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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

35、貴族学院入学2

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「オリビア様。入学式、お疲れ様でした」

 入学式を終え寮の自室へ戻ると、リタがお茶の支度をして控えていた。入学式を終えたオリビアを労う。

「ありがとう。リタも疲れたでしょう? パーティーの支度が終わったら休んでいてね」

「ありがとうございます。それでは一息つきましたら準備を始めましょう。あと、先ほどリアム様よりお手紙と贈り物が届いております」

 リタはオリビアに手紙と手のひらに収まる程度の小箱を差し出した。オリビアはソファに座り、お茶を一口飲んでまずは手紙を開封する。

『オリビア嬢、入学おめでとう。よければパーティーで使ってください。王都で会えるのを楽しみにしています。リアム・アレキサンドライト』

 相変わらず簡素な内容の手紙。しかし、丁寧で美しい字からリアムの誠実さや不器用さが伝わり、オリビアから自然と笑顔が溢れた。次に小箱の赤いリボンを解き、中身を確かめる。

「まあ、綺麗」

「素敵ですね。今日の薄紫のドレスにも似合いますよ」

 箱の中には、花のモチーフの髪飾りが入っていた。透明度の高い水晶でできたそれは、室内の照明を反射しカットされた面が七色に輝いていた。オリビアはリアムから贈られた髪飾りを眺めながら、貴族だらけの憂鬱ゆううつなパーティーが少しだけ楽しみになった。

「いってらっしゃいませ。オリビア様」

 寮の前でリタに見送られ、オリビアは迎えに来ていたジョージと馬車に乗り込んだ。
 パーティーの会場は学院の隣にあり、新入生と保護者、来賓たちが参加する大規模なものとなっている。
 まだリアムと正式に婚約していないオリビアは、ジョージをパートナーにしてなるべく目立たないようやり過ごす算段だった。

 馬車の中でオリビアの正面に座ったジョージが眉を上げた。編み込まれた彼女の髪の毛のサイドに、見慣れない髪飾りが輝いているのを見つけたようだ。

「あれ、そんな髪飾り持ってました?」

「これは……リアム様にいただいたの」

「へえ。やっぱあの騎士様、ムッツリなんですね」

「アレキサンドライト卿よ! ムッツリって、どういうこと?」

「ドレスとかアクセサリーとか、身につけるものを贈るって『あなたは自分のもの』っていう独占欲の現れですからね。もちろん髪飾りも。しかもパーティーの日に」

「え、そ、それって……」

「髪飾りですし、さしずめ『あなたの髪にキスしたい』かですかね?」

「え! キ、キス!」

 首から上を真っ赤にして何やら考え込んでいるオリビアを見ながら、ジョージがニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべていた。彼女やリタをからかって遊ぶのは、ジョージのライフワークのようなものなのだろう。

「まあ、好かれてるってことですよ。良かったですね。マッチョの婚約者ができて」

「からかわないでよ!」

「そういえば、会場の警備は騎士団の管轄ですから、もしかしたら来ているかもしれないっすね。お嬢様の騎士様が」

「わ、私のではないわ! っていうか、騎士様はやめなさい」

「へいへい」

(もしかしたら、リアム様に会えるかもしれないのね)

 オリビアは窓の外を眺め、騎士団員が数名いるのを確認し、リアムの姿を探していた。

>>続く
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