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4月
4−2席替え2
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「全員引いたな。今黒板に貼ったのが座席表です。窓際の一番前を一番として四〇番までちゃんとあるから、明日は各自新しい席に着くように。今日は机の中を空にして帰宅してください。残った時間は荷物の整理と自習にします」
廊下側の生徒までくじを引き終わった後、座席表を貼って竜崎が全体に声をかけた。生徒たちは各自ロッカーなどへ荷物を移動する。
ユージが席を立ちマリの元へ向かう。ユアとさくらも荷物をロッカーへ運びがてら同行した。
「ねー、マリ何番?」
「五番。一個前なだけ」
マリは机の中の荷物を出しながら答えた。瞬間、ユージがガックリと肩を落とす。
「俺、三二番……めっちゃ遠い~」
「マリ、私一二。斜め後ろだよ。よろしく」
一緒にいたさくらが軽く手をあげる。マリも笑顔で返す。
「よろしく、さくら」
「ちなみにさくら、そのくじ俺と取り替えてくれたりは……?」
ユージが上目遣いでさくらを見つめる。二人の身長はほぼ同じだが、ユージが少しだけ首を傾げ、覗き込む格好になっている。さくらは眉を下げ困り顔で息を漏らした。
「取り替えない。それに学級委員が記録してるから変えても無駄じゃない?」
「そうだよユージ、また怒られるよ」
ユアも同調する。彼女としては絶対にくじの交換は避けたかった。
「そうそう。席替えなんてまたいつかあるだろうし。ユアとトモは何番?」
マリがユージをあしらい、番号を知らない二人に話を振った。
「私は三三番。ユージの後ろみたい!」
「俺だけ孤立してんじゃん。二〇番」
ユアは満足げな笑みを浮かべ、トモは対照的に顔をしかめ不満を漏らした。
「二〇番って、真ん中の最前列じゃん」
座席表を見てマリが苦笑した。トモは一八七センチの長身だ。ユアやさくらも、最前列で必死に小さくなるトモを想像し口元が緩む。
「笑うなよ。俺だって嫌だよ。後ろの人次第では席変わってもらうかな」
トモが席を立ち、竜崎の元へ席の変更を申し出に行った。残りのメンバーはロッカーへ荷物をしまいに行く。
「ねぇマリ。今日は一緒に帰れる? 久しぶりにマリの家行きたいな~」
ユージがマリの顔を覗き込む。小学校の頃からお互いの家を行き来していたため、ユージはマリの家族とも仲が良かった。
「うん。いいよ。みんなは?」
「私は部活だから行けない」
「私も~。残念」
マリの問いに、さくらとユアが返事する。特にユアは心の底から残念そうだ。
「トモは? 空いてる?」
「俺は空いて……」
「トモは彼女と会うんじゃなかった?」
トモが答えるのをユージが遮った。笑顔だが目の奥が笑っていない。
「そうなんだよな~。だから空いてないんだ。今度な」
ユージに合わせて返事を修正するトモ。本当は予定なんてなかったが仕方ない。しかし、今度はユアからの視線が痛かった。
「じゃあ俺だけか。みんなでなかなか集まれなくて残念」
言葉とは裏腹に、目尻を下げ口角を上げるユージ。隣に立っているマリだけが気づいていない。
「そうだね。ふたりとも部活頑張って」
マリはそう言って席に戻っていった。ユージも後に続く。
「トモ、用事なんかないんでしょ?」
ユアがトモを睨みつけ小声で言った。先ほどよりずいぶん声が低くなっている。さくらに視線を送り助けを求めるが、苦笑いしか返ってこない。トモは眉を下げ、困り果てた顔で返事をする。
「しょうがないだろ。アレでついてったら俺がユージに怒られるって」
ユアと同じく小声で返事をしてから、トモが席に戻る。頬を膨らませ不機嫌を強調するユアにさくらが軽く肩を叩いた。
「ふたりって言っても、親とかもいるんだからマシじゃない」
「うん……」
口を尖らせながらユアもさくらと自分の席へ戻っていった。
廊下側の生徒までくじを引き終わった後、座席表を貼って竜崎が全体に声をかけた。生徒たちは各自ロッカーなどへ荷物を移動する。
ユージが席を立ちマリの元へ向かう。ユアとさくらも荷物をロッカーへ運びがてら同行した。
「ねー、マリ何番?」
「五番。一個前なだけ」
マリは机の中の荷物を出しながら答えた。瞬間、ユージがガックリと肩を落とす。
「俺、三二番……めっちゃ遠い~」
「マリ、私一二。斜め後ろだよ。よろしく」
一緒にいたさくらが軽く手をあげる。マリも笑顔で返す。
「よろしく、さくら」
「ちなみにさくら、そのくじ俺と取り替えてくれたりは……?」
ユージが上目遣いでさくらを見つめる。二人の身長はほぼ同じだが、ユージが少しだけ首を傾げ、覗き込む格好になっている。さくらは眉を下げ困り顔で息を漏らした。
「取り替えない。それに学級委員が記録してるから変えても無駄じゃない?」
「そうだよユージ、また怒られるよ」
ユアも同調する。彼女としては絶対にくじの交換は避けたかった。
「そうそう。席替えなんてまたいつかあるだろうし。ユアとトモは何番?」
マリがユージをあしらい、番号を知らない二人に話を振った。
「私は三三番。ユージの後ろみたい!」
「俺だけ孤立してんじゃん。二〇番」
ユアは満足げな笑みを浮かべ、トモは対照的に顔をしかめ不満を漏らした。
「二〇番って、真ん中の最前列じゃん」
座席表を見てマリが苦笑した。トモは一八七センチの長身だ。ユアやさくらも、最前列で必死に小さくなるトモを想像し口元が緩む。
「笑うなよ。俺だって嫌だよ。後ろの人次第では席変わってもらうかな」
トモが席を立ち、竜崎の元へ席の変更を申し出に行った。残りのメンバーはロッカーへ荷物をしまいに行く。
「ねぇマリ。今日は一緒に帰れる? 久しぶりにマリの家行きたいな~」
ユージがマリの顔を覗き込む。小学校の頃からお互いの家を行き来していたため、ユージはマリの家族とも仲が良かった。
「うん。いいよ。みんなは?」
「私は部活だから行けない」
「私も~。残念」
マリの問いに、さくらとユアが返事する。特にユアは心の底から残念そうだ。
「トモは? 空いてる?」
「俺は空いて……」
「トモは彼女と会うんじゃなかった?」
トモが答えるのをユージが遮った。笑顔だが目の奥が笑っていない。
「そうなんだよな~。だから空いてないんだ。今度な」
ユージに合わせて返事を修正するトモ。本当は予定なんてなかったが仕方ない。しかし、今度はユアからの視線が痛かった。
「じゃあ俺だけか。みんなでなかなか集まれなくて残念」
言葉とは裏腹に、目尻を下げ口角を上げるユージ。隣に立っているマリだけが気づいていない。
「そうだね。ふたりとも部活頑張って」
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「トモ、用事なんかないんでしょ?」
ユアがトモを睨みつけ小声で言った。先ほどよりずいぶん声が低くなっている。さくらに視線を送り助けを求めるが、苦笑いしか返ってこない。トモは眉を下げ、困り果てた顔で返事をする。
「しょうがないだろ。アレでついてったら俺がユージに怒られるって」
ユアと同じく小声で返事をしてから、トモが席に戻る。頬を膨らませ不機嫌を強調するユアにさくらが軽く肩を叩いた。
「ふたりって言っても、親とかもいるんだからマシじゃない」
「うん……」
口を尖らせながらユアもさくらと自分の席へ戻っていった。
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