「リタさん!」
「…………」
リタが液体を飲み込みわずかに咽せていた。呼びかけには答えなかったが、呼吸は穏やかで眠っているようだった。高度な魔法でなければ、数時間後には目を覚ますだろう。
エルはリタの口元についた液体を拭き取り、椅子を移動させ、彼女の隣に座って手を握った。
>>続く
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
66
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる