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5月
5−3班決め2
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一方、窓際二列の席では、さくらが列前方の女子たちに呼ばれて席を立った。
「マリ、班は別れちゃったけど部屋割りは同じだからよろしくね」
「そうだね、さくら。よろしく」
斜め前の席のマリは、返事をしながら軽く手を上げ彼女を見送る。
さくらたち二班は一班と二班の列前方で集まることになったようで、マリや新堂がいる後方の席には一班の生徒三人がやってきた。マリは輪になるように体の向きを横に向けた。
「じゃあ二班はこっちで話そう。改めまして、サトケンです。よろしく!」
サトケンが新堂の隣の席に座り挨拶をした。彼は小学校からの持ち上がり組で、周りの空気を読み立ち回るのが得意な少年だった。
次に、マリの隣に座った男子生徒が口を開いた。
「どうも、タナケンです。俺は高校からなんで皆さん初めましてだな。よろしく!」
タナケンはがにっこりと白い歯を見せ、サトケンと肩を組んだ。よく似た名前と席が前後したことがきっかけで、二人はすっかり意気投合していたのだ。心なしか、背格好もよく似ているとマリはぼんやりと彼らを眺めていた。
「なんか見た目も似てるな、そこのふたり」
隣から囁き声が聞こえる。新堂だ。彼も同じことを考えていたのが嬉しく、マリは軽く彼の机に寄りかかり身を寄せた。
「わかる。私もそう思っていたの」
そう言ってマリが目を細め息を漏らす。
「ちょっとそこ、ダブケンをダシにしてイチャつかないこと」
斜め前から聞こえた声に反応し、マリが瞬きした。イチャつくと言う言葉に頬が熱くなる。声の主と目が合い反論しようと口を開きかけると、彼女はふふっと笑ってからマリには反論させずに挨拶を始めた。
「じゃあ次は私ね。スミちゃんです。中学からの持ち上がり組です、以上!」
スミちゃんは最後に軽く頭を下げ、前に降りてきた黒髪のロングヘアーを腕で肩の後ろに流した。肌は浅黒く大きめの口が周りに健康的な印象を与えた。
「ちょい、スミちゃん。ダブケンてなんだよ」
「もしかして俺らのこと?」
サトケンとタナケンがずいっと顔を前に出した。息がぴったりだ。スミちゃんがそれを見てケラケラと笑っている。
「そう、ダブルケンでダブケンね。ていうか、息ぴったりすぎ……笑い死ぬからやめてよ」
その後の「なに?」という返しも同時だった彼らを見て、マリも笑いを堪えるのに必死になった。
みんなの笑い声がおさまった頃、次の生徒が話し始めた。
「ええと、ヨナです。外部組です。ダブケンのように特に面白いことは言えませんけど……よろしくお願いします」
ヨナは小柄で肩につくかつかないかのボブヘアーを揺らし、ペコリと頭を下げた。すかさずダブケンがツッコむ。
「「さっそくダブケン使うんかい!」」
「面白いことは言えないけど、面白いことは好きです」
はにかむヨナを見て、マリは再び隣の新堂に視線を移した。彼もまた、マリを見ている。
「いい雰囲気の班だな」
「うん、そうだね」
マリは頷きながら、いつものメンバーと離れたせいか新鮮な気持ちで周りを見ることができると思った。人見知りをするところがあり全く知らない人だけでは不安だっただろうが、運良く新堂と一緒の班だ。彼のことを知るいい機会だと宿泊研修も準備期間も楽しみになった。
「次、マリじゃない?」
「あ、そっか」
新堂に促され、マリは視線を班のメンバーたちに戻し、一度深呼吸する。
「マリです。私も……面白いことは言えないけど、面白いことは好きです。よろしくお願いします」
「「そこ拾うんかい!」」
マリの挨拶もダブケンによってしっかりツッコまれた。
そして、最後は新堂の番だった。マリが彼の顔を覗き込む。
「新堂です。高校からの外部組で面白いことは……言うかもしれないし、面白いことも好きです。よろしく」
「なんだそれ!」
「思わせぶりかい!」
最後の最後で、サトケンとタナケンはダブることができなかった。今度は新堂が静かに言葉を返す。
「ダブらないんかい」
目を点にして眉を上げきょとんとしているダブケン。マリを含めた一班のメンバーはそれを見て笑い声を上げた。
「マリ、班は別れちゃったけど部屋割りは同じだからよろしくね」
「そうだね、さくら。よろしく」
斜め前の席のマリは、返事をしながら軽く手を上げ彼女を見送る。
さくらたち二班は一班と二班の列前方で集まることになったようで、マリや新堂がいる後方の席には一班の生徒三人がやってきた。マリは輪になるように体の向きを横に向けた。
「じゃあ二班はこっちで話そう。改めまして、サトケンです。よろしく!」
サトケンが新堂の隣の席に座り挨拶をした。彼は小学校からの持ち上がり組で、周りの空気を読み立ち回るのが得意な少年だった。
次に、マリの隣に座った男子生徒が口を開いた。
「どうも、タナケンです。俺は高校からなんで皆さん初めましてだな。よろしく!」
タナケンはがにっこりと白い歯を見せ、サトケンと肩を組んだ。よく似た名前と席が前後したことがきっかけで、二人はすっかり意気投合していたのだ。心なしか、背格好もよく似ているとマリはぼんやりと彼らを眺めていた。
「なんか見た目も似てるな、そこのふたり」
隣から囁き声が聞こえる。新堂だ。彼も同じことを考えていたのが嬉しく、マリは軽く彼の机に寄りかかり身を寄せた。
「わかる。私もそう思っていたの」
そう言ってマリが目を細め息を漏らす。
「ちょっとそこ、ダブケンをダシにしてイチャつかないこと」
斜め前から聞こえた声に反応し、マリが瞬きした。イチャつくと言う言葉に頬が熱くなる。声の主と目が合い反論しようと口を開きかけると、彼女はふふっと笑ってからマリには反論させずに挨拶を始めた。
「じゃあ次は私ね。スミちゃんです。中学からの持ち上がり組です、以上!」
スミちゃんは最後に軽く頭を下げ、前に降りてきた黒髪のロングヘアーを腕で肩の後ろに流した。肌は浅黒く大きめの口が周りに健康的な印象を与えた。
「ちょい、スミちゃん。ダブケンてなんだよ」
「もしかして俺らのこと?」
サトケンとタナケンがずいっと顔を前に出した。息がぴったりだ。スミちゃんがそれを見てケラケラと笑っている。
「そう、ダブルケンでダブケンね。ていうか、息ぴったりすぎ……笑い死ぬからやめてよ」
その後の「なに?」という返しも同時だった彼らを見て、マリも笑いを堪えるのに必死になった。
みんなの笑い声がおさまった頃、次の生徒が話し始めた。
「ええと、ヨナです。外部組です。ダブケンのように特に面白いことは言えませんけど……よろしくお願いします」
ヨナは小柄で肩につくかつかないかのボブヘアーを揺らし、ペコリと頭を下げた。すかさずダブケンがツッコむ。
「「さっそくダブケン使うんかい!」」
「面白いことは言えないけど、面白いことは好きです」
はにかむヨナを見て、マリは再び隣の新堂に視線を移した。彼もまた、マリを見ている。
「いい雰囲気の班だな」
「うん、そうだね」
マリは頷きながら、いつものメンバーと離れたせいか新鮮な気持ちで周りを見ることができると思った。人見知りをするところがあり全く知らない人だけでは不安だっただろうが、運良く新堂と一緒の班だ。彼のことを知るいい機会だと宿泊研修も準備期間も楽しみになった。
「次、マリじゃない?」
「あ、そっか」
新堂に促され、マリは視線を班のメンバーたちに戻し、一度深呼吸する。
「マリです。私も……面白いことは言えないけど、面白いことは好きです。よろしくお願いします」
「「そこ拾うんかい!」」
マリの挨拶もダブケンによってしっかりツッコまれた。
そして、最後は新堂の番だった。マリが彼の顔を覗き込む。
「新堂です。高校からの外部組で面白いことは……言うかもしれないし、面白いことも好きです。よろしく」
「なんだそれ!」
「思わせぶりかい!」
最後の最後で、サトケンとタナケンはダブることができなかった。今度は新堂が静かに言葉を返す。
「ダブらないんかい」
目を点にして眉を上げきょとんとしているダブケン。マリを含めた一班のメンバーはそれを見て笑い声を上げた。
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