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第四章 ふたりは恋人! オリビア&リアム
115、恋人はマッチョ騎士(中編)2
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オリビアがリアムと店の中に入った途端、彼女たちから笑顔が消えた。皆黙って俯き、中には震えている娘もいる。女性客ばかりいるせいか、確かに外で待ち合わせている時よりリアムが大柄に見えると思う。あまり広くはない店の面積も彼の迫力が増す原因になっているようだ。
ひとり、またひとりと少女たちは店を出ていき、気がつくと店内にはオリビアとリアム、店員の女性のみになっていた。
オリビアはこの女性店員が出て行った少女たち同様に怯えていないか心配になった。彼女に視線を移すと、俯き「はあー」と大きな息を吐いている。
「もう、アレキくん! お客さんが恐がっていなくなったじゃない、どうしてくれるの?」
「す、すまん……」
女性店員は顔を上げ、キッと目と眉を寄せてリアムを睨み、叱りつけた。リアムは肩を丸め、小さくなって彼女に詫びている。オリビアは状況が飲み込めず首を傾げた。
「こうなったら今日の売り上げ見込み分の高額商品買ってもらうからね。お嬢さん、何が欲しいの? なるべくそこのガラスケースの中のアンティークから選んでね!」
「え! あ、あの……」
女性店員は今度はオリビアに捲し立てるように言葉を投げ、会計の近くにあるガラスケースを指した。オリビアは彼女の熱量に圧倒され、一歩後ろに下がった。
「アンナ! 彼女が怯えているからやめるんだ」
「何よ! 元はと言えば君のせいでしょ? で、どのアンティーク買うの?」
「いや、それはその……」
アンナと呼ばれた女性は、間に入ったリアムを言葉で完全に跳ね除けた。リアムどころかオリビアよりも小柄な彼女がなんだか大きく見える。
アンナが腰に手を当て再び息を吐いた。店の雰囲気に合わせているのか金色の綺麗な髪の毛は左右の三つ編みに結われている。肌は白く、大きな栗色の瞳とそばかすがひとりで店番をする年齢には到底思えない。オリビアよりも幼く見える。
「リアム様。私、そのケースの中の首飾りが欲しいですわ」
「お嬢さん、お目が高い! その首飾りはジュエリトス王国初代国王ジョージ・ダイヤモンド=ジュエリトスが王妃のリリーに送ったというなんと千年の時を超えた愛の証なのよ!」
「そんなものがこの店に並んでいるわけないだろう。偽物を売りつけるな」
「じゃあこれが偽物っていう証拠はあるんですか~?」
「うっ!! それは……」
「証拠もないのに偽物とか言っていいんですか~?」
「まあまあ、おふたりとも落ち着いてください。」
オリビアは言い合いを始めたアンナとリアムの間に入り、ふたりを宥めた。まずはリアムが我に返り、目元を歪めバツの悪そうな顔をして背中を丸める。先ほどよりさらに小さくなった印象だ。
「すまない、オリビア嬢。ついカッとなって、大人気なかった……」
「おふたりはお知り合いなのですか?」
オリビアの問いかけに、小さくなったままのリアムが頷いた。
「ああ、彼女はアンナ・シトリン。貴族学院で同級生だったんだ」
「まあ、そうでしたの。では私の兄とも同級生ですわね?」
「あなた、お兄さんがいるの? 誰だれ?」
「兄は、エリオット、エリオット・クリスタルと言います。ご存知でしょうか?」
「え! クリスくんの妹なの? うわー懐かしいな、元気にしてる?」
「はい、元気にしております」
アンナは先ほどまでリアムを睨んでいた鋭い目つきを緩ませ、オリビアに笑顔を向けた。場の空気が和み、オリビアはこっそり安堵の息を漏らすと同時に彼女が自分よりも五歳も年上なことに驚いた。
「そっか、よかった~! 私も一応子爵家の娘で学院出身なんだけど、親が事業失敗して没落しちゃって~。王都にいない同級生とはほぼ会うことなくってさ~」
「そ、そうでしたか……」
没落を軽快に語るアンナに、オリビアは気の利いた言葉が浮かばず口元を引きつらせ相槌を打った。彼女はそのまま機嫌よく話を続けた。
「アレキくんとも全く会ってなかったんだけど、何日か前の閉店間際に急にお店に来たんだよね。「恋人とデートするから下見だ」って……」
>>続く
ひとり、またひとりと少女たちは店を出ていき、気がつくと店内にはオリビアとリアム、店員の女性のみになっていた。
オリビアはこの女性店員が出て行った少女たち同様に怯えていないか心配になった。彼女に視線を移すと、俯き「はあー」と大きな息を吐いている。
「もう、アレキくん! お客さんが恐がっていなくなったじゃない、どうしてくれるの?」
「す、すまん……」
女性店員は顔を上げ、キッと目と眉を寄せてリアムを睨み、叱りつけた。リアムは肩を丸め、小さくなって彼女に詫びている。オリビアは状況が飲み込めず首を傾げた。
「こうなったら今日の売り上げ見込み分の高額商品買ってもらうからね。お嬢さん、何が欲しいの? なるべくそこのガラスケースの中のアンティークから選んでね!」
「え! あ、あの……」
女性店員は今度はオリビアに捲し立てるように言葉を投げ、会計の近くにあるガラスケースを指した。オリビアは彼女の熱量に圧倒され、一歩後ろに下がった。
「アンナ! 彼女が怯えているからやめるんだ」
「何よ! 元はと言えば君のせいでしょ? で、どのアンティーク買うの?」
「いや、それはその……」
アンナと呼ばれた女性は、間に入ったリアムを言葉で完全に跳ね除けた。リアムどころかオリビアよりも小柄な彼女がなんだか大きく見える。
アンナが腰に手を当て再び息を吐いた。店の雰囲気に合わせているのか金色の綺麗な髪の毛は左右の三つ編みに結われている。肌は白く、大きな栗色の瞳とそばかすがひとりで店番をする年齢には到底思えない。オリビアよりも幼く見える。
「リアム様。私、そのケースの中の首飾りが欲しいですわ」
「お嬢さん、お目が高い! その首飾りはジュエリトス王国初代国王ジョージ・ダイヤモンド=ジュエリトスが王妃のリリーに送ったというなんと千年の時を超えた愛の証なのよ!」
「そんなものがこの店に並んでいるわけないだろう。偽物を売りつけるな」
「じゃあこれが偽物っていう証拠はあるんですか~?」
「うっ!! それは……」
「証拠もないのに偽物とか言っていいんですか~?」
「まあまあ、おふたりとも落ち着いてください。」
オリビアは言い合いを始めたアンナとリアムの間に入り、ふたりを宥めた。まずはリアムが我に返り、目元を歪めバツの悪そうな顔をして背中を丸める。先ほどよりさらに小さくなった印象だ。
「すまない、オリビア嬢。ついカッとなって、大人気なかった……」
「おふたりはお知り合いなのですか?」
オリビアの問いかけに、小さくなったままのリアムが頷いた。
「ああ、彼女はアンナ・シトリン。貴族学院で同級生だったんだ」
「まあ、そうでしたの。では私の兄とも同級生ですわね?」
「あなた、お兄さんがいるの? 誰だれ?」
「兄は、エリオット、エリオット・クリスタルと言います。ご存知でしょうか?」
「え! クリスくんの妹なの? うわー懐かしいな、元気にしてる?」
「はい、元気にしております」
アンナは先ほどまでリアムを睨んでいた鋭い目つきを緩ませ、オリビアに笑顔を向けた。場の空気が和み、オリビアはこっそり安堵の息を漏らすと同時に彼女が自分よりも五歳も年上なことに驚いた。
「そっか、よかった~! 私も一応子爵家の娘で学院出身なんだけど、親が事業失敗して没落しちゃって~。王都にいない同級生とはほぼ会うことなくってさ~」
「そ、そうでしたか……」
没落を軽快に語るアンナに、オリビアは気の利いた言葉が浮かばず口元を引きつらせ相槌を打った。彼女はそのまま機嫌よく話を続けた。
「アレキくんとも全く会ってなかったんだけど、何日か前の閉店間際に急にお店に来たんだよね。「恋人とデートするから下見だ」って……」
>>続く
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