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終章 わたしの心の青海原
5話
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二度目の彼は、最初よりは加減してくれた。
それでも逆に、優しいというかねちっこいとか、的確だとか、これもまた色々と昨晩よりも三倍増しぐらいのインパクトで、私には過ぎたものだった。
タクマさんは、終わったあとでもなぜか、私を体の上に乗っけたまま、緩く抱き締めている。
ふと、最初に彼に告白した、あの朝を思い出した。
「でも…う、後ろからは…恥ずかしいよ……」
「そっちのが形状的には向いてんだけどな。 オマエならそのうち、すぐに中イキも出来そーだから心配すんな」
タクマさんが今話してる、その内容はそのときとは大分違うけれども。
そんな心配してないよ。
……してないのだけれども、二度目が終わって離れると、今度は、どこか足りない気がした。
やっぱり形状云々が関係しているのだろうか。
でも抱き合ってする方が安心感はあった。
今の彼もそう思って、私をこうしてるのかな。
そんなことを悶々と考えてしまう。
どうしよう……私、ひとりエッチの回数増えそう。
ずくんずくんと熟れたみたいに疼くこれって、なんだろう?
セックス中毒って病気があるという。
タクマさん中毒の私は、そのうちそれと同義になるんだろうか。
「……そしたら、動画送ってくれ」
ボソリと呟きが上から降ってくる。
「え!? 何の? なっ…なに、言ってるの?」
「……だから思ったこと、時々口に出すクセ、どうにかしろって。 代わりに、電話んとき顔映していいから」
いつでも会える、タクマさん。
私に話しかけてるいくつもの彼……堪らなく欲しい。
「ホント? 分かったよ!」
「分かったのかよ……」
言い出したくせに、少し引き気味にげんなりとした声を出す。
やっぱり動画までいくとますます変態っぽいだろうか。
今でさえ、会えばキスをしたくなる中毒となりかけてしまったというのに。
……止めておこう。
◆
過剰な愛情表現(ということにしておきたい)のために、しばらくの間機能不全に陥ってしまった私の代わりといってはなんだけど。
ランチはタクマさんの手料理をご馳走になった。
それから、
「っか、腰が軽くて調子いい。 明日車で送るから、今晩寝んの、遅くていいよな?」
私とは逆に妙にすっきり顔の彼から目を逸らしつつ、もはや小さな温泉並みの広さのお風呂をいただいた。
……そうする機会はいくらでもあったのに、『大事にしたいと思ってる』その言葉どおりにタクマさんはそうしてくれたのだと改めて思う。
そんなことを思うたびに胸がいっぱいになり、じわっと涙が浮かんでしまってお湯で顔を洗う。
お掃除の人に来てもらっているといっても、確かにこれだけの広さだと、維持だけでも大変そうだ。
彼が諸々の手際がいいのに、なんとなく合点がいった。
……週末は、たった三日。
早くも明日はもう私は東京に戻る日である。
そのせいなのか、タクマさんは連休は丸ごと私のために時間を取ってくれているみたいだ。
夕方の時間は長廊下に沿う縁側で、彼と話をして過ごした。
目の前の雑木林は明るい昼はいいけれど、彼が昨日カフェで言っていたとおり、夜は鬱蒼として不気味なんだろうなと思う。
雲間からは夕映えの空が覗いてきて、秋晴れというにはまだ早いとはいえ、こずえの隙間から爽やかな香りのする風がおでこや頬を通り過ぎていく。
青く細長いトンボがついっとそばを通り過ぎ、そんなときなどには話すのをやめて、私たちはぼんやりとそれを眺めた。
「わあ……かわいいねえ」目を細めてそう言えば、
「肉食だし、実は獰猛で有名だけどな。 スズメバチの頭も食いちぎるし、雌取り合って殺し合いもする。 ついでにいえば産卵最中でも構わず、二時間ぐらいぶっ続けでヤるらしい」などと生々しく夢のないコメントが返ってくる。
『彼は読書家でね、大人びて聡明な少年だったんだよ』
父はああ言ってたけど、その頃のタクマさんに会いたいかと訊かれると、なんだか微妙な気がする。
それでも逆に、優しいというかねちっこいとか、的確だとか、これもまた色々と昨晩よりも三倍増しぐらいのインパクトで、私には過ぎたものだった。
タクマさんは、終わったあとでもなぜか、私を体の上に乗っけたまま、緩く抱き締めている。
ふと、最初に彼に告白した、あの朝を思い出した。
「でも…う、後ろからは…恥ずかしいよ……」
「そっちのが形状的には向いてんだけどな。 オマエならそのうち、すぐに中イキも出来そーだから心配すんな」
タクマさんが今話してる、その内容はそのときとは大分違うけれども。
そんな心配してないよ。
……してないのだけれども、二度目が終わって離れると、今度は、どこか足りない気がした。
やっぱり形状云々が関係しているのだろうか。
でも抱き合ってする方が安心感はあった。
今の彼もそう思って、私をこうしてるのかな。
そんなことを悶々と考えてしまう。
どうしよう……私、ひとりエッチの回数増えそう。
ずくんずくんと熟れたみたいに疼くこれって、なんだろう?
セックス中毒って病気があるという。
タクマさん中毒の私は、そのうちそれと同義になるんだろうか。
「……そしたら、動画送ってくれ」
ボソリと呟きが上から降ってくる。
「え!? 何の? なっ…なに、言ってるの?」
「……だから思ったこと、時々口に出すクセ、どうにかしろって。 代わりに、電話んとき顔映していいから」
いつでも会える、タクマさん。
私に話しかけてるいくつもの彼……堪らなく欲しい。
「ホント? 分かったよ!」
「分かったのかよ……」
言い出したくせに、少し引き気味にげんなりとした声を出す。
やっぱり動画までいくとますます変態っぽいだろうか。
今でさえ、会えばキスをしたくなる中毒となりかけてしまったというのに。
……止めておこう。
◆
過剰な愛情表現(ということにしておきたい)のために、しばらくの間機能不全に陥ってしまった私の代わりといってはなんだけど。
ランチはタクマさんの手料理をご馳走になった。
それから、
「っか、腰が軽くて調子いい。 明日車で送るから、今晩寝んの、遅くていいよな?」
私とは逆に妙にすっきり顔の彼から目を逸らしつつ、もはや小さな温泉並みの広さのお風呂をいただいた。
……そうする機会はいくらでもあったのに、『大事にしたいと思ってる』その言葉どおりにタクマさんはそうしてくれたのだと改めて思う。
そんなことを思うたびに胸がいっぱいになり、じわっと涙が浮かんでしまってお湯で顔を洗う。
お掃除の人に来てもらっているといっても、確かにこれだけの広さだと、維持だけでも大変そうだ。
彼が諸々の手際がいいのに、なんとなく合点がいった。
……週末は、たった三日。
早くも明日はもう私は東京に戻る日である。
そのせいなのか、タクマさんは連休は丸ごと私のために時間を取ってくれているみたいだ。
夕方の時間は長廊下に沿う縁側で、彼と話をして過ごした。
目の前の雑木林は明るい昼はいいけれど、彼が昨日カフェで言っていたとおり、夜は鬱蒼として不気味なんだろうなと思う。
雲間からは夕映えの空が覗いてきて、秋晴れというにはまだ早いとはいえ、こずえの隙間から爽やかな香りのする風がおでこや頬を通り過ぎていく。
青く細長いトンボがついっとそばを通り過ぎ、そんなときなどには話すのをやめて、私たちはぼんやりとそれを眺めた。
「わあ……かわいいねえ」目を細めてそう言えば、
「肉食だし、実は獰猛で有名だけどな。 スズメバチの頭も食いちぎるし、雌取り合って殺し合いもする。 ついでにいえば産卵最中でも構わず、二時間ぐらいぶっ続けでヤるらしい」などと生々しく夢のないコメントが返ってくる。
『彼は読書家でね、大人びて聡明な少年だったんだよ』
父はああ言ってたけど、その頃のタクマさんに会いたいかと訊かれると、なんだか微妙な気がする。
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