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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

65、名探偵オリビア1

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 一方、授業を終えたオリビアは教室を出るクラスメイトの流れに逆らい、シルベスタの元へ向かった。

「シルベスタ先生!」

 生徒を見送り授業の後片付けをしている彼は、その手を止め手元からオリビアに視線を移した。

「おお、クリスタルさん。どうした? 個別授業なら体術の授業が本格化してからの方が……」

「いいえ、ひとつ、質問がありますの。少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

 近くから見るとTシャツから覗く発達した上腕筋や肘から下の腕橈骨筋が陰影を作り、シルベスタの腕は芸術品のようだった。
 オリビアは意識が質問ではなく彼の筋肉に向かいそうなのを抑え込み、目に力を込めた。シルベスタがわずかに後ずさる。

「ああ、じゃあこのままこの教室で話そうか。もう他の生徒は出払っているし」

 オリビアはシルベスタに「ありがとうございます」と会釈し、顔を上げ、真剣な眼差しで彼を見つめた。

「では早速ですが、今、お召しになっているその白い服について、お尋ねしたいのですが……」 

 シルベスタは質問の意図を理解したのか、オリビアの視線を受け止め口角を上げた。

「この服については、君の方がよく知っているのでは? オリビア・クリスタルさん。君の領地で販売しているものだろう?」

 オリビアの質問に、元王立騎士団団長で現貴族学院体術教師のシルベスタが答えた。
 彼は余裕のありそうな笑みを浮かべていたが、反してオリビアは真剣で余裕のない真顔を向けていた。

「……おっしゃる通りですが、領地の中でも販売しているのは限られた店のみ。私の知らないところで広まるものではないのです。失礼ですが一体どうやって手に入れたのですか?」

 オリビアの問いかけに、シルベスタはゆったりとした笑顔で頷いた。

「ああ、なるほど。着心地が良くて愛用していたのだが、そんなに貴重なものだったのか。これは知人にもらったんだよ」

「貰い物……ですか」

 貰い物であれば購入経路がわからないのも納得できる。
 しかし、その知人は領地で購入したTシャツをこの王都まで持ち込んでいることになる。それはあり得なかった。

 オリビアは自分が開発した製品を厳重に管理しており、Tシャツに関してはまだ領内だけでの販売にとどめ、クリスタル領から出すことがないよう購入者の特定と領民との魔法契約でそれを守っていた。
 それがなぜ、今ここに流出しているのだろうと、オリビアは眉間に皺を寄せて小さく唸った。

「知人というのは、君もよく知っている人間だ。クリスタルさん、私は君の秘密を知っているよ」

「秘密……?」

 シルベスタが白い歯を見せてオリビアに笑顔を見せた。彼の笑顔はその言葉とは裏腹に何の含みも毒気もなく、オリビアにとってはそれが不気味で仕方なかった。

>>続く
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