66 / 230
第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様
67、名探偵オリビア3
しおりを挟む
クラブ教室に着くと、ジョージの持っている鍵でドアを開け、オリビアはとジョージは教室の中に入った。
「さてと、今日はあの詮索殿下もいないし、この教室を調べましょう。これでも食べながら」
オリビアは先ほどの授業でジョージが作った『カロリー・ソウルメイト』を出してニヤリと笑った。
ジョージは大きなため息をついて差し出されたそれを一つ口に入れた。
「はあ……。で、何を調べたいんですか?」
「ここでは話せないわ。あとでね。……あ、あったあった。さあ、ジョージは私の髪を結い直してちょうだい」
「へいへい」
オリビアが教室の隅にある棚から、魔法陣が描かれた一枚の羊皮紙を取り出した。昔から貴族が使っている上質なものだった。
それを机に広げ、自分の持ち込んだ紙と万年筆を並べて椅子に腰掛ける。
ジョージがポケットから櫛を出し「失礼しますよ」と言ってオリビアの髪留めを外す。
「櫛まで常備しているなんて準備がいいのね」
「まあ、いつかわい子ちゃんの髪を解いてもいいようにね」
ジョージの持つ銀細工の櫛が、オリビアの髪の毛を滑った。
それはまるで何年も仕えた侍女のように手慣れていて、とても心地がよかった。オリビアはその心地よさにそっと目を瞑った。
すると、ジョージの手が止まり、オリビアは自分の髪の毛の一部がふわりと浮くのを感じた。そのまま数秒、動きは止まったままだ。
オリビアが目を開けてジョージに声を掛ける。
「ジョージ? どうしたの?」
「あ、いえ……。髪型どうしよっかなと思って」
「ああ、リタに怒られないなら何でもいいわ」
「わかりましたよ」
再び、ジョージの手が動きだす。そして、あっという間に髪が結いあげられた。
「はい! 出来上がりっす。鏡はないんで見せられないですけど、リタには及第点もらえる出来ですよ」
「ありがとう! さ、これで集中できるわ」
オリビアは万年筆を手に取った。次に自分の持ち込んだ紙へ、羊皮紙に描かれた魔法陣を書き写し始めた。
「何してるんですか?」
「模写よ。ちょっと調べたくて」
ジョージの質問に、オリビアは魔法陣から目を離さず答える。ゆっくりと丁寧に手を動かし魔法陣を描いていく。
「模写ですか……。これを持ち出しちゃダメなんですか?」
「ええ。ここで手に入れたものは殿下の管理下にあって信用できないわ。殿下の魔法が何なのかはわからないけど、もし私が彼の立場で私のことを探っているなら、十中八九盗聴や盗撮をするわ。何か理由をつけて記録媒体を持たせてね」
オリビアは模写を続けながら答えた。背後にいるジョージの気配が若干引き締まったのを感じる。
「たとえば、この教室の鍵とか?」
「そうよ。解析魔法が使えないと何とも言えないけど、あの鍵には何か細工がしてあると思っていいはずよ」
「だから持ち歩いてないんですか? もっと早く教えてくださいよ。もしデートの様子とかを聞かれたりしたら、俺のモテテクが流出しちゃうじゃないですか~」
「だから今日教えてあげたじゃない。明日は休日だからデートでしょう? 置いていきなさいよ」
オリビアはジョージの不可解な発言については面倒なのであえて流し、話しながら模写を続けた。そして、魔法陣を描き終える。
「できた! よし、昼休みも終わる頃ね。もう出ていきましょう」
「戻るのは戻るので怠いっすね。サボりません?」
「ダメ! 行くわよ!」
「へいへい」
オリビアは素早く立ち上がると、羊皮紙を元の場所に戻し、模写をした紙と万年筆を持ってクラブ教室を後にした。
>>続く
「さてと、今日はあの詮索殿下もいないし、この教室を調べましょう。これでも食べながら」
オリビアは先ほどの授業でジョージが作った『カロリー・ソウルメイト』を出してニヤリと笑った。
ジョージは大きなため息をついて差し出されたそれを一つ口に入れた。
「はあ……。で、何を調べたいんですか?」
「ここでは話せないわ。あとでね。……あ、あったあった。さあ、ジョージは私の髪を結い直してちょうだい」
「へいへい」
オリビアが教室の隅にある棚から、魔法陣が描かれた一枚の羊皮紙を取り出した。昔から貴族が使っている上質なものだった。
それを机に広げ、自分の持ち込んだ紙と万年筆を並べて椅子に腰掛ける。
ジョージがポケットから櫛を出し「失礼しますよ」と言ってオリビアの髪留めを外す。
「櫛まで常備しているなんて準備がいいのね」
「まあ、いつかわい子ちゃんの髪を解いてもいいようにね」
ジョージの持つ銀細工の櫛が、オリビアの髪の毛を滑った。
それはまるで何年も仕えた侍女のように手慣れていて、とても心地がよかった。オリビアはその心地よさにそっと目を瞑った。
すると、ジョージの手が止まり、オリビアは自分の髪の毛の一部がふわりと浮くのを感じた。そのまま数秒、動きは止まったままだ。
オリビアが目を開けてジョージに声を掛ける。
「ジョージ? どうしたの?」
「あ、いえ……。髪型どうしよっかなと思って」
「ああ、リタに怒られないなら何でもいいわ」
「わかりましたよ」
再び、ジョージの手が動きだす。そして、あっという間に髪が結いあげられた。
「はい! 出来上がりっす。鏡はないんで見せられないですけど、リタには及第点もらえる出来ですよ」
「ありがとう! さ、これで集中できるわ」
オリビアは万年筆を手に取った。次に自分の持ち込んだ紙へ、羊皮紙に描かれた魔法陣を書き写し始めた。
「何してるんですか?」
「模写よ。ちょっと調べたくて」
ジョージの質問に、オリビアは魔法陣から目を離さず答える。ゆっくりと丁寧に手を動かし魔法陣を描いていく。
「模写ですか……。これを持ち出しちゃダメなんですか?」
「ええ。ここで手に入れたものは殿下の管理下にあって信用できないわ。殿下の魔法が何なのかはわからないけど、もし私が彼の立場で私のことを探っているなら、十中八九盗聴や盗撮をするわ。何か理由をつけて記録媒体を持たせてね」
オリビアは模写を続けながら答えた。背後にいるジョージの気配が若干引き締まったのを感じる。
「たとえば、この教室の鍵とか?」
「そうよ。解析魔法が使えないと何とも言えないけど、あの鍵には何か細工がしてあると思っていいはずよ」
「だから持ち歩いてないんですか? もっと早く教えてくださいよ。もしデートの様子とかを聞かれたりしたら、俺のモテテクが流出しちゃうじゃないですか~」
「だから今日教えてあげたじゃない。明日は休日だからデートでしょう? 置いていきなさいよ」
オリビアはジョージの不可解な発言については面倒なのであえて流し、話しながら模写を続けた。そして、魔法陣を描き終える。
「できた! よし、昼休みも終わる頃ね。もう出ていきましょう」
「戻るのは戻るので怠いっすね。サボりません?」
「ダメ! 行くわよ!」
「へいへい」
オリビアは素早く立ち上がると、羊皮紙を元の場所に戻し、模写をした紙と万年筆を持ってクラブ教室を後にした。
>>続く
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します
シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。
両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。
その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい
冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」
婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。
ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。
しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。
「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」
ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。
しかし、ある日のこと見てしまう。
二人がキスをしているところを。
そのとき、私の中で何かが壊れた……。
ご落胤じゃありませんから!
実川えむ
恋愛
レイ・マイアール、十六歳。
黒い三つ編みの髪に、長い前髪。
その下には、黒ぶちのメガネと、それに隠れるようにあるのは、金色の瞳。
母さまが亡くなってから、母さまの親友のおじさんのところに世話になっているけれど。
最近急に、周りが騒々しくなってきた。
え? 父親が国王!? ありえないからっ!
*別名義で書いてた作品を、設定を変えて校正しなおしております。
*不定期更新
*カクヨム・魔法のiらんどでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる