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第五章 交差する陰謀

128、ジョージの密会3

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「その通り。実はその土地、二十五年前まではサファイア公爵家の土地だったのよ……。ラピスラズリ侯爵はサファイア公爵と貴族学院の同級生で友人だったの。公爵は当時国内で事業の失敗と国外で何らかのトラブルにあって金に困った。それを、侯爵が王都付近の領地を買い取ることで助けた。この件が発覚したときにはすでに問題は解決して土地の売買も済んでいたから、周りの貴族も王族も口を挟むことはできなかったの」

「……ずいぶん、計画的っすね」

「ええ、たぶんね。ちなみに今は亡き正妃ルイーズ様も、その姉で第二王妃のアデル様もサファイア公爵家の令嬢さ。これでラピスラズリは王族との繋がりもできた。実際に付き合いがあるのかはわからないけど、周りがラピスラズリを見る目は変わったでしょうね。そこから貴族の間でも、彼は力を増していったそうよ」

「なるほどね……」

  いまだにラピスラズリ侯爵の目的はわからないが、彼が何らかの理由でペリドット伯爵との関係を作ったのは間違いなさそうだ。早めに主人に報告が必要だと、ジョージは思案しながら冷め切った紅茶のカップに口をつける。

 ひと通り話し終え、オリーブが淹れなおしてくれた紅茶を飲んだあと、ジョージは椅子から立ち上がる。閉め切っていたカーテンを捲り、窓から外を眺めると、通りに見覚えのある男女が目に入った。

「あら、あれは小娘ちゃんと……あの格好と赤毛はアレキサンドライトの次男か。本当に玉の輿だねえ。腕なんて組んじゃって、仲がいいこと」

 オリーブが一緒になって窓から外を見てニヤリと笑う。

「そうっすね」

 ジョージは遠くからでも笑顔とわかる主人が恋人と腕を組み通り過ぎていく姿をそっと見送った。

「姐さん、週末は例のブティックに付き合ってくれるかい?」

「言うと思ってここは週末まで連泊にしておいたよ」

「さすが。……俺も一緒に泊まっちゃおうかな」

 そう言ってオリーブの手を取るジョージ。だが、その手は軽く振り払われる。

「だから、ガキの口説き文句には乗らないって言ってるだろう?」

「へいへい。厳しいなあ」

「酒ぐらいなら付き合ってもいいけど。飲みにでも行くかい?」

「……いいや、明日も学校ですしね。今日は帰るよ。姐さん、また週末に」

「はいよ、じゃあねジョージ」

 ジョージはひらひらと手を振るオリーブに手を振りかえし、宿屋を出る。
 そして近くにあるエルの店を覗いて主人や同僚が楽しんでいるのを見届け、学院の寮へと戻った。

>>次話へ続く
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