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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

53、オリビアVSレオン3

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「あ、そろそろ時間だね。戻ろうか」

「……はい」

 レオンに促され、オリビアが席を立つとちょうど終了のベルが鳴った。教室を出てクラブ等の出口ヘ向かう。
 その後、校舎へ戻りクラスメイトが全員揃った段階で就業時刻を迎えたため、オリビアの入学後初の登校は終了した。

「それじゃあオリビア嬢、また明日ね」

「はい。レオン殿下、さようなら」

 レオンが護衛を引き連れて帰宅していく。オリビアは頭を下げて挨拶し、その背中を見送った。

「お嬢様、俺らも行きますか」

「そうね……」

 オリビアは肩を落とし、ゆっくりと教室の外へ向かった。その表情は暗い。そのまま校舎の外までたどり着く。

「ちょっと、何落ち込んでるんすか?」

「…………」

 いつまでも暗い表情のままの主人に嫌気がさしたのか、ジョージがオリビアの前に立ち顔を覗き込んだ。

「お嬢様、そんなに悔しかったですか?『バルク』の二ヶ月目の業績聞いた時と同じ顔してますよ」

 オリビアの経営しているマッチョカフェ『バルク』はオープン初月は黒字だったものの、ジュエリトスでは少々奇抜なコンセプトが仇となって二ヶ月目に赤字になってしまったのだ。
 当時も結果を前にオリビアは唇を一文字に結び、眉間に皺を寄せ、必死に悔し涙を抑えていた。まさに今と同じ表情だった。

 ジョージがそっとオリビアの頭に手を置いた。
 中腰になって視線を合わせ優しく微笑む護衛のせいで、張り詰めていた糸が切れたかのように、オリビアの目からは涙が溢れた。
 同時にうちに秘めていた本心も口から勢いよく飛び出していく。

「く、悔しいに決まってるじゃない! 王子って言っても私と同い年なのよ? なのに、なのに完全に手のひらで転がされたのよ? 悔しくないわけないないじゃない」

 泣き顔を隠すようにオリビアはジョージに抱き寄せられ、その胸に顔を埋めた。溢れた涙は彼の制服のジャケットが吸い込んでいく。

「うわ、お嬢様、俺制服これ一着しかないんで鼻水つけないでくださいよ」

「違うわよ! 涙よ! 失礼なんだから。それに洗い替えを買えるくらいの給料は支払っているわよ」

「ちょっと先月使い過ぎちゃいまして。ボーナス期待してます」

 オリビアが顔を上げると、ジョージは顔を顰めながらハンカチを差し出した。それを受け取り目元を中心に顔を拭き、大きく深呼吸をすると、先ほどまでの悔しさに歪んだ表情から、目元に力のあるいつもの自分を取り戻す。
 そして、ジョージの腕をすり抜け、彼の隣を歩き始めた。

「本当に調子がいいんだから。さあ、寮まで送ってちょうだい」

「はいはい。かしこまりました、お嬢様」

 二人は目を見合わせて口角を上げると、ゆっくり歩きだしクラブ棟から遠ざかる。そして、リタが待つ女子寮へと向かった。

>>続く
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