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第一章 クリスタル領で再会

18、恋の始まり2

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「なるほど、そうでしたの。素敵な能力ですね。リアム様は他にも上位の回復魔法も使えるそうですね。私は魔力量が少ないので羨ましいですわ」

「回復も強化もありがたいことに騎士団で役に立っているよ。今回はさすがに魔力切れでこの有様だが……」

「魔力が戻るまでには、まだお時間がかかりそうですか?」

 オリビアが心配そうにリアムの顔を覗き込んだ。魔力持ちが魔力切れを起こすと、回復するまで体が怠くなったり、熱を出して寝込むこともあるからだろう。

 リアムは自分の身を案じ覗き込む薄紫の瞳が、ほんの少し潤み、上目遣いになっていることに動揺し、視線を逸らす。

(か、かわいいっ……!)

 オリビアに自分を意識して欲しくて、手を握ってみたりしているが、リアムの方が緊張でどうにかなりそうだった。自分の胸の鼓動が、早まっているのを感じる。

「もう、だいぶ魔力は戻ってきているんだ。明日には日常生活に戻れそうだよ。多少なら魔法も使える。こんなふうに」

 胸の鼓動を気取られないよう、ごまかすように、リアムはちょっとした魔法を使ってみせる。
 リアムは腕のみの肉体強化をした。筋肉が隆々と盛り上がり、元々逞しかった腕はさらに太く、女性のウエスト程度の太さになっている。

「まあ、すごくたくましい。まるで——」

 オリビアが強化したリアムの腕を、肩の方から、一つ一つの筋肉を確かめるように見つめながらゆっくりと撫で下ろす。

「……っ! オリビア嬢?」

 急に積極的なオリビアにリアムは驚いた。その拍子に魔法が解け、腕も元のサイズに戻る。オリビアもはっとした様子で腕から顔へ視線を戻した。リアムはオリビアと視線が交わり、真っ赤になっていた顔がさらに赤く、熱く感じて恥ずかしくなった。

「リ、リアム様」

 自分がずいぶん大胆な行動をしていることを自覚したようで、オリビアの顔も赤くなった。直後に顔女の顔が青ざめた。リアムはどうしたのか尋ねようと口を開くが、先にオリビアが慌てて頭を下げた。

「も、申し訳ございません! 無礼をお許しください! 私そろそろ失礼いたしますわ! ゆっくりおやすみくださいませ!」

「オリビア嬢!」

 どうやら貴族の令嬢としてははしたなく、格上の貴族相手に無礼であると思ったようだった。リアムはフォローのため急いでオリビアを引き留めようとするが、彼女は素早く椅子から立ち上がり、足早に部屋を後にしてしまった。

 リアムはすぐに動けない自分を情けなく思い、大きなため息をついた。

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