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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

69、オリビアのランウェイ無双1

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「オリビア様、終わりましたよ。ただいまお茶を淹れますね」

「ありがとう、リタ。お休みだったのに悪いわね」

「いいえ、十分休ませていただきましたから。それに今日も明日も大事な日ですし」

「そうね……」

 消灯時間の一時間前、オリビアは寮の自室でいつもより早くリタに髪の手入れをしてもらい、就寝の準備を整えていた。ソファでくつろぎリタの淹れるハーブティーを待つ。

 すると、コンコンと小さな音がバルコニーに面する窓から聞こえた。
 リタが窓へ向かおうと手を止めたが、オリビアは立ち上がり手を上げ合図をして窓へ向かった。

 カーテンを捲ると、窓の向こうには護衛のジョージが立っていた。メモに記載した時間通りだ。

 オリビアはそっと窓を開け「どうぞ」と小声でジョージを招いた。ジョージが「どうも」と言いながら部屋の中に入ってくる。

「さて、鍵は置いてきましたよ」

「私の方もリタの部屋で預かってもらっているから盗聴の心配はないわ」

 オリビアはソファに座り直し、リタが淹れた紅茶のカップを口に運んだ。一口飲んでカップを置き、テーブルの上に一枚の紙を広げた。それは昼間にクラブ教室で描いた魔法陣の模写だった。

「まずはコレね。古代魔術の魔法陣。ふたりとも、この中に書いてある文字は読める?」

 オリビアの問いに、リタとジョージが首を傾げた。

「いいえ……ジュエリトス語ではないですね。隣のマルズワルト王国の文字とも違いますし……」

「これ、お嬢様しか読めないあの文字に似てません?」

「そうなの!」

 ジョージの発言に食いつくようにオリビアは顔を前に出して目を見開いた。ジョージが半歩後退する。自分が護衛を圧倒してしまっていることに気づき、オリビアは咳払いをして姿勢を正した。

「そうなの、これは私しか読めない、ジャポーネ語なの。それがなぜか古代魔法で使われている。もしかしたら古代ジュエリトスとあの国は深い関係があるのかも。緊急ではないけど私はこの件を調べるわ。これがわかれば、いざという時役に立つかも」

「オリビア様、あまり危険なことはなさらないようにしてくださいね」

 興奮気味のオリビアに、リタが心配そうな顔で息を吐いた。

「わかっているわ。単独行動はしないから安心して。それからジョージ、あなたは明日、明後日と休日でしょう? 街に出るなら生地屋さんで私の訪問着に使えそうな生地を探してきてちょうだい。デートなら付き合ってもらって髪飾りか何かを買ってあげるといいわ。これはその軍資金よ」

「あざっす」

 オリビアが紙幣の入った封筒をジョージに渡すと、彼は軽く頭を下げてしっかりと受け取った。こういうときに一切遠慮しないのがジョージ・ヘマタイトだ。

「それからリタは明日の訪問に付き添ってもらうわね」

「承知いたしました」

 明日はついにリアムとの約束通り、アレキサンドライト領の屋敷へ行く日だった。リアムの父に挨拶し、国王陛下に婚約の許可をもらうための大切な日。
 騎士団の団員でもあるリアムがついているため、ジョージは滞在中の二日間は休みということになっている。

「いよいよ明日はアレキサンドライト領へ訪問ですね、オリビア様。なんだか私も緊張してしまいます」

「そうね、さすがに私も緊張しちゃうわ。あ、リタ。アレキサンドライト家は美形揃いで有名よ。楽しみね」

 オリビアは緊張を紛らわせるため、あえて美形好きのリタをからかった。彼女は少し口を尖らせる。

「オ、オリビア様! からかわないでください!」

「ふふふ……ごめんなさい。まあ今のあなたにはエル以外どうでもいいかしら?」

「オリビア様~!」

 リタが今度は顔を真っ赤にして困ったような声で主人の名を呼んだ。
 オリビアは自分と同じく、にやりと意地悪な笑みを浮かべているジョージと一緒に声を出して笑った。

「本当、リタはからかいがいがあるわ。さて、本日の重要任務を始めましょうか」

「はい」

「かしこまりました」

 笑い緩んだ顔を引き締め、オリビアは部屋の中の姿見の前に立った。

 そして鏡面に手をかざし魔力を流す。淡い光を発した姿見がスライドし、小部屋の入り口が開いた。

 オリビアはクリスタル家の屋敷にいる時のように机の引き出しの鍵を開け、皮のケースに入ったタブレットを取り出した。

「さあ、やるわよ!」

 タブレットにも魔力を流し、オリビアは呪文を唱える。

「ヘイ! チリ!!」

『ご用件はなんでしょう?』

 相変わらず抑揚のない女性の声がオリビアに答えた。

「ハピ天市場を開いてちょうだい」

 オリビアの要望に応え、タブレットには『ハピ天市場』と書いた様々な商品の絵が描かれた、カタログのような画面が表示された。

>>続く
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