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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様
42、番外編 オリビア・クリスタルの生誕祭2
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「うぅ……。頭が痛い……」
まるで頭が割れるような頭痛と、腹の底から込み上げるような吐き気を伴い、オリビアは目を覚ました。
起き上がることができないが、見覚えのある天井が見える。どうやら自室のベッドに寝ているようだ。
「オリビア様! さあ、これを飲んでください。水です」
「リタ……」
リタが駆け寄り、オリビアの体を起こし、水の入ったグラスを口に近づけてきた。オリビアはそれに手を添え、ゆっくりと飲み込んだ。
「もうお昼です。心配しましたよ」
「リタ……私は一体……?」
「覚えていらっしゃらないのですか……」
リタの眉を下げ唇を結びまるで憐れむような視線を受けながら、オリビアは昨夜の自分の行動を事細かに聞いた。そのせいだけではないがさらに頭痛がひどくなった。
「ジョージは?」
「先ほど来ましたがオリビア様はまだお休みでしたので出直すと言っておりました」
「そう……」
さらにリタにすすめられるまま水を飲み一息ついていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
リタがドアを開けると、そこにはジョージが立っている。
昨日覚えている限りの記憶では、彼もずいぶん酒を飲んでいた気がするが、いつもと変わらずの様子だった。オリビアにとってはそれがなんとも憎たらしかった。
「お嬢様、二日酔いの洗礼ですねえ。大丈夫ですか?」
「全っ然大丈夫なんかじゃないわ……。あなた何でそんなに平気なのよ」
「まあ、慣れっすね」
そう言ってジョージはヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべていた。オリビアは反撃の言葉を出せないまま、静かに彼を睨みつける。
そんなふたりを見て呆れたのか、リタが大きく息を吐いた。
「私は旦那様や奥様にオリビア様が目を覚ましたと伝えて参ります。ジョージ、オリビア様をみていろ」
「へいへい」
リタが部屋を出たあと、オリビアはなかなから抜けない全身の倦怠感に嫌気がさし、水を飲みながら愚痴を漏らしていた。
「もうお昼なのよ、最悪だわ。今年も楽しみにしてたのに……「マッチョだらけの棒倒し」を……」
「ああ、みんな張り切って練習してましたよ。かわいそうになあ。お嬢様に見てもらおうとがんばってたのに」
「そんなふうに言わないでよ、私だってこんなことになると思わなかったわよ」
一昨年から始まった新年の余興「マッチョだらけの棒倒し」とは、二つのグループにわかれたクリスタル家の護衛たちが互いのチームの棒を倒そうと競う競技だ。
オリビアにとっては垂涎もののイベントだった。勝ったチームには金一封が贈られるため、参加者の本気度も高い。
「まあまあ、そう思って俺も何とかしようとここに来たわけですよ」
「どういうこと? 治せるの?」
オリビアは思わず首を傾げる。その拍子に脳が大きく揺れ、目が回るような感覚に陥った。これが治るとは到底信じられない。
しかし、ジョージは得意げに口角を上げ、ジャケットの懐からボトルを出した。それは昨夜さんざん見た、葡萄酒だった。
「お嬢様、迎え酒って知ってます?」
「迎え酒?」
それから、オリビアはすすめられるまま葡萄酒を飲み、頭痛や吐き気が和らいだ。むしろだんだんと気分が良くなった。そして「マッチョだらけの棒倒し」にも間に合い、楽しい一日を過ごすことができた。
その代償の大きさに気づいたのは、翌日だった。
「うぅ……。頭が痛い……」
「オリビア様……アイツの言うことなんか聞くからですよ……」
憐れむような、呆れるようなリタの声を聞きながら、オリビアはもう二度と酒は飲むまいと心に誓った。
「クソ……ジョージ……」
終わり
年末年始の番外編、いかがでしたか?
引き続き本編もよろしくお願いします!
まるで頭が割れるような頭痛と、腹の底から込み上げるような吐き気を伴い、オリビアは目を覚ました。
起き上がることができないが、見覚えのある天井が見える。どうやら自室のベッドに寝ているようだ。
「オリビア様! さあ、これを飲んでください。水です」
「リタ……」
リタが駆け寄り、オリビアの体を起こし、水の入ったグラスを口に近づけてきた。オリビアはそれに手を添え、ゆっくりと飲み込んだ。
「もうお昼です。心配しましたよ」
「リタ……私は一体……?」
「覚えていらっしゃらないのですか……」
リタの眉を下げ唇を結びまるで憐れむような視線を受けながら、オリビアは昨夜の自分の行動を事細かに聞いた。そのせいだけではないがさらに頭痛がひどくなった。
「ジョージは?」
「先ほど来ましたがオリビア様はまだお休みでしたので出直すと言っておりました」
「そう……」
さらにリタにすすめられるまま水を飲み一息ついていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
リタがドアを開けると、そこにはジョージが立っている。
昨日覚えている限りの記憶では、彼もずいぶん酒を飲んでいた気がするが、いつもと変わらずの様子だった。オリビアにとってはそれがなんとも憎たらしかった。
「お嬢様、二日酔いの洗礼ですねえ。大丈夫ですか?」
「全っ然大丈夫なんかじゃないわ……。あなた何でそんなに平気なのよ」
「まあ、慣れっすね」
そう言ってジョージはヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべていた。オリビアは反撃の言葉を出せないまま、静かに彼を睨みつける。
そんなふたりを見て呆れたのか、リタが大きく息を吐いた。
「私は旦那様や奥様にオリビア様が目を覚ましたと伝えて参ります。ジョージ、オリビア様をみていろ」
「へいへい」
リタが部屋を出たあと、オリビアはなかなから抜けない全身の倦怠感に嫌気がさし、水を飲みながら愚痴を漏らしていた。
「もうお昼なのよ、最悪だわ。今年も楽しみにしてたのに……「マッチョだらけの棒倒し」を……」
「ああ、みんな張り切って練習してましたよ。かわいそうになあ。お嬢様に見てもらおうとがんばってたのに」
「そんなふうに言わないでよ、私だってこんなことになると思わなかったわよ」
一昨年から始まった新年の余興「マッチョだらけの棒倒し」とは、二つのグループにわかれたクリスタル家の護衛たちが互いのチームの棒を倒そうと競う競技だ。
オリビアにとっては垂涎もののイベントだった。勝ったチームには金一封が贈られるため、参加者の本気度も高い。
「まあまあ、そう思って俺も何とかしようとここに来たわけですよ」
「どういうこと? 治せるの?」
オリビアは思わず首を傾げる。その拍子に脳が大きく揺れ、目が回るような感覚に陥った。これが治るとは到底信じられない。
しかし、ジョージは得意げに口角を上げ、ジャケットの懐からボトルを出した。それは昨夜さんざん見た、葡萄酒だった。
「お嬢様、迎え酒って知ってます?」
「迎え酒?」
それから、オリビアはすすめられるまま葡萄酒を飲み、頭痛や吐き気が和らいだ。むしろだんだんと気分が良くなった。そして「マッチョだらけの棒倒し」にも間に合い、楽しい一日を過ごすことができた。
その代償の大きさに気づいたのは、翌日だった。
「うぅ……。頭が痛い……」
「オリビア様……アイツの言うことなんか聞くからですよ……」
憐れむような、呆れるようなリタの声を聞きながら、オリビアはもう二度と酒は飲むまいと心に誓った。
「クソ……ジョージ……」
終わり
年末年始の番外編、いかがでしたか?
引き続き本編もよろしくお願いします!
応援ありがとうございます!
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