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第六章 事件発生

150、願う者たち1

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 店の前には、リタが倒れていた。額が赤く腫れている。エルは動揺し、何度も彼女の名を呼んだ。

「リタさん、リタさんっ、リタさんっ!」

「…………」

 リタの返事はない。エルは急いで店の鍵を開け、彼女を背負って店内へ。テーブル席のソファに彼女を寝かせた。

「リタさん……返事をして……」

 エルはリタの様子を確認する。額の傷以外に外傷はなさそうだった。呼吸も乱れておらず、気絶しているか眠っているようだ。ひとまず胸を撫で下ろす。

「殴られた感じでもなさそうだ……転倒したか?」

 リタの衣類を確認すると前面だけが砂埃で汚れていたので、薬や魔法で意識を奪われ、前に倒れ込んだと予想した。

 「だったら……」

 エルはカウンター奥へ行きのドリンク棚を見渡す。そこから両手に瓶を一本ずつ手に取った。毒消しと気付け薬だ。

「これと……これだ!」

 それぞれの瓶から液体をグラスに注ぎ混ぜ合わせた。中には青緑色のどろりとした液体が完成する。エルはグラスを持ってリタが横たわるソファに戻った。

「リタさん、飲んでください」

  リタの顔を横に向かせ、グラスを口元に近づけた。反応はなく彼女は液体を飲まない。

「……すみませんっ」

 エルは大きく深い呼吸をして、グラスの液体を口に含んだ。強い苦味に顔をしかめながら、リタの額と顎を押さえ口を開かせる。そこへ唇を重ね自分が含んだ液体を流し込んだ。

「ゴホッ……」

「リタさん!」

「…………」

 リタが液体を飲み込みわずかに咽せていた。呼びかけには答えなかったが、呼吸は穏やかで眠っているようだった。高度な魔法でなければ、数時間後には目を覚ますだろう。
 エルはリタの口元についた液体を拭き取り、椅子を移動させ、彼女の隣に座って手を握った。

>>続く
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